第七話 プロポーズしてもないのに振られた
「ポチはなんて破廉恥なのだ……! さてはそなた、ケダモノだな!? ペットと思って可愛がってやろうと思ってたのに、エッチなのはいけないぞ! そういうのは大っ嫌いだ!!」
ノエルは腕をブンブンと振り回しながら力説する。俺とツキノが抱きしめ合っていたことに怒っているようだった。
「子供にはまだ早い話題だぞ。ノエル、俺たちは今から戦闘ごっこをしようとしてたんだ。別にエッチなことじゃないから、さっさと寝ろ」
「むきー! 子供扱いするなっ、わらわはもう12歳なんだからなっ。そなたが何をしようとしてたのか分かってるのだ!!」
はぐらかそうとしたが、ノエルは何も知らない程幼いというわけではなかったらしい。余計に腹を立ててしまった。
「ツキノ……めっ、だぞ! わらわはそういうの、いけないと思います!」
今度はツキノの方を叱るノエル。拗ねたようにツキノをぽかぽか叩いている。
子供らしい怒り方だ。こんな風に怒られたところで別に態度を改める気にはならないような、愛らしい言動である。
俺はもちろん聞き流していた。ノエルをどうやって追い出そうかと考えていたくらいである。
だが、ツキノの方は俺みたいに聞き流すつもりはなかったみたいだ。
「……そうですね。魔王様、申し訳ありません。配慮が足りなかったようです。今後、こういったことは控えたいと思います」
ノエルのお叱りを彼女はしっかりと受け止めるらしい。『めっ』と怒られたせいか、少しシュンとしているようにも見えた。
あ、こいつダメだ。ノエルに怒られてかなり落ち込んでるみたいである。お前、ノエルのこと大好きすぎるだろ……
「うむ! そうするがいい! ツキノ、そなたはとてもいい子だなっ」
ノエルはない胸を張ってツキノの頭をよしよしと撫でる。黒髪巨乳メイドさんは頭を撫でられてめちゃくちゃ嬉しそうだった。ノエルのこと、本当に大好きなんだな……まぁ、悪いことじゃないんだけど。
ってか、ツキノ? ノエルの言うこと聞くんだったら、俺がお前のおっぱい揉めないじゃん!
「ちょ、おい……約束は?」
「……別に、今すぐに触らせてあげるとは言ってません。約束はきちんと守りますよ。ただ、魔王様の許可をもらった後ということで、よろしくお願いします」
「えぇ……」
こんなに魅力的なおっぱいがすぐそこにあるのに、触れないとか……もどかしいにもほどがあった。こんなの生殺しである。
「ポチ! そなた、まだエッチなことをしようとしているのか!? ダメって、わらわは言ったはずだぞっ」
俺の態度を見て、ノエルはまたこっちを叱ってくる。
「良いか? そういうのはな、ポチに早い!」
早いって……少なくともノエルよりかは適齢な気がするんだけど。
「でも……」
なおも反論しようと口を開いたが、俺の言葉を今度はツキノの方が遮った。
「ご主人様? これ以上、魔王様をやきもきさせないであげてくださいませ」
え? やきもき? 魔王が? どういうこと?
いきなり飛び出たワードに俺は戸惑ってしまう。
「……ツキノ? 今、わらわがやきもきしてるってゆったのか?」
ノエルも俺と同様に困惑していた。
それも無理はない。だって、ツキノの発言はおかしい。
やきもきとは、すなわち嫉妬である。つまりツキノはノエルがやきもちを焼いていると思っているのだ。
それは普通に違うだろう。ノエルが怒っているのは単純にエッチなことが苦手だからだと俺は認識している。恐らくこれは間違ってないはずだ。その証拠にノエルだって困惑しているし、彼女もまた別に自分がやきもちを焼いているとは思ってないのだろう。
どうやら、ツキノと俺たちの認識は少しずれていたらしい。
「魔王様、メイドという立場にありながらご主人様に手を出そうとして申し訳ありません……配慮が足りませんでした」
「は、はいりょ? 配慮って、どういうことなのだっ?」
「いえ、分かっております。つまり魔王様は、ご主人様の『初めて』を奪うなと言いたくて怒っていたのですよね? 『初めて』を奪うのは自分だと、そういうことですよね?」
そして、ツキノはこんなことを言う。
「ご主人様は未来の旦那様だから、初めては大切だということですよね? ノエルちゃん、可愛いです」
え? それって、つまり……ツキノは、俺とノエルが結婚すると思っているのか!?
まさかの発言に、俺よりもノエルの方がびっくりしていたみたいで。
「結婚なんてしないぞ!? 百歩譲ってペットにしても良いが、旦那になんかしないのだっ」
声を振り絞って、あらん限りに否定しやがった。俺と結婚するのがめちゃくちゃ嫌らしい。
おかしいなぁ……プロポーズもしてないのに、なんか俺が振られたみたいだった。
俺だって、結婚するならもっと巨乳な女の子がいいんだけど!
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