プロローグ 魔界ごと封印された勇者は魔王と結婚することにした
我ながら、今までよく頑張ったと思う。
魔族から人間を守り続けて、もう十年くらいになるだろうか。
勇者に選ばれてからずっと俺は使命を全うし続けた。人間を守るために今まで生きてきた。
誰よりも強くなり、誰よりも多くの人を救い、誰よりもみんなのためを思ってきた。
辛くなかったと言えば、嘘になる。重たすぎる使命感に何度も挫けそうになったこともある。
だけど、俺の背中には数えきれないほどの命があった。俺が挫けたらみんな死ぬ。だから俺は、諦めることも逃げることもできずに、戦い続けた。
歴代の中でも、俺はとても偉大な勇者だと自負している。何せ、俺が勇者になってから、人間側の被害は一人もでていない。
魔族のよる侵攻を全て阻止してきたのだ。魔王だって何人もぶっ殺してきた。魔族の中でも強いと言われている幹部クラスだって、ボコボコにしてきた。
俺の力によって、魔族はかなり衰退したと思う。最早人間の脅威にはなり得ないまでに奴らは弱体化した。
しかし人間側はずっと魔族を恐れており、ある日俺に『魔族を殲滅してこい』と命令を下した。
正直、あまり乗り気じゃなかった。無抵抗な魔族を殺すのは気が引ける。今まで殺してきた魔族はみんな好戦的な魔族だけだ。奴らは戦いが大好きで、戦死することを喜ぶくらい戦闘狂な一族である。
だが、全てが戦い大好きな魔族ではない。特に女性魔族や子供魔族は戦う力が弱く、そういった魔族を手にかけたことは一度としてなかった。
もちろん、俺は何度も断った。もう魔族に抵抗する力はないと力説してきた。しかし人間側の王族は俺の言葉を理解してくれず、結局俺は魔界に強制送還されることになった。
『魔族を根絶やしにしろ』
そう命令されたわけだが、聞き入れるつもりなんてない。適当に何日か魔界で過ごしてから手ぶらで人間界に帰ってやると、王族は激怒した。
『もう一回行ってこい!』
そうして俺はまたしても強制送還されたわけだが……今回はどうも、前回と様子が違っていた。
『魔界への扉を封印することにした……魔族を壊滅するまで、貴様は人間界に帰って来れないからな!』
どうやら、そういうことらしい。
ちょっと前までは、魔界のゲートを封印することはできなかった。魔王が封印を阻んでいたのである。だが、魔王は俺が殺してしまったので、今は誰も封印を阻む者がいない。この機会に人間側は封印をするようだった。
だったら俺が魔界に行く意味ないのでは? と思いはした。だが、王族にとって勇者である俺は邪魔だったのかもしれない。丁度良く厄介払いされたともいえる。
まぁ、人間界に未練はなかった。
むしろ、これで人間を守るという重圧から解放されると思うと、気分がとても楽になったくらいである。
そろそろ、頑張ることを終わってもいい頃だろう。俺という勇者の物語はここで幕を閉じたのである。
これからは、のんびりと余生を過ごそう。
魔界で、穏やかに暮らそう。
そう決意した俺は、魔界と一緒に封印されることを了承した。
そして俺は――
「魔王よ、戦いはもういいから結婚してのんびりスローライフしないか?」
――新しい幼女魔王と、結婚することにした。
「あ、阿呆が! そなたとなんか絶対に結婚しないからな!!」
魔王は素直に認めてくれなかったが、まぁいい。
俺はもう自由だ。
時間はたくさんあるのだから、ゆっくりと仲良くなれればいいだろう――
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