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鎖ノ姫  作者: 夜斗
第四章
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『鎖ノ姫』  第四章 「7」

 外に出ると、再び通りの喧騒が聞こえてくる。

 買い物を済ませた僕たちへ、人々の好奇の視線がさっきの倍になって飛んでくる。


「あの人の隣の……誰かしら?」

「あんな綺麗な遊女……『枯山水』に居たか?」


 道すがらに、そんな声が聞こえてくる。

彼女の正体が、まさか『枯山水』における一番格下の【花】の遊女、それも客と揉め事を起こし、着飾ることを禁じられた最底の遊女と称されているユウキだと誰が知るだろうか。

 気が付けば、周囲から注がれる視線の色が、呉服屋を出てから大きく変わっていた。

 男の視線は、好奇から羨望へ。

 女の視線は、侮蔑から恍惚へ。

 通りを往く人の視線を独り占めにしていながら、当人の額には小さな汗が見えている。


「……具合悪い?」

「お、落ち着かない……」

「そりゃあ……ユウキが凄く、綺麗になったからでしょ?」

「…………」


 見世物小屋で男の視線を誘うのが遊女の常であり、ユウキとて見られる経験はあるだろうに、ここに来て大勢の観衆からの熱い視線に戸惑っている。

 言ってしまえば、演劇で端役をやっていたら、ある日突然主役に抜擢たされて注目を一身に浴びている、のと同じ状況。

 僕だって同じ状況に陥ったら同じように落ち着けない自信がある。

 せっかくだし、何処かで休憩しようか。

 僕の目線の先に、以前ユメちゃんとお茶した甘味処が映った。


「少し休もうか?」

「……ん」


 甘味処を指差すと、ユウキは小さな返事と小さな首肯で答えた。

 軒先の腰掛けに座り、店員さんに声を掛ける。


「あら、チヒロさん。今日は……ま、デートかい?」

「え、えへへ……ま、まぁ、そんなとこです」

「あらあら、カンナさんといいユメちゃんといい、隅に置けないねぇ」


 注文を受け取り、恰幅のいい店員さんは微笑みながら厨房の方へ向かっていく。


「…………なに、頼んだの」

「え、普通のお汁粉だけど?」

「おしる……こ」


 首を傾げたユウキの、何だか変な発音の返事の所為で僕まで首を傾げる。それからややあってから、店員さんがお汁粉の乗ったお盆を持って戻ってきた。


「…………おしるこ?」

「え、ユウキって……お汁粉、知らない?」

「…………」


 最初の変な発音といい、小豆の煮汁の色で染まったお汁粉を物凄い形相で凝視しているユウキの反応を見るに、どうやらお汁粉という存在を目の当たりにしたのが今日初めてだということを如実に表している。

 昔から大好物な僕からしてみれば、小豆の甘い匂いと焼いたお餅のコントラストは大変食欲をそそるのだが。


「……たべ、もの?」


 初見のユウキには、もはや食べ物とすら認識されていない。

 恐る恐る、おっかなびっくりといった風に箸で餅を突いて揺らすユウキの姿を見て、僕は精一杯笑いを堪えていた。後ろでは既に店員さんがけらけら笑っている。


「ちゃんとした食べ物だよ。簡単に言えば……餡子を煮たもの、なんだけど」

「えぇ……」

「甘くて美味しいんだよ? ほら」


 まずは自分が食べて見せようか。

 小豆の汁と絡ませたお餅を箸で摘まんで、軽く息を吹きかけて冷ましてから口元へ運ぶ。もちもちとしたお餅の食感に、小豆のあの優しい甘さが加わって、噛めば噛むほど甘みが口いっぱいに広がっていく。

 思わず頬っぺたを落としてしまいそうな甘美な味と食感は、甘党の僕にとっては堪らない一品。


「…………」


 そんな幸せに包まれている僕の隣で、ユウキは僕の顔と手元のお椀の中身とを交互に見やりながらやや困惑している様子。

 おっかなびっくりな調子は変わらず、箸で慎重にお餅を持ち上げると白い生地がぐーんと伸びていく。

 まさか、お餅も初めてだなんて言わないよね……?


「…………」


 餌を与えられた野良猫だってそんなに警戒しないだろうに、ユウキは箸で持ち上げてからもなお、鼻先を近づけてみたり、別の角度から観察したり、舌先だけ伸ばして舐めてみたり、


「ちぅッ」


 そんな胸がキュンと鳴ってしまいそうな小さな声。

 あぁ、もしかしてユウキは猫舌なのかも。

 息を何度も何度も吹きかけて、完全に冷めたところを見計らって、ようやっと口元へ運ぶ。

 包帯で隠れていない、暗い色をした瞳が大きく見開いていく。


「…………」


 見開いた目を、ちら、とお餅へと落とし、適度なところで噛み切ってから、餅を小豆の汁の中へと浸す。たっぷりと汁に浸かったお餅を、今度は一切の躊躇も無しに口へと運ぶ。


「美味しい?」


 残念ながら、返事はない。

 というより、返事をすることも忘れてお汁粉に夢中になっている様子。

 気の所為か、その瞳の奥に小さな光が灯っているような気さえする。

 実に女の子らしい、甘い物に目を輝かせるその横顔。

 思わず、ぼーっと見惚れてしまっていた。


「なーにボケっとしてるの、さ!」

「あわッ!?」


 バッシン! と関取の張り手のような凄まじい音と衝撃が僕の背中に襲い掛かって、思わず椀を落としかける。

 いつの間にか店員さんが戻ってきていて、何だかニヤニヤと脂っこい笑顔を浮かべている。


「こんな寒い日にお熱いモンみせてくれちゃってさ。しかし、いいねぇ。美男美女が、うちの店の軒先で並んじゃってさ。お陰で、野次馬がついでにって忙しいよ」

「び、美男美女って」


 そして、そんなことを言われてから周囲の状況に気付く。

 僕たちの座っている軒先の席はともかく、他の席はいつの間にか色んな人たちが座っていた。

 そのほとんどは男と遊女の組み合わせばかり。

 僕たちを囲んで、それぞれが茶菓子を手にのんびりと過ごしたり、興味あり気に僕たちに視線を送っている人もいる。急にお客さんが増えたもんだから、店員さんは大忙しで走り回る。


「……なんか、いいなぁ」


 今まで生きてきたの人生の中で、初めて味わった陽だまりのような人の温もり。

 未だに隣でお汁粉と格闘を繰り広げているユウキも、僕と同じ空気を少しでも味わってもらえているだろうか。

 隣に誰かがいる幸せ。

 久しく忘れていたそんな感情、そんな存在、そんな場所。

 ここ『枯山水』には、復讐の旅を続けているうちに、僕が知らぬ間に落としてしまった大切なモノがいっぱいある。


「お似合いよね、あの二人」


 何処からか聞こえてきたそんな声にハッと我に返って、そして隣で餅を詰まらせたらしいユウキの呻き声に気づいて慌ててお茶を差し出す。


「そんな、急いで食べなくていいのに」

「……べ、別に。急いでない。少し、吃驚した、だけよ」


 それから、二人揃ってお汁粉を綺麗に完食して、お勘定を払って、立ち上がる。

 店員と、それから数名のお客さんに手を振られながら僕たちは歩き出す。


「…………」


 それにしても。

 美男美女、か。


 ※


「……」


 あっという間に夕日が沈み、夜闇の訪れと同時に『枯山水』は目を覚ます。

 ユウキと一緒に過ごし、今は二人でぼんやりと広場にいる。


「……大丈夫?」

「……見ての、通り」


 僕の隣に座るユウキの横顔と言えば、上機嫌でもなく不機嫌でもなく、さりとて退屈しているとも充実してるとも捉え難い仏頂面。

 結果からして言ってしまえば、僕は今日一日ユウキを無理矢理連れ回して歩いていたわけである。

 だから、最悪気を悪くさせていないだろうかと心配なのだが、そんな心配を深刻化させるような素っ気ない一言。


「……そこそこ、だったよ」


 に、これまた素っ気ない調子でそんな台詞。

 胸の中でぽっと火が灯るような心地。

 だけど、そんな胸の小さな灯火は僕の懸念の所為でそよ風に吹かれたかのように消えてしまう。

 美男美女と人は言ってくれた。

 でも、実際は違う。

 ユウキを助けて、こうしてデートにこぎ着けて、一緒に楽しく過ごして、完全に失念していた。

 僕は、ユウキと同じ女で。

 それを言えないまま、こうして一緒に居る。

 今更になって、嘘を吐いているような後ろめたさに苛まれて、夕日が沈むのと同じように僕の心も意気消沈してしまっている。


「……」


 ちく、ちく。

 そんな風に刺すような視線に気づいて僕が振り返ってみると、いつの間にかユウキの顔が間近に迫っていた。


「……え、あわッ」

「どうしたの」

「え、どうしたって……?」


 至近距離まで肉薄していたのに気付けなかったことにも、僕を気遣うようなそんな言葉を耳にしたことと同時に驚く。


「……元気、ない」

「え、そ、そんなことない……よ」

「…………」


 適当に言えば誤魔化せるかと思ったら、ユウキの視線は何時にもなく強くて、僕の方へしっかりと突き刺すように注いでいる。


「……顔」

「え? 顔……?」

「今、暗い顔してる。……私と歩いて、変な目で見られたから、でしょ?」

「ち、違う! そうじゃない! そうじゃ、なくて……さ」


 それだけは絶対に違うと否定する言葉ですら、尻すぼみになって小さくなっていく。

 これじゃ、否定していないのと同じ。

 そんな僕を、ユウキは相も変わらず強い眼差しで見つめている。

 ……や、ほとんど睨んでいるようにさえ見える。


「……え?」


 不意に、ユウキが僕の腕を掴んで立ち上がる。

 無言の視線が何を意味するのか分からず、呆けていた僕をユウキは無理矢理に引っ張り上げた。

 あの華奢な腕からは想像も出来ないような強い力に吃驚しながら、僕はそのまま成すがままユウキに引っ張られて歩かされる。


「ちょ、ちょちょっちょ!? どうしたの!?」


 遊女が男を引っ張るという構図自体が珍しいのか、道中をすれ違う人たちに変な目で見送られる。

 そんな真っ只中を、ユウキは確固たる足取りで何処かへと向かって歩き続ける。

 その背中は無駄にオトコらしいというか、言い知れぬ威圧感があって僕が何を言ってもちっとも耳を貸してくれない。

 広場、通り、そして【花】の小屋すら通り過ぎてやってきたのは、【花】の裏手にある用水路。

 ユウキが向かっているのは、自分の遊戯部屋だ。

 でも、突然遊戯部屋に向かう理由が分からなくて訊ねるも、未だまともな答えは帰ってこない。

 鍵を開け、蹴破るような勢いで粗末な扉を開き、ユウキはずんずんと猛進。

 格子戸を越えて、ようやっとここでユウキの足が止まる。


「……明かり」

「え、はっ、はい」


 やや強めの語気で促され、慌ててランタンを引っ張り出して明かりを灯す。

 オレンジ色の光が部屋を照らして、座敷牢同然の殺風景が浮かび上がる。


「……」

「…………ごめんね、相変わらずの、汚い部屋で」


 カビ臭さ、湿気と埃の不快感、そして、未だ残る赤黒い血の染み。

 あの日、ユウキを助けてからここに誰も来ていない証拠。


「……どうして、ここに?」

「誰も来ない、来たがらない、場所だから」


 一拍置いて、ユウキが続ける。


「私と、アナタしかいない場所。……ここなら、誰にも聞かれないから、何でも話せる」

「……そっか」


 ランタンを隅に置き、僕はそのまま部屋の隅に腰掛ける。

 その隣に、ユウキも腰掛ける。

 着物が汚れるだろうとか、そういった話はもはや野暮だろう。


「…………」

「…………」


 二人揃って、無言。

 ランタンに照らされたユウキの横顔は少し強張っているようにも見えるし、いつものような仏頂面とも見える。

 僕は、こんな時に何だけど少し懐かしい気持ちになっていた。


「……初めてユウキと話したのも、ここだったね」

「……ん」

「あの時は……凄く驚いた。声を掛けたら鍵が飛んできて、この部屋に来て、押し倒されて……さ」

「うん……」

「……この短い間に、僕自身も含めて色々あった。昨日だって、今日だって、ユウキと出会ってから、色々あり過ぎて、心が追いついてくれないくらい」

「…………先に、いい?」

「……? どうぞ?」

「……この前は、ごめん……」


 この前?

 ……はて、何だろうか。

 僕は思い出そうと首を捻るが、それらしい記憶は出てこない。


「私と居たいとか、守りたいとかって、言ってくれた、時」

「あー……」


 思い出して顔から火が出そうになる。

 勢い任せとはいえ、今になってから思い返してみると相当にとんでもない発言だったかもしれない。


「違う、そうじゃなくて……迷惑とか、言ったこと」

「いや、別に謝らなくても」

「それだけ、じゃなくて。もっと、前も。色々、全部まとめて、いま、謝る……ごめん」

「僕は気にしてないから、謝らなくても大丈夫だよ」

「……迷惑だなんて、思ってない……から」

「……え?」


 聞き間違い、だろうか。

 思わずユウキの方へ身体を向けると、ユウキの視線とぶつかった。

 強張った表情のまま、ユウキは僕を見つめている。

 何故か視線が少し熱っぽいような気がして、そして涙が浮かんでいることに気づく。


「ここに来て、死にたいって、自暴自棄になってから……あんなこと、言われたの……初めてだった。死にたいって、今も思ってる。けど、それ以上に、嬉しかった……よ」

「ユウキ……」


 何でも話せる。

 今しがた、ユウキはそう言ってくれた。

 だから、今ユウキの口からこぼれる言葉は全て嘘偽り無しの、正真正銘の彼女の気持ち。

 徐にユウキは左目を覆う包帯を解き、あの黄昏色の瞳に僕の姿が映り込む。


「私を、私って見てくれた人は……たぶん、チヒロ、だけだと、思う。嬉しいよ、嬉しかった。……今日も、楽しかった」

「…………」


 そう、ユウキははにかむ。

 嬉しかった、楽しかった。

 そう言ってくれる彼女の顔には、まだ陰が差している。


「ユウキ、あの実は、僕は……」

最後(、、)にひとつ、頼んでも……いい?」


 最後、と彼女は言った。

 驚いて、でも、表には出さないよう努めて、僕は頷く。


「……君を殺せってコト以外なら」

「そんなこと、もう頼まない。全然、逆のこと」


 そう言ってユウキは膝立ちになって、上から着物を脱ぎ捨てていく。

 綺麗な着物一式が汚れた地べたに落ちて、やがて半裸になったユウキの姿。

 身体中には、塞がっているとはいえ無数の傷跡が未だ残っている。


「……私を、愛してくれない?」

「…………で、でも僕は」


 言えないままのコトが、ひとつ。

 躊躇って半開きになっていた唇に、不意にユウキの唇が重なる。

 短い、口づけ。

 その一瞬で、お互いの意思が全て伝心したかのような、奇妙な感覚。


「いいよ、気にしなくて。気付いてたから。チヒロって……女の子、なんだね」

「……い、何時気付いたの」

「初めて、口づけした時。オトコの味が何にも、しなかった。オトコってね、苦い味ばっか。だけど、チヒロは、甘くてね、優しい味」

「…………」

「変だね、女の子が、女の子を、好きになっちゃったんだ?」

「やっぱり、変……だよね」

「変だね。でも」


 もう一度、短い口づけ。

 以前のような無理矢理に舌を絡ませるのとは違う、互いが互いを遠慮がちに求め合うかのような優しい口づけ。

 間近で見るユウキの頬が、桜色に染まっているのが見える。


「いいよ、チヒロなら。私が、初めて好きになった人、だから」


 もう一度、唇が触れる。

 僕とユウキの手の平が重なって、絡んで、求めて、身体が熱を帯びていく。

 脳裏が火傷しそうなほどの熱。

 狂いそうなほどの甘美。

 薄闇の中で僕らは互いを求めて指先を蠢かせ、吐息を交えさせながら、時に声を漏らして愛し合う。

 まるで夢や幻想のような、蜜月の時間だった。






 ※






 時を忘れるという言葉。

 それが骨身に染みわたるような心地で、僕たちは水路に腰掛けて朝日を見上げていた。


「チヒロって、胸ちっちゃいね」

「……ここに来る前までは気にしてなかったんだけど」

「でも、意外に敏感で……可愛いかった、よ?」

「……」


 しれっとそんなことを言われ、恥ずかしさで何も言えない僕にユウキは微笑を浮かべる。

 でも、その微笑は何故かあっという間に消えて、彼女は俯いてしまった。


「……? ユウキ?」

「…………じゃあ、小屋に帰るから」

「え、あぁ……うん。送っていくよ」

「……来ない方が、いい」

「どうして?」

「……」


 ふっと持ち上がったユウキの顔が、僕へと向き直る。

 朝日に照らされて、小さな雫が輝き頬を滑る。

 ユウキは、泣いていた。

 両目から大きな涙をぽろぽろとこぼしながら、唇をぎゅっと結んで、切ない表情を浮かべている。


「……殺して、くれないんでしょう?」

「えッ……?」

「……何でも、ない。忘れて」


 そう言うとユウキは立ち上がり、そのまま【花】へと続いている小路へと向かって歩き出す。

 慌てて僕が追いかけて隣を歩いても、もう泣き顔は消えていて、それどころか初めて会った時のような冷たい顔色になっていて、僕が何を尋ねても返ってきたのは無言のみ。

 早朝、【花】の小屋。

 人の気はないだろうと勝手に高を括っていた僕の予想を裏切り、何故か小屋の前には小さな人だかりと、その中心に鶯色の斑点と、紅色の羽織が見えた。


「……? アズサさんに、オウギさん?」

「ん……おぉ、チヒロ君じゃないの。それに、ユウキも一緒か。ちょうどいいね」

「チヒロ……か」

「え? あの、どういう……?」


 人だかりを蹴散らすようにオウギさんが僕たちの前に、いや、僕を素通りしてユウキの腕を掴むとそのまま人だかりの方へと引っ張っていく。

 ワケがわからない僕は呆気にとられ、そのまま見送る羽目に。


「ちょ、ちょっと……?」

「前々からさ、アズサにも話そうと思ってたんだよ。ウチら二人の大事な話をさ」

「……大事な、話って?」


 僕がそう訊ねたアズサさんの表情は、何故か酷く険しい。

 不意に胸の内に嫌な予感がこみ上げ、意気揚々と手を広げ何か重大発表をしますよと言わんばかりの大仰な所作でオウギさんは口を開いた。


「ここ『枯山水』で結婚式を上げようと思ってね。ウチとユウキの、さ」

「……な」


 朝日と変わらない清々しい笑顔で、オウギさんはそう言い放った。

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