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機械の代名詞

 機械の代名詞を作る、そう決めた私が、

「因みにングリーアスでは服はどうやって作ってるの?」

と質問する。すると、ジル・サンダーは、

「どうやってって、どういう意味?」

質問を質問で返してきやがった。私は溜め息混じりで、

「やっぱり手で縫うの?」

と再度尋ねる。

「うん、そうだよ。もしかして、ミニョーリの世界では、それ以外に布同士をくっつける方法とかあるの?」

そしたら、今度は期待度満々の表情でそんな答えが返ってくる。ジル・サンダー、あんたってばよくもそれだけ斜め45度な回答が出せるわね。呆れたのを通り越して、寧ろ感心するわ。確かに、裾とかはアイロン接着なんてもんもあるけどさ、基本縫うでしょ、フツー。

 ま、私の聞き方も悪かったのかも知れない。なので、

「私が言いたいのはそこじゃなくて、服を縫う機械があるかってことなんだけど……」

と言い方を変えると、

「機械で服を縫うだって!」

ジル・サンダーはそう言って首をブンブンと横に振った。

 そう、私が作ろうとしているのはミシン。もちろん電気がないから足踏みだ。

 元々、ミシンという言葉は英語のマシーンからきている。滑舌の悪い日本人の発音では、マシーンと言うよりミシンと言う方が外国人にちゃんと伝わったのだとか。それはともかく、機械を作るというなら、これから始めるっきゃないでしょ。

 にしても、作り方を知ってるのかですって? ふっふっふ~、覚えてるかな、私の二つ名。そう、『早坂家の破壊神』!

 実はひいばあちゃんが亡くなったとき、大正生まれの彼女が持っていた足踏みミシンをドレッサーにリフォームするという理由で貰い受けたんだよね。その時に、4~5回分解再現しているから、隅々までパーツ解ってんだよね、これが。もちろん、木製の部分はちゃんとドレッサーにリフォームしてばぁちゃんにプレゼントしたよ。


「要するに、ペダルを踏むと、引っかけてあるベルトが回転してその力が本体に伝わって、こっちに取り付けてある針が上下に動く訳よ。

でね、上の針が上下したときに輪っかになった糸の間に、別に取り付けた下の糸を滑り込ませるの。そうすると二本の糸が絡み合うことで、簡単にはほどけない縫い目ができるわ」

と、身振り手振りでミシンの形状を説明する。うん、歪んだときには溜め息が出ちゃうほどしっかりくっついちゃうんだけどね。で、私の話を聞いているジル・サンダーが、

「スゴいよ、スゴすぎる」

感心しまくってくれるので、私の説明にも熱が入っていたのだが……


 実際の細かい部品パーツを説明する段になって、私ははたと困ってしまった。設計図が引けないのだ。生前の私はCADオペレーター、技術的にできない訳じゃない。それは、物理的な問題。カップをすり抜ける手は当然筆記用具もすり抜けるという訳で……


 理論の説明にジル・サンダーが付いてこられてただけに、惜しすぎる。

「あ゛ぁ~っ!!」

と、私は頭を抱え込み、床にへたり込んだ。で、イジイジと床にミシンの絵を描く。すると……

「?……!」

なんと言うことでしょう。床に私の描いたミシンの絵があるじゃないですか! 

「ほ、ホコリ……」

どうやら、ホコリレベルの物なら動かせる? ラッキー! と私は思わずガッツポーズしちゃったよ。だけどそれを見て

「あ、ゴメン。掃除してなくて……」

慌てて箒を取りに行くジル・サンダー。いや今更遅いし。掃除しなくても人間死にゃぁしません。さらに『私はもう死んでいる』(どっかの格闘アニメ風)

「掃除なんかしなくていいから!」

寧ろしないでくれ! 掃除なんかされたら描けなくなる。でも、これだと一回描いたら終わりっぽい。じゃぁ、家中移動しながら描く? それもなんだかなぁ……

 ん? 待てよ??

「ねぇ、ジル・サンダーこの家にアレある?」

良いこと、思いついちゃった♪





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