表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/32

雷について一講釈ぶってしまいました

「君、死神? 僕を迎えにきたの?」

「違ーう! 私はそんなんじゃない」

涙目でそう言うジル・サンダーに私は大きく首を横に振った。

「そもそも、迎えに来たんだったら、雷に突進していくの止めないし。止めたら連れてけないじゃん。ってか、私にはそんな目的なんてないし。ただの幽霊だよ」

とため息混じり続けるが、自分で言っててそれもなんだか変だと思う。

 とにかく、私は怯えまくるジル・サンダーに、こことは別の世界からきたと説明すると、彼の顔に少し赤みが戻った。まったく……何度も言うけど私は死神じゃないって! 変なフラグ立てないで欲しいわ。


 で、改めて今朝からの説明をする。その最中、

「トラック?」

と、妙な所に食いつかれて、

「うん、トラックに轢かれた」

と、答えた私。

「デカいからたぶん即死だよ」

とこめかみを押さえてそう言う私に、ジル・サンダーは、

「その……トラックって何? あ、轢かれるんだから、馬車みたいなもの?」

首を傾げながら真顔で言ったのだ。思わず前につんのめってしまう。ま、浮いてる私はそれでも転んだりしないんだけど。にしても、ば、馬車ぁ?? なので、

「あのー、因みに自動車って知ってる?」

と遠慮がちに聞いてみると、

「聞いたことないよ。第一車が勝手に動いたら危ないじゃないか」

と、斜め45度の答えが返ってきた。

 後日これは、この世界にはない『自動車』を『勝手に動く車』と翻訳した『同時通訳』君にもその一端がある事が判明したが、そうじゃなくても、この時点でこの世界に自動車が存在しないことはよーく解った。まぁ、そうだよね。電気を捕まえに行くとか言った時点で、その可能性はないわな(ため息)


 そして、

「それでさ、ミニョーリは雷が使えるんだよね。

君って生前は魔法使いだったの?

『自動車<勝手に動く車>』は魔法で動くんだよね」

と続けるジル・サンダーにまたコケる。

「魔法? そんなものはないわよ」

今度は私をお伽の国の住人にでもするつもり? 憮然としてそう答えた私に、

「でも、雷の使い方は知ってるんだよね」

と言うジル・サンダー

「使い方もなにも、そもそもアレを受け止めようと思ったら、相当頑丈な装置が要るわよ。大小はあるけど、今のその箱位ならまず間違いなく爆発して終りね」

「へっ、爆発?」

爆発の言葉に目を丸くするジル・サンダー

「雷の電力って、一説では一億ボルトって言われてるからさ」

「一億ボルト……」

電気が実用化されてない世界では、ボルトなんて単位としては存在しないのかも知れないけど、それでもジル・サンダーは一億の数字に言葉を失ってしまう。

「それに、威力はデカいけど、一瞬だから取れる電気はホント少ないのよ。

電気エネルギーって所謂生なまものなの。電位という位置エネルギーを使って高い所から低い(あるいはゼロの)所に運ぶことはできるけど、保存が難しくて、そんなにいっぱい詰め込めない訳。


初期の湿電池なんて、容量のわりにものすごくデカいもんねと、畳みかけるように電気を扱う難しさを説く。地球だって、いろんな人が何人も何年もかかってできあがったものだ。たった一人では荷が重い。早めにあきらめた方が得策ってことで。

 でも、ジル・サンダーは簡単には引き下がらなかった。

「じゃぁ、ミニョーリたちニホンの人たちはどうして電気を使えるの?」

と言うので、

「それは、ダムとか作ってタービンを……だっけかな」

とつぶやくが、電気の博物館で図解したのを見ただけだし、正直細かいシステムとかいまいち分からない。でもそれを聞いたジル・サンダーは、

「お願いミニョーリ、僕にデンキの作り方を教えて」

と、そう言いながら私の手に縋りつこうとうした。当然、それはスカっとすり抜けて前につんのめることになるんだけどね。しまった、生半可な知識なんか口にするんじゃなかった。ジル・サンダーは、

「雷で物を動かすのは僕の長年の夢なんだ」

とその美しい紫色の目をキラキラさせて懇願する。その超絶キレイなワンコ姿に……私は根負けした。

「しゃーないなぁ。私も電気の技術者とかじゃないから、詳しいことは分からないけど、分かることはアドバイスするわ」

と渋々言った私に、

「ホントに!」

解りやすく色めき立つジル・サンダー。私はそれを人差し指を立てて制止しながら、

「ただーし、その前にあんたには別の物を作ってもらうわ」

と言うと、

「別の物?」

とあからさまに不安な顔をする。ジル・サンダー<ワンコ>》。私は彼に、

「電気を作りだすにはとんでもなくお金がかかるの。

実現するためには、まず資金づくりよ」

そう言ってウインクしてみせた。

 そう、新しい物を開発するのには膨大なお金がかかる。コレ、常識。

 で、作る物はもちろん機械の代名詞のアレ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ