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ああ、やっちまいました……(泣)

原稿がなぜか消えてしまったので、再掲いたします。


「ここが僕の家だよ」

と案内されたのは、私が座っていた石垣からなだらかな坂を少し上った所にあった。道同様、石で造られた白い小じんまりとした家。そして中にはいると、

「あ、そこの椅子に座ってて」

ジル・サンダーは椅子だけ引いて台所に駆け込む。ちらっとのぞき込んだところでは、電気やガスはないっぽい。ジル・サンダーが慣れた様子で薪に火をくべてて、丸く作ってから押しつぶしたような平ぺったいヤカンを置く。火が上がってきたら確実にやけどしそうだけど、熱効率はかなりよさそう。


 そうして改めて、椅子のあるリビングダイニング? を見てみると、何かの部品らしき物がそこかしこに散らばっている。

「うわっ、お宝の山♪」

私は思わずそういって相好を崩す。そう、何を隠そう私は、メカ好きが高じて工業高校の機械科に行って、今朝死ぬまでCADオペレーターをしていたし、家族からは『早坂家の破壊神』と恐れ(迷惑が)られていたのだ。

 そこに、お茶のカップを持ったジル・サンダーが現れた。

「座ってればいいのに。

はい、温かいうちに飲んで」

立ったままだった私に、そう言うと、テーブルの上の『お宝』をかき分けてカップを置く。それを聞いた私は椅子に座れなかったので、(力を入れるとすり抜けてしまうみたい。さっきちゃんと石垣に座れてたのは無意識だったから? イミフ)とりあえず椅子の上に浮き、一応カップを持とうとしたが、やっぱりすり抜ける。なので、カップを両手で囲むようにして持っているフリをした。ここが今、暑いのか寒いのかもわかんないけど、ジル・サンダーは長袖を着ているので、真夏ではないはずだ。カップで暖を取っても問題ないでしょうってことで。するとジル・サンダーは思い出したように、

「あ、聞いてなかったね、君の名前は?」

と言うので、

「私? 私の名前は早坂みのり」

と答える。その時、遠くの方で雷の音がした。音がしたときにジル・サンダーの肩がピクリと揺れたような気がした。雷嫌いなのかな。サンダーボルトなんて雷の申し子みたいな名前なのに。

「ハヤシャカミニョリ? 変わった名前だね」

んで、何気に私の名前だけ滑舌が悪い。

「ハヤシャカミニョリじゃなくて、早坂みのり。

待って、ジル・サンダーはジル(正式にはジェラルドか)が名前だよね。じゃぁ、こっち風で言えば、みのり・早坂になるのかな」

と、ヨーロッパのように、名前を先にしてみるすると、

「ミニョリの方が名前なの?」

と聞くジル・サンダー。やっぱり、名前→名字の順番のようだ。それで、

「うん、み・の・り」

と、改めて正確な発音で名乗ってみるけど、

「ミ~ニィョ~リ♪」

ジル・サンダーのみのりの発音は全然直ってない。ってか、さらに変な子音巻き込んでるし。しかも何気に言った本人はドヤ顔。何で、名前だけ発音がおかしい?

 私はそこで今朝から町いく人たちは会話さえ解らなかったことを思い出した。

「ジル・サンダーが日本語をしゃべってるわけじゃないの?」

とつぶやいた私に、案の定ジル・サンダーは、

「ニホンゴ? 何それ」

と言う。

「私の国の言葉よ」

と返すと、

「君にはそう聞こえるの? 僕が話しているのはこのングリーアスの言葉なんだけど?」

ジル・サンダーはそういって首を傾げた。にしても、ングリーアスって何、ングリーアスって。日本のしりとりのルールを根底から覆す地名ってどうよ。ま、それはともかくとして、どうやらジル・サンダーと私との間にはどういう訳だか知らないが、瞬時に同時通訳されて、それぞれの国の言語として聞こえているみたいだ。

 その時、また雷鳴が響いた。今度はさっきよりだいぶ近づいている。そして、それを聞いて、ジル・サンダーのキョドり度がさらに上がった。明らかに雷に反応している。相当嫌いなんだな。でも、

「雷嫌いなの?」

と聞いた私に返ってきたジル・サンダーの答えは、まさかの……

「嫌いじゃない。むしろ好きだよ。というか、これから雷を捕まえに行きたいんだけど」

で、お手製の避雷針らしきものを振り回し(アースなし)ながらなにやら金属製のボックスめいたものを指さしている。顔は当然のドヤ顔。

 ちょ、ちょっと待てぃ!

「あ、あんたね。何考えてんの。死ににいくつもり!」

私は慌てて立ち上がり、そう言って彼を罵倒した。

 確かに、雷は電気エネルギーだけどさ。捕まえるって何? 1億キロワットもある雷をその避雷針もどき一つで受け止められるとでも思ってんの? 第一、雷は電気エネルギーだけど、電気は電気のまま保存できないっていうのは常識だよ。

 だが、私が説教しようとジル・サンダーを見るとなぜだかその目がひきつっている。因みに彼の目線は私の腰の位置に……そこを見た私の顔も固まる。

 私の身体は、ジル・サンダーに罵声を浴びせて思いっきり立ち上がった拍子に、約3分の1くらいテーブルの中にめり込んでしまっていたのだ。

「うわぁぁぁ!!」

と、叫びながら腰を抜かすジル・サンダー。

-ああ、やっちまった……かな? うん、やっちまったな。



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