今度こそ、異世界に転生しました。あ、異世界転移か。
みのり……みのり……みのり……ミニョーリ……ミニョーリ……
悲痛なお母さんの叫び声が徐々にちょっと訛った男性の声に変わっていき、
「ミニョーリ!」
私は重い目蓋を開いた途端、薄紫の瞳の男にハグされた。
「ミニョーリ、おかえり!」
もうどこにも行っちゃヤだからね、と言いながら、その男ーもちろん、ジル・サンダーーは、私の頬をぷにぷにとなで回す。
「ジル・サンダー痛いって。
ううぅ、おすわりっ!」
それに対して文句を言う私の声が何気に高い? ってか、幼い。だいたい、ぷにぷにするほど顔の肉ってあったっけ。
そう思って見ると、若干ジル・サンダーの比率が変わったような……いや、私が縮んだ?
「やっぱり、本物のミニョーリだったか。あまりにもジル・サンダーから聞いていた容姿とは違っていたので、何か良からぬ術でもかけられているのではないかと、心配したが」
とジル・サンダーの後ろに立っていたマウリッツがそう言いながら苦笑する。彼自身医者じゃないけど、医者である彼のお兄さんから経過観察するように言われたそう。
で、私の見た目は本人の私が驚くほどすっかり変わっていた。元々色白ではあったけど、それでも日本人の私はこっちの人ほど白いわけではなく、クリーム色。でも、今の私の腕は透けるように白い。いや、幽霊の頃のように本当に透けてはいないけど。
しかも髪の毛がコスモスピンクになっていたのだ。瞳はそれに合わせて? ルビーのような赤。だからなのかは分からないけど、顔も日本人っぽくは見えない。
そして、何よりもビックリだったのは……私、本当に縮んでいたのだ。
幽霊の時からジル・サンダーにも実年齢に見られなかった私だけど、今回はそのレベルじゃなくて、日本人の感覚からしても小学生にしか見えないぐらいに……縮んだ否、若返っていたのだ。
……いや、こんなマジ別人28号がよく私だと気づいたな、ジル・サンダー。
あの日、ングリーアスに飛び込んで道ばたに倒れていた私をジル・サンダーが見つけて、声をかけたところ、私は一瞬虚ろに目を開け、
「ジル・サンダー、電気作れなくてごめんね」
と言ったそうだ。ま、確かに私を特定するのにこれ以上のワードはないだろうけどさ、それだけで迂闊に信じるな。あんたの頭を狙う悪い奴が私のデータを調べ上げて、でっち上げたって選択肢はあんたにはなかったんかいっ、まったく……私としては、警戒されて道ばたに放置なんてことにならなかったのはラッキーなんだけどさ、なんだかなぁ……
尚、
「どうしてミニョーリだとわかったかって?
決まってるよ、愛の力だよ。愛」
と締まらない顔でほざいたジル・サンダーの頭に迷わず一発かましたことを報告しておく。




