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塞翁が馬?

 だけど、試作品として作った段ボールを使ってまず作ったのは、箱ではなく、椅子だった。

 理由は、紙にそんなに強度があるとは思えないと工房のみんなが挙って反対したから。説明するジル・サンダーですら、首を傾げながらみんなに伝えていた。だから、方向はあるものの、大人の体重ぐらいは余裕で支えられることを実証して見せなければならなかったからだ。

「ねっ、びくともしないでしょ」

「ホントに!」

 あまり期待はしてなかったはずなのに、できあがった椅子を見て、工房のみんなは何故か大興奮、それぞれ自分の椅子を制作し、好みの色に着色したり、椅子だけにとどまらず、天板を除く机(最初天板も段ボールだったんだけど、紙には耐水性がないので、泣く泣く諦めた)ついには棚まで作って、工房中の家具をすべて段ボールに替えてしまったのだ。

 ま、これに関しては売り込む際に強度を目で見てもらうという側面もあるにはあるのかもしれないが、それはごく普通の段ボール箱でも問題なくできる訳で、そもそも段ボールで商売するんじゃないんでしょ、みんな。よーするに、新しいモノ食いってだけ。新しいモノに貪欲なのは開発者として悪いこっちゃないんだろうけど、なんか盛り上がるベクトルが間違っている気がするのは、私だけだろうか。


 とにかく、多少バタバタしたものの、段ボール箱は無事日の目を見ることになった。水濡れ対策は今まで以上に必要になったが、中身がそうとう重くなければ一人で運べるとあって、流通業者の反応も上々だ。


 そして、その段ボール箱の端材で絶縁体と外装を作り、乾電池も完成した。単一のさらに倍ぐらいだが、それを6個も使用しても起電力はそんなにないし、外装が紙なので劣化速度も速い。それでもゼンマイ仕掛けに比べて稼働時間は格段に延びたので、文句言っていたのは私だけで、工房のみんなは十分満足している様子。私はなまじ10年とか平気で使えちゃうボタン電池とか見ちゃってるからなぁ……これはこれですごいことなんだと、どっかで思えない。

 それはさておき、後は配線。これは銅線に生ゴムを被覆して作った。モーターはCADオペレーター時代にさんざん図面を引いていたので、苦労したのはこちらで対応する材料を探すことぐらいだった。


 そうやってようやく生まれた『ケスタシスミニョーリ』だが、結果的には失敗作。

 ビーンの渾身のからくりは流れるように動いてまるで生きているみたいなんだけど、そこは所詮からくりなので、ローテーションワークしかできない。フレキシブルに動かそうと思えば、プログラミングは必須。だけど、私はプログラマーじゃなくて、タダの図面屋。C言語がまったく分からないわけではないけど、細かいことまでは分からない、何より演算装置なしに、プログラム組める能力なんてないもん!(胸張ってどうする……)

 

 今の時点ではこれ以上の方策はどうあがいてもムリなので、『ケスタシスミニョーリ』はチームジル・サンダーの『看板娘』として稼働し始めた。ある意味残念感満載のその出来に、結果オーライと思いきや、『看板娘』を是非我が家にと、可愛いモノ好きの貴族たちから「譲ってほしい」依頼がガンガン舞い込んだのだ。これには正直頭を抱えた。

 当然工房のみんなに売る気なんてさらさらない。というわけで、新たに器を作ってこれも売り出すことに。そして、どうせならと人形の部分はそこの家のご令嬢に似せて作ったら、さらに高値で売れるという結果に。今まで知名度の割に利益の少なかった工房の貴重な収入源になったのだった。

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