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期待されても、モノには順番があるんです。

 こうして、私であって私でないケスタシス(こっちの言葉でお嬢様)ミニョーリは完成したわけだが、みんなの前に晒すにはまだ問題があった。

 それは動力。ゼンマイ仕掛けのそれは、一応ストッパーが付いていてここぞと言うときにしか動かさないようにはしているけれど、いかんせんその稼働時間が意外と短い。そして、止まってしまったら最後誰かがねじを巻かなければならない。ま、最初から人形なんだし、シェリー・チェラスカが冗談で止まる際の擬音みたいなモノまでやって見せたりして、残念感はハンパないから、当初の目的は達成したと言っても良いんだろうけどさ。一応不本意だけどアレ、私だしね。ねじを巻くのはなぁ……せめて電池でもあればなぁ。


 私は、

「どっかに亜鉛とマンガンないかな」

と思わずつぶやいてしまう。すると、

「亜鉛とマンガン」

すかさず、ジル・サンダーがそれを復唱する。どうでもいいけど、それって、音声検索アプリみたい。ミニョーリ人形より機械っぽいよと思っていると、

「亜鉛とマンガンがどうかしたか?」

その言葉にビーンが反応したのでびっくりした。

「亜鉛とマンガンがないかなって、ミニョーリが」

と言うジル・サンダーに、

「亜鉛とマンガンなら鍛冶屋にあると思うけど? 一体何に?」

と、まるで知らなかったのを不思議そうに問うビーン。

 えーっ、鍛冶屋に亜鉛とマンガンって置いてあるモノなの! 知らなかった。実は、鉄を作るときにどっちも要る触媒なんだってさ。


 で、

「電池作れないかと思ってね」

それに対して私がそう言うと、

「亜鉛とマンガンで雷が作れるの!」

と、座っていた椅子を蹴散らかしてジル・サンダーが立ち上がった。いやいや、雷じゃなくてただの電池だから……

ただ、ジル・サンダーが色めき立った理由はすぐわかった。私だって伊達に四六時中このミラクロアにいるわけじゃない。オタク集団の会話で『習わぬ経を』ずっと読み続けているのだ。ジル・サンダーの叫び聞いたビーンの、

「ヤ、クロセボナ ウラ コクヮンドナ」

が、【えっ、ミニ雷が作れる?】だってことぐらいは理解できるようになってるんだな。要するに、コレ、翻訳君の仕業。勘弁してよぉ、ジル・サンダーってば、雷って言葉に異様に反応するんだからさ。

                              

 ともかく、亜鉛とマンガンが比較的簡単に手に入ることは分かった。それで電極を作ればマンガン電池を作るのは可能。だけど、絶縁体が要るし、容器も必要。

 あ、でもその昔、なんか電池を包む容器に段ボールが使われてたって聞いたことがある。ングリーアスって、普通に紙はあるみたいだから、厚めの紙に金型でなみなみをつけて裏表にまっすぐな紙を貼り付ければ作れない? 

 ああ、段ボールがあれば、重い木箱より積み荷も軽くなって、輸送の石炭の量も減りそうだよね。やっぱ段ボールの開発が先だわ。

 

 ま、段ボールを先に作ると言った時のジル・サンダーの落胆ぶりは、ハンパなかったけどね。


 モノには順番があるってことで……

  

 

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