流通革命は諸刃の剣
もちろん、問題提起というか発案するのはこっちだ。だけどネタのすべては明かさない、ってか明かせない。専門技師じゃない私は蒸気機関車の細部を知っている訳じゃないからだ。それに、私の足りない部分をみんなで考えてもらう。そしたらみんなで作ったってことにもなるでしょ。(ならない?)
「燃料は薪でも良いんだろうけどさ、ちょっと火力が足りないと思うんだよね。なんかわーっと温度の上がるものってないかな」
と、こちらから半ば質問するように問題を提起する。すると、
「それなら、石炭なんかどうです?」
とビーンに言われて、びっくりした。なんと、この世界でも石油や石炭は昔から使われているらしい。ただ、鍛冶屋や硝子工房とかの限定で一般的には薪や炭が使われている。そして、限定なので採掘量はあまり多くないということだった。大丈夫かな……増産とか。機関車の動力としてはもちろん、レールのために大量に製鉄してもらうためにもすっごくたくさん要るんだけどな。ますます国を挙げてかからないとムリっぽいよね。本人はマジで嫌がってるけど、ジル・サンダーが王族でホントによかった。と思いながら彼を見ると、何かイヤな予感を感じたのか、一瞬身震いしていた。ゴメン、その予感大当たりだよ(笑)
それから、この顔合わせの後、ダヌルウークが間欠泉の町タリーゼに招待してくれた。蒸気の威力を体感してほしいとか言って。確かに勉強にはなったんだけどさ、領主の息子が来て、タリーゼの人々が放置できる訳がなく、温泉に食べ物にって、まるで社員の慰安旅行みたいになっちゃったんだよね。メンバーの結束は図れたかもだけど、起業したとたんに慰安旅行なんて、何だかなぁ……
そして、できあがった案をジル・サンダーとダヌルウークで王様に持って行った。1人で持って行くのを嫌がったジル・サンダーが、ダヌルウークを引っ張っていったのだ。しかし、連れていかれたダヌルウークも涙目だった。貴族と言っても爵位はあまり高くはないらしいし、そもそも領主でもないのに王様に謁見なんて……とお城に向かう道中でもぶーたれていた。
そして、ジル・サンダーたちが持ち込んだ話に、
「なんと、水で動く車だと?」
王様は呆気にとられた顔をして固まった。いや、正確に言うと水と石炭なんですが。それでもピンとこないか……
だけど、信じられないといった様子だった王様も、2人の丁寧な説明でだんだんその目が輝いてくる。一度に大量の人や物資を運べるのは国としてホントに魅力的。
すぐさま予算会議が開かれ、試しに王都と一番近い町、ラディアンを結ぶ10kmあまりの道に線路を敷くことを検討し始めた。
でも、話が具体的になるにつれて、私は逆に怖くなってきた。
物資が豊かになってそれぞれの町が発展するのはもちろん良いことだと思う。いいんだけど、ほかの国の大きな脅威になるってことはないだろうか。
たとえば、国境近くに架設すると、派兵の可能性とか考えて却って隣国との仲が悪くなるとか。私は単純にミラクロアが便利になればいいと思ったのと、この技術を他の国に売れば、相当な外貨を稼ぐこともできる。雷を捕まえるよりはよほどマシってつもりだったんだけど、これはこれでとんでもないまさに革命級の提案だったのかもしれないと。
国際情勢がミョーなことにならなきゃいいと祈るしかないな(ため息……)




