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流通革命前夜(プロジェクトメンバー召集)

 そして、いろいろなところに協力者を求めた結果、集まってきたのは貴族から職人、果ては商人までバラエティに富んだ面々だった。こちらから条件として提示したのは、彼らが皆その家の長子ではないことだけだった。


 貴族庶民にかかわらず、家を継ぐのは長男がほとんど。商売なら手広くやっていれば支店展開で各地に飛ぶということもあるだろうが、貴族なんかは領主は1人いれば十分だし、後は武官文官などの宮仕えをするか、女の子しか持たない貴族や豪商の婿がねになるしかないのだ。

 だからといってその跡取りから外れた彼らが優秀じゃない訳じゃない。中には真綿に包まれて育ったその長子よりもずっと技術力や商才を持つものもいる。そういう人材を眠らせるのは、もったいない。大げさに言えば国家の損失だと、私がジル・サンダー相手に一くさりぶったのだ。

「うん、確かに跡取りを横取りしちゃったら恨まれるよね」

と、ジル・サンダーも笑っていたけど、とりあえずミシンは成功だとはいえるけど、今はそれだけの右に行くか左に行くか予想もつかない工房(本当は会社と言いたいとこだけど、私は実体がないし、ジル・サンダー1人じゃ会社とは言えないもんね)に自分の命運を預けられるのって、結局身軽な『冷や飯食い』なんだよね。


 初会合の日、

「でね、僕が作りたいのはお湯で動く車なんだ」

と嬉々としてジル・サンダーがそう述べると、みんなが一様に呆気にとられた顔になった。だーかーら、そんなベタな言い方したらみんな退くって言ったのになと私が舌打ちしてると、

「お湯で動くって、お湯が火を噴く訳でもあるまいに」

1人すぐさま立ち直って、そう言ったのはエメラルドグリーンの髪をしたマウリッツ。医者の三男坊だ。因みにジル。サンダーは記録と称して、みんなの話を箇条書きしてくれている。それに対して、

「火は噴かないけど、お湯は閉じ込めて沸かすとものすごい力を発揮するんだ。

ねぇ、卵を火の中に入れるとどうなる?」

とジル・サンダーは質問を質問で返す。マウリッツは首を傾げるが、

「どうなるって、爆発するにきまってるだろ!」

と答えたのは、黄髪(間違っても金髪じゃない、黄髪だ)のビーン。

こちらは小間物職人の次男だ。うん、こういうとこ知ってるのは庶民だよね。ジル・サンダーも頷きながら、

「爆発するよね。それって、火に入れることで卵の中の水分が蒸発して殻が破れるほど圧力がかかるってことなんだ」

と、答える。だけど、それを聞いて、

「卵の殻なんて柔いもんだろ」

落としたらすぐに割れちまうじゃんと、言ったのは王都一の商会の四男坊、クレスタ。商売人は比較的家族総出でやれる仕事だが、それでも四男ともなると常に販路拡大を考えていないと難しいし、何よクレスタのお父さんは商売もそうだけど色恋もお盛んで、妾腹の彼は正妻の中に割って入るのがイヤだという事情があった。実際、この話を出したとき真っ先に食いついたのがこの子だったりする。

「まぁ、あんまり堅いといざ育っても自分で出られないなんてことになるんだろうからな。

にしても、熱いお湯には結構な力があると俺も思うぜ。タリーゼで時々思い出したように水柱を立てる温泉がある。ジル・サンダーが言いたいのは、あれと同じことを人の手でやれないかってことだろ?」

「そ、それなんだよ、ダルヌウーク!」

んで、間欠泉を知っていたダヌルウークにジル・サンダーはぶんぶんと首を縦に振って握手を求める。

 実このダヌルウーク、時期領主であるお兄ちゃんが小さい頃病弱で、もし成人できなかった時のために、彼も領主教育を受けていたらしい。でも、そのお兄ちゃんが10歳を過ぎてから急に元気になったため、めでたく? お役御免となったということ。因みにタリーゼというのは、後で聞いたらダヌルウーク領にある、有名な温泉保養地らしい。いろんな温泉があるっていうから、別府みたいなとこかな。

さらに、

「水柱?」

と尋ねるビーンに、

「ああ、人の背をはるかに超して上がるんだ。しかも、いつ吹き上げるか判らない。初めて見た者はたいてい度肝を抜かれる」

と、間欠泉の補足説明をしてくれるダヌルウーク。

 ……実はこれもこのプロジェクトチームを作った目的の一つなのだ。

 確かにこれはジル・サンダーというか私の発案なんだけど、だからといって細かいところは曖昧だし、ジル・サンダーと2人だけじゃ荷が重い。それと、2人で作れたとしたらそれはジル・サンダー1人の功績になるのだ。別に良いんじゃないかって? それが困るんだな。

 ジル・サンダーのお父さんは王弟。しかも、非常に優秀な人だったらしい。その神童ぶりに、温厚で社交的な現王様がかすんで見えるほど。実際問題、お父さんを王様にっていう人たちも少なからずいたようだ。もちろん、お父さんは王位を継ぐつもりなんかぜんぜんなく、宰相としてお兄ちゃん(王様)を支えるつもりだったんだけど、視察の道中に、お母さん共々馬車の事故で亡くなってしまった。ただ、その経緯にん? と首を傾げる内容もあったりして、王弟殿下は暗殺されたという噂が瞬く間に広まってしまったらしい。だから、お父さん並、いやそれ以上働きをしちゃったら、今度こそジル・サンダーを王様にって動きになるのだとか。しかも、その最先鋒が王様だって言うんだから、なんだかねぇ……王様に似て温厚で社交的なトリスタン王子の方がフツーに王様向きだと思うよ。お父さんはどうだったか知らないけど、いきなり雷を『捕まえに行く』ようなジル・サンダーが王様に向いてるとはとても思えないんだけど……                            

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