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手紙の行方
その日から僕は彼女に手紙を書くようになりました。
もちろん見つかれば社会的地位、信用、果ては家の名すら傷つけます。
でもそれが精一杯の自分にできる我慢でした。
彼女が返事をくれた事は僕の一方的な片想いではない事を示していましたが、あの時代において何かをどうこうする事などできません。
手紙の最後にたった1行愛してると記すことすらできませんでした。
何一つ大切なことを伝えられない中身のない手紙を書くばかりで、結局は書く前と何も変わらないのだと気づくのにそう時間はかかりませんでした。
あの頃は毎晩月を見てはいつか、生まれ変わったなら彼女の為だけに生きたいと願っていました。
その想いはいつしか今すぐ死んで生まれ変わりたい、貴族の子となり彼女を幸せにする資格を思って再び出会いたいと思うようになりました。
そんなある晩に彼女の様子がおかしいと聴き、急いで彼女の元を訪れました。
高熱でうなされる彼女を朝まで看病しました。気がつけば陽は傾き、ベッドの上で上体を起こし僕の手を握ってこちらを見ていました。