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魔王と呼ばれた救世主  作者: ドノバン
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第13話 ギルドという存在Ⅲ

「お疲れ様」

「おう、何とかな」

しかし、魔力を使いすぎたせいか、少し体に倦怠感を覚える。ドーラが自分の手を戦牙の頬に回して口づけした。瞬時に体の中に、魔力が供給されるのを感じ取る。

「荒っぽい回復方法だな」

「そう、周りのお友達も同じ方法見たいだけど?」

見れば秀吉たちもバツの悪そうな顔をしている。

いくら好きな子がキスをしてくれるといっても、それを友人に見られるというのは気恥ずかしいものだ。

「なぁ? 一つだけ聞いておきたい。お前ら、俺が知っている奴らだよな? この世界じゃない場所からきたな?」

「そうだよ。多分、お前と同じ場所から来た」

「お前だけでも生き残ってりゃよかったが、結局死んじまったみたいだな」

「あの状況で、誰か生き残れるとも思えんがな・・・・・・」

結局のところ、彼らが友のことを思う気持ちは一緒だった。戦牙の目の前で死んでいく中で、彼らは戦牙のことを案じていたということだ。

「それで、この世界を救うために連れてこられた?」

「そういうことだな。俺はレインと一緒にこの世界に来た」

秀吉の傍らにたたずむ女性は、金髪の美しい女性だった。しかしどこかアンニュイな雰囲気を漂わせており、少し湿っぽい印象が付きまとう。軽く頭を下げただけで、彼女は一言も発することはなかった。

「レインは私の妹よ。というより、ここにいる女の子たちは、全部私の妹ね」

「お姉さまと気が合う救世主がいるなんて驚きだわ」

まだ幼さが残る声で、そしてそのままの背格好で言ったのは黒髪をツインテールにした少女だった。とにかく小さい。女性陣の中で最も小さく、彼女が言葉を発するまで戦牙は存在に気付かないほどだった。

「誰だ? この小さい奴?」

「だ、誰が小さいですって!?」

「お前しかいねぇだろう? 実際背の低さは相当なもんだな。ドーラの半分くらいか?」

「あまり怒らせないで。この子が一番面倒くさいから」

ぷりぷり怒っている少女を見れば、どことなくドーラに似ているところがあるだろうか?

いや、やはりないなと思いなおす戦牙だった。大人びた雰囲気を見せているドーラに比べると、彼女はあまりに幼い。

「で、こいつに救世主になるよう言われたのはどっちだ? 信長・・・・・・じゃなさそうだな」

「そうだ、正宗だよ」

「お前そんな趣味あったっけ?」

「・・・・・・趣味の問題ではない。成り行きの問題だ」

妙に納得してしまう戦牙と仲間たちである。確かに寡黙な彼がロリコン趣味を持っているとは思えず、そう考えれば成り行きであることは確実であろう。

「それに、彼女は俺たちと同い年だ。まぁ、人間の年齢に換算すればということになるが」

「?? どういうことだよ」

「神の年齢と人間の年齢が、同じであるわけなかろう。ただし、どうもこれからは俺たちも同類になるようだがな」

「すげぇ長生きするってことか?」

秀吉の問いに、レインが頷いた。

「私たちはもう何千年も時を生きてる。あなたたちも、これからはそうなるわ」

「実感がないね」

「そうだな・・・・・・。ところで彼女の名前を紹介しておこう。サーシャだ」

「サーシャよ! 覚えておきなさい」

誰も最後のサーシャの言葉に相槌はうたない。ここまで絵にかいたように傲慢で、しかもそれが似合わない少女もいないだろう。

「で、信長は?」

「私の名前はアゲハです。信長様を救世主にさせていただきました」

信長についていたのは、長い紫色の髪をした女性である。ドーラよりも背が高く、大人の雰囲気もどっこいどっこいだ。信長はいつも羽目を外しすぎるから、彼女くらい落ち着いた女性のほうが歯止めになりそうだった。

「これからは4人で行動することも多くなりそうだな」

「それは前と変わらないだろう? 前だっていつだって四人でいた」

「それもそうだ」

正宗だけが頷いただけで何も言わない。ただ気持ちは伝わるものだ。

「すまない、少し訪ねたいのだが、あの竜を倒したのは君たちか?」

突然声をかけられて、四人は声のほうを向いた。

そこには前世で言えば刑事もののドラマに出てきそうなトレンチコートを羽織った男が一人立っている。見た目はまだ若く、刑事ドラマのテイストで想像するにまだ新米といったところか。となれば、恐らく後ろにベテラン刑事がいるはずだ。

「おう、はじめ。見つかったか」

「えぇ、トシさん。たぶん、彼らです」

「なんでぇ、まだ若いじゃねぇか。てっきりあの野良を倒したって聞いたから、もっと玄人かと思ったぜ」

やっぱりいた。

トシさんと呼ばれた方は、かなり年季の入ったヨレヨレのスーツを着ており、かなりすり減った革靴を履いている。典型的なベテラン刑事だ。いや、彼らが刑事かどうかは全く不明なのだが。

「あんたらは?」

「あぁ、そういえば名乗ってなかったね。僕は西藤元さいとうはじめ。討伐ギルドに所属している職員だよ」

「同じく討伐ギルドに所属している土方利三ひじかたとしぞうだ。お前さんたち、ちょっと今から時間あるか? 何、悪くはしねぇよ。今日の話を聞きたいだけだ」

全員が顔を見合わせた。突然出てきた討伐ギルドという耳慣れない名前。ここにきて、この世界にギルドというものが存在することを知った。しかし数あるギルドの中に、討伐ギルドというものはなかったと思う。

ドーラのほうを見ると、彼女は例のごとく脳内に話しかけてきた。

『討伐ギルドは、モンスターを中心とした自然災害に対して備えるギルドよ。ほとんど街の外で活動することが多いから、基本的には認知度が低いわ』

『なるほどな。ついて行っても大丈夫か?』

『悪いようにはしないと思うわ』

話はまとまった。戦牙とドーラが土方と西藤について歩きはじめ、それに他の面々が従った。

彼らが向かった先は街の中でも古びた一角。

確か色町ギルドとかいう、かなりいかがわしい店の集合体であるギルドも存在したはずだ。こんなところに討伐ギルドを作るなんて、作った人間がよほど酔狂なのか、あるいは素っ頓狂なのかのどちらかだと思う。

そして討伐ギルドの建物は、予想通りとても薄汚れていた。事務所として使っている部屋も小さく、入った瞬間煙草の匂いがする。ドーラたちは顔をしかめており、戦牙も御多分にもれない。

「すまん、煙草ダメか? そうだよな、未成年だから当たり前か」

笑いながら土方が窓を開ける。

外からさわやかな風が入ってきた。

「討伐ギルドにようこそ。まぁ、まずはそこにかけてくれ。スペースが無けりゃ、適当に他から椅子でも持ってきてくれ」

促されるままに戦牙たちは座った。無論全員は入りきれないから、正宗と秀吉は椅子に座り話を聞く。

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