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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 狙われる命 ――政府首都グリードシティ――
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第7話 レート=クライシスへ

 【臨時政府首都ポートシティ 臨時政府議会議事堂 総帥オフィス】


 臨時政府とアレイシア軍が合流して(形式的にはアレイシア軍の全面降伏だけど)、早くも1週間が経った。私はまた命令書と睨み合いをしていた。


「パトラー、次は“レート=クライシス”への出撃命令か?」


 女性将軍のクラスタが私に言う。アレイシア軍との合流の件を処理している中に、この命令書だ。国際政府は慎重に審議したらしいけど、まともな審議が行われていないのは明らかだ。この様子じゃ、マグフェルトの案に賛成するだけの議会になっているのかも。

 レート=クライシス――レート州クライシス郡は、大陸東部にある場所だ。その更に東には、ティト州、そして、連合政府首都ティトシティがある。


「今度ばかりは戦いは避けられない。行くしかないだろう」

「……うん」


 レート=クライシスは何度も国際政府と連合政府との戦いの場になってきた。今も、西部市街地は国際政府の支配下にあり、東部市街地は連合政府の支配下にある。この命令書は、そこへの出撃命令だ。


「クラスタ、行こう。レート=クライシスを打ち破り、連合政府首都を陥落させ、――」

「いよいよ、この時が来たか」

「――連合政府の終わりとラグナロク大戦を終わらせよう!」



◆◇◆



 【国際政府首都グリードシティ 元老院議事堂 総統オフィス】


 時期が時期のせいか、今日も俺のグリードシティは雨だ。嵐となっている。何度も雷鳴が轟き、風雨が激しく叩きつける。

 だが、今日は俺の心の中も暴風雨だった。予測に反し、アレイシア軍は臨時政府に降伏した。あれだけ順調なところを見ると、遥か前から裏で繋がっていたのだろう。


「……アレイシア、俺を弄ぶ気か?」


 邪魔な女だ。いずれ始末せねばなるまい。だが、今は一刻も早くパトラー=オイジュスを始末せねばな。彼女だけでなく、クラスタやその他の臨時政府上層部の人間共も皆殺しにせねばならない。

 レート=クライシスはそういった意味で、好都合な場所だ。戦闘になればなるほどパトラーの死ぬタイミングは増える。

 パトラーを殺し、俺の息のかかった部下を臨時政府総帥に据える。ソイツを使い、クラスタやその他の連中も始末してやる。所詮、臨時政府は国際政府の下位国家でしかない。


「いつまでも俺を出し抜けると思うな。所詮、お前たちは俺の計画から逃れることなどできんのだ」


 パトラーが死に、臨時政府が国際政府と一体となったとき、連合政府の役目も終わる。ティワードも、コマンドも、アレイシアも、ライカも皆死ぬことになるだろう。そして、俺の夢は終わり、現実となるのだ……



◆◇◆



 【連合政府首都ティトシティ 中枢拘置所】


 監獄のような拘置所に入れられてから1週間。コマンドの部下によると、私の処分は思ったよりもやや厳しいものになりそうな感じだ。

 私は、大陸から北西の海上にある離島の軍用本部――“ルイン本部”へ異動になるらしい。将軍という地位は持ったままだが、事実上の左遷だ。本当は降格処分になってもよかった。ただ、連合政府首都から飛ばされるのだけはゴメンだった。

 いや、そうでもないか? もし、レート=クライシスが破られ、国際政府や臨時政府の軍勢が首都に迫れば、必ず本拠地移転になる。その際の候補地は恐らく2つ。1つがルイン島。もう1つが“ハーピー諸島”だ。前者ならラッキーだ。私が臨時政府の為に大きく動ける。


「アレイシア……」

「……ケイレイト将軍」


 鉄柵の向こうにケイレイトが立つ。この1週間で彼女が来たのは初めてだ。


「なにか用か……?」

「……レート=クライシスへ出撃するように命令が下されたって知ってる?」

「私に?」

「いや、パトラーに」

「パトラーに? そうか、国際政府が命令を下したか」


 ということは、パトフォーの命令なんだろう。マグフェルトの名でパトラーに命令を下した。その狙いは彼女をレート=クライシスの戦いで殺すためだ。だが、彼女はそんな簡単には死なない。普通にいけば、死ぬことはないだろう。……たぶん。


「アレイシアは、パトラーは大丈夫だと思う?」

「……レート=クライシスは何度も国際政府と連合政府の主戦場となった場所だからな。あそこは連合の兵力も多い。気を付けた方がいいだろうな。でも、彼女なら大丈夫だろう」

「…………。……そっか」

「…………?」


 ケイレイトは安心したような表情を浮かべる。安心した、のか?


「ありがとう、アレイシア」


 彼女はそう言うと、私に背を向けて去って行く。そうか、ケイレイトも連合政府に愛想を尽かしているのか。だから、臨時政府に期待しているんだな。

 連合七将軍。今は5人しかいないが(アレイシア、ケイレイト、メタルメカ、他2人)、その内の2人が連合政府の崩壊を願っている。もはや、この国は末期なのかも知れない……

 <<統治機構と社会>>


◆国際政府系国家・組織

 ◇国際政府(2)

 ◇臨時政府(18→21)


◆連合政府系国家・組織

 ◇連合政府本部(2)

 ◇ビリオン=レナトゥス(4) ※「夢Ⅷ」未登場

 ◇連合軍=アレイシア軍(3→0) ※臨時政府と合流


◆戦争中立系国家・組織

 ◇シリオード帝国(1) ※「夢Ⅷ」未登場


※()の数値は勢力を現す数値。数値が高いほど勢力も強い

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