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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 狙われる命 ――政府首都グリードシティ――
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第4話 アレイシアシティからの脱走

 【アレイシア城 星の間】


 夜になった。私はリークと共に、アレイシア城最上階――星の間へとやってきた。広く奥行きのある星の間。薄暗い部屋中の壁や天井、床に銀色のクリスタルの欠片がはめ込まれている。……なるほど、“星の間”なだけにある。

 部屋の奥に椅子がある。そこに座るのは、アレイシアの王リーダー――キャプテン・アレイシアだ。その左右にコマンダー・サーラとコマンダー・レベッカがいる。私と同じ中将だ(また残念ながら、私よりも2人の方が実力は上だ)。


「キャプテン・アレイシア将軍、コマンダー・ライカ、ただいま参上致しました」

「……大切な話がある」

「…………?」


 急に真剣な顔になるキャプテン・アレイシア。大切な話? ま、まさか、私の昇格の件かっ!? それは確かに大切な――


「私は臨時政府に降伏する」


 ……は?

 私はキャプテン・アレイシアの言った言葉が一瞬、理解できなかった。呆然としてしまう。臨時政府に降伏?


「ご、ご冗談を」

「いや、本気だ。私とこのアレイシア軍は全て臨時政府に降伏する」

「…………!!?」


 こ、この女、本気か!? 今や連合政府本部よりも遥かに強大な勢力になったアレイシアが、一戦もせずに臨時政府に降伏するのか!?


「連合政府を裏切るんですか?」

「ああ、そうだ。私はパトラーと共に連合政府を倒す」

「……ウ、ウソ?」


 私は素早く後ずさる。キャプテン・アレイシアのヤツ、本気で連合政府を裏切るつもりだ! これは確かに大切な話だっ! っていうか、その手土産に私を臨時政府に……!?


「リ、リークっ! 逃げるぞ!」

「お、おう!」

「いや、逃がしはしない!」


 キャプテン・アレイシアが立ち上がる。と同時に、私たちが入ってきた大きな扉が開かれる。入って来るのは6人のクローン・コマンダーだ。コミット少将、エル少将、スー少将、ネリア少将、リン少将、カポナー少将だ! 本当に残念なことに、彼女たちは私とほぼ同程度の実力者たちだ。


「しょ、少将6人はないでしょ……!」

「捕えろ!」


 裏切り集団は中将2人含め8人。どう足掻いても勝てる見込みはない。私を捕まえ、臨時政府に降伏する気だ。私の昇格どころか、命が危うい状況だ。

 入ってきた扉から逃げられる確率はゼロだ。ならば、――


「リーク、来い!」


 私は星の間の大きな窓に向かって走る。窓に手をかざす。超能力で打撃を起こし、窓ガラスを割り壊す(結構、硬かったな。強化ガラスか?)。割れた窓ガラスから私は飛び降りる。リークも続く。

 アレイシア城は巨大な城だ。地上まで1000メートル近くもある。私は空中で打撃を起こし、その衝撃で何度も飛び上がる。それを繰り返し、勢いを弱めて地面に着地する。しばらくして、リークも上手く着地する。


「さて、この後、どうするか……」

「まずはアレイシアシティから脱出した方がいいかもな」


 リークが別の建物の壁に設置された大型スクリーンを指差す。そこには、緊急事態を示す赤色のマークと、私たちの姿が映っていた。


「な、なにっ!?」


 辺りを見渡すと、すぐ近くに楕円状の小型機械が浮かんでいる。ガラスで覆われたその機械の中には、カメラレンズが見えていた。


「偵察機……!」


 私は小型偵察機に手をかざし、それを斬り壊す。スクリーンの映像も消える。だが、すぐに別の映像が映し出される。そこにあったのは、さっきとは違う、別角度から映る私たちだ。これじゃキリがない。私とリークは偵察機を無視し、市街地へと走って行く。

 アレイシアシティは無数の高層ビルが立ち並ぶ大都市だ。だが、そこにいるのは全てクローン軍人(元軍人も含む)。


「ねぇ、アレって……!」

「捕まえろ!」


 私服を着たクローン兵が飛びかかってくる。何人もいる。だが、彼女たちが私たちに触れることはできなかった。空中でその身体は弾かれる。


「こ、これは……!?」

「シールド!?」


 リークがニヤリと笑う。そう、彼はシールドを自由自在に操れる特殊能力者パーフェクターだ。普通の人間じゃない。

 リークの張る物理シールドに守られながら、私たちは市街地を走り抜けていく。目指すのは第7飛行場だ。私たちの乗ってきた小型戦闘機がある。


「ふふっ、便利な能力だな。物理シールドで“道”を作れるじゃないか」

「やろうと思えばな」


 しばらく市街地を走っていると、塀に囲まれた場所が見えてきた。辺りには建物もほとんどない。第7飛行場だ。

 リークが物理シールドで道を作る。私たちはシールドの道を駆け上り、第7飛行場へと飛び込む。広い場所にデルタ状の小型戦闘機が並んでいる。


「う、うわっ、まさかアレが……」


 リークがこっちに走ってくる“巨人”を指差す。ビッグ・フィルド=トルーパーと呼ばれる巨大クローンだ。遺伝子操作で創られたらしい。


「キャプテン・アレイシア将軍から話は聞いたぞ。行かせるものか!」

「グラビトン……!」


 グラビトンは身長17メートルの女巨人。連合政府内では正式な地位を持ってはおらず、“ネクスト中将(=次の中将)”という、アレイシアのヤツが与えた私的地位を持っている。……つまり、現中将とほぼ同程度の実力を持っている(私も欲しいな、ネクスト将軍(=次の将軍)っ!)。

 彼女は巨大な斧を振り上げ、私たちに向かって振り下ろす。リークが物理シールドを張る。大きなガラス音が鳴る。


「なっ……!?」


 リークの物理シールドにヒビが入っていた。普通の銃弾や砲弾では到底、ブチ破れないシールドが破られそうになっていた。


「急げ、ライカ!」

「…………!」


 私は急いで小型戦闘機に乗り込み、出発の準備をする。敵はグラビトンだけじゃない。ぐずぐずしていると、他のクローン兵まで追いついてくる。――私は焦っていた。だからこそ、気が付かなかった。


[――コマンダー・ライカを発見]

[よし、彼女だけを捕まえよ。部下はいらん]

[イエッサー。サーラ中将]


 出発準備が終わると、私はリークの方を向く。何度も繰り返されるグラビトンの激しい攻撃。彼は何度もシールドを張り直し、彼女の猛攻を防いでいた。


「リーク!」

「おう、んじゃ逃げ――」


 リークがそう言ったときだった。


[撃て!]


 彼のいた場所に、別方向から砲弾が飛び、着弾した。爆音が鳴り、コンクリートの地面が砕けた――

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