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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 狙われる命 ――政府首都グリードシティ――
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第3話 コマンダー・ライカ中将

 【コスーム大陸南西部 レーフェンス州 アレイシアシティ(連合軍アレイシア本部)】


 パトラーとの会合(まだ密会といった方がいいか?)を終えた私は、小型飛空艇に乗り、ポートシティの南東方面にあるアレイシアシティへと戻ってきた(やはり、アレイシアシティとポートシティではポートシティの方が遥かに発展しているな)。

 密会で、予定通り臨時政府に全面降伏することが決まった。明日にでも、世界に向けてそのことを発表する予定だ。


「キャプテン・アレイシア閣下、上手くいきましたか?」

「ああ、全部計画通り」


 小型飛空艇から降りると、黒いレザースーツを着たコマンダー・コミット少将が声をかけてくる。彼女もアレイシア軍上層部後にあるクローン軍人。アレイシアが臨時政府に降伏する予定であることを知っている。


「これで何も問題はないな」

「いえ、それが……」

「…………?」


 私は脚を止め、コマンダー・コミットに顔を向ける。彼女の言葉は思いもしなかった言葉だ。


「先ほど、連合政府本部からコマンダー・ライカ中将がお見えになりまして……」

「なにっ、コマンダー・ライカが?」


 コマンダー・ライカか。ちょっとマズイな。アレは連合政府本部派のクローン軍人だ。

 連合政府に所属するクローン軍人は、ほぼ全員が私の率いるアレイシア軍にいる。だが、コマンダー・ライカのように、連合政府本部に所属する者もいた。


「……だが、計画変更をするヒマはない。コマンダー・ライカが従わないなら、彼女を捕えるまでだ」

「分かりました。兵に彼女を見張らせておきます」

「頼んだ」


 こんな時期にコマンダー・ライカがやってくるなんてな。彼女自身は大した実力者ではない。大方、私の監視だろう。



◆◇◆



 【レーフェンス州 アレイシアシティ アレイシア城】


 アレイシアシティ―― いつからそう呼ばれることになったか。


「ふぅん、凄い都市だな」


 私の部下・リークが窓からアレイシアの街並みを見ながら言う。今、このアレイシアシティにいる人間の中で、彼だけが普通の人間男性だろう。いや、“普通”ではないかな?


 広大な面積を有するアレイシアシティ。特殊な素材で造られた黒色の建物が立ち並ぶこの大都市には、250万人もの女クローン軍人が住んでいた。

 都市内には、彼女たちの住居や娯楽施設、飲食店、ショッピング・センター、病院、食糧生産プラント、武器製造工場、飛空艦製造工場などがある。もはや、ここは1つの街だった。

 そして、その大都市のど真ん中にあるのが、このアレイシア城だった。さっき、この城にキャプテン・アレイシアが帰ってきたらしい。


「この規模じゃレーフェンス州の州都レーフェンスシティを超えるかもな。生活にも困らない。どうだ、住んでみたくなったか? ……女にも困らないぞ?」


 私は冗談交じりに言う。


「こんな街じゃ寝不足になりそうだ」

「そりゃどういう意味だ」


 私はパトフォーからの命令書に目を通しながら言う。私たちの任務はパトラー=オイジュスの抹殺と“キャプテン・アレイシアの抹殺”だった。

 250万人のクローン軍人を有し、強大な軍事力を誇るこのアレイシア勢力は、パトフォーからすれば、もはや邪魔なんだろう。

 そして、この任務が終われば、私は晴れてコマンダー・ライカ“将軍”になれるのだっ! つまり、七将軍の地位を得ることが出来る。しかも、アレイシア軍総指揮官だ。この都市が私のものになる。


「ふふっ、張り切って行こうじゃないかっ!」

「いつもに増してやる気満タンだな」

「こんなチャンスはもうないからなっ! 将軍だぞ! 私も連合政府リーダーの1人になるんだっ!」


 私は高ぶる気持ちを抑え、命令書を放り投げる。命令が書かれた紙は、ひらひらと空中を舞いながら、床へと落ちていく。その紙に、私は手をかざす。一瞬で、紙はシュレッダーにかけたかのようにバラバラに斬れる。……私の能力だった。


「クローン軍人は便利な能力を持っているな」

「まぁね」


 超能力―― 一部のクローン軍人が使える高度な魔法の一種だった。これは本来、シュレッダー代わりに使うものじゃない。本当は戦いで使うものだ。……例えば、少し離れた場所からなら、他人の人体を斬ることだって出来る。


「コマンダー・ライカ」


 扉が開き、部屋にクローン軍人が3人、入ってくる。キャプテン・アレイシアとコマンダー・コミット、コマンダー・サーラだ。


「これはこれは、アレイシア将軍。お疲れさまです」


 1ヶ月後には私が将軍かも知れないケドね。

 ……どうでもいいが、残念ながらアレイシアと私じゃ彼女の方が強い(本当に残念ながら)。1人じゃ到底、相手に出来ない。しかも、パトラーとアレイシアは、ほぼ同程度の実力を持つ。

 私はチラリとリークを見る。……彼と私ならきっとアレイシアもパトラーも討ち取れる。実は彼は結構、優秀な部下なんだ。


「で、何用で?」

「今夜、重要な話がある」


 ほう、夜のベッドでお話か? ふふっ、夜明けまで相手になるぞ。


「夜20時にアレイシア城の“星の間”に来てくれ」

「……イエッサー」


 星の間か。ご立派な名前を付けちゃって。確か、最上階にあるキャプテン・アレイシアの公室だ。昔の王座をモチーフにした部屋らしい。

 私が了解の返事をすると、3人は部屋から出ていく。重要な話か。どうせ、臨時政府討伐の件だろう。ま、それは確かにしっかりと話さないとな。あの臨時国家は世界一の勢力を今や持っている。


「俺も付いて行った方がいい?」

「んー…… そうだな。一応、よろしくっ」


 どうせ、何もないんだろうケドね。

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