第37話 パトフォーの暗躍
――こちら、GFT-000031です。“ターゲット・P”を発見しました。
[間違いないか?]
――ええ。気を失っていますが、生きています。
[よし、すぐに連れ出し、ルイン本部へ移送せよ]
――はい、パトフォー閣下。
[……ティワードとライトはどうした?]
――2人とも死亡を確認しています。
[そうか。――殺す手間が省けたな]
――おかげさまで、私たちは“総督艦最高司令室の破壊”に時間をかけることが出来ました。
[では、最後の作戦に移るぞ。ルイン本部へ向かい、“制圧作戦”を開始せよ]
――了解しました……
◆◇◆
【連合政府本部要塞 ルイン本部】
ティワード総統の死亡から1週間。私たちの本拠地であるルイン本部へ、パトフォー閣下直属のクローン兵たちがやってきた。
ルイン本部の内部に造られた飛空艇離着陸場。そこへ1隻の黒い小型飛空挺が着陸する。扉が開かれ、黒色のスロープを歩いて降りてくるのは、黒いアーマー・スーツを着たクローン兵だ。
「アレイシア将軍、どこの部隊でしょうか……?」
コマンダー・ドロップ准将が私に問いかけてくる。もっともな質問だ。普通の人間なら、あの部隊は見たことがない。
私は唾を飲み込んで、全身を黒い装甲服を覆ったクローン兵に近づいていく。――パトフォー・ガードと呼ばれるクローン兵たちに……
「待て。ここはオーディン総統閣下の統べるルイン本部だ。何の用で来た?」
「…………」
4人のパトフォー・ガードは私の問いかけを無視し、2列に並ぶとお互いに向き合う。すると、小型飛空挺からまた別のパトフォー・ガードが降りてくる。彼女の後ろからは、正面がガラス張りの浮遊医療カプセルが運ばれてくる。――誰かが入っている。
「…………!!?」
私の表情が凍りつく。……緑色の液体で満たされた医療カプセルの中。そこに入っていたのは、――
「パトラーっ……!?」
私は呆然と立ち尽くす。間違いない。パトラーだ。なぜ、こんなところに……? いや、愚問だ。総督艦で捕まったんだ。
「そ、それは、――」
「ターゲット・P――パトラー=オイジュス。先の戦いでティワード総統を殺害した第一級の戦犯だ」
並んだパトフォー・ガードが、私に背を向けたまま、冷たい声で言う。ターゲット・Pだと? 最初から狙っていたのか? ……何のために?
「この女を使い、次世代生物兵器の開発を――」
「なんだと!?」
私の身体から血の気が引いていく。パトラーを実験台にする気だ。……彼女が殺される。殺す気だ。一番、残酷な方法で!
私は我を忘れ、漆黒の装甲服を着たパトフォー・ガードに対し、拳を繰り出す。だが、その手は黒く硬い手に握り止められる。
「クッ……!」
パトフォー・ガードは強い。止められた手を振りほどけない。その内にも、パトラーを入れたカプセルは運ばれていく。そして、小型飛空挺からは次々とパトフォー・ガードたちが歩き出てくる。彼女たちは周りにいた普通のクローン兵たちに近づいていく。
「えっ、なにっ?」
「なにする気っ!?」
「いやっ!」
パトフォー・ガードは動揺するクローン兵に近寄ると、その腹部に素早い動きで拳を繰り出す。悲鳴。彼女は床に倒れる。……拳には黒い電撃が纏われていた。
「うぐっ!」
「ゃあっ!」
「アレイシアしょっ――!」
パトフォー・ガードたちは何の戸惑いもなく、クローン兵たちを次々と気絶させていく。コマンダー・ドロップも倒されてしまう。
「なにをするんだ!」
「全てはパトフォー閣下のため。アレイシア将軍、次なる世界で必ずやあなたは英雄となるでしょう」
「どういう意味だ!?」
私が叫ぶとほぼ同時に、パトフォー・ガードは私の腹部に黒い電撃を帯びた拳を打ち込む。激しい衝撃と電撃が私を襲う。力が抜けていく。遠のく意識。床に倒れる身体。
「パトフォー閣下、“ルイン本部制圧作戦”を開始します――」
「…………!?」
[GFT-000031――コマンダー・フィンブル。ルイン本部を制圧し、余の計画を最終段階へと進めよ。そして、ラグナディス計画を完了させるのだ]
ルイン本部を制圧だと……!? なにを始める気なんだ、パトフォー……! パトフォーとして命令をしても、オーディンやコマンダー・ライカを従わせられないことでもする気なのか……!?
小型飛空艇からは次々とパトフォー・ガードが出てくる。別の場所では銃撃音や魔法弾が爆発する音が鳴り響いている。
ラグナロク大戦の終わりが近づいている。パトフォーは追い詰められている。だが、それでも、彼の計画は最終段階にまで進んでいる。
このルイン本部を制圧し、パトラーを使い、黒い夢は成就しようとしている。クラスタ、フィルド、シリカ…… まだ、ラグナロク大戦の終わりは分からない――
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※本作はこれで完結です。お付き合い頂いた皆様に深く感謝申し上げます。
※本作は「ルイン・ラグナロク」に続きます。もしよろしければ、またお付き合いください。




