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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 狙われる命 ――政府首都グリードシティ――
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第1話 世界の黒幕の道具たち

 狙われる命。


 黒い夢が、白い夢の命を狙う。


 白い夢を、永遠に葬るために――









































































 【国際政府首都グリードシティ 元老院議事堂】


 冷たい雨が首都の街に降り注ぐ。雷が鳴り響き、人々を恐怖させる――

 国際政府首都グリードシティ。無数の高層ビルが立ち並ぶ、世界最大の都市。1800年もの間、国際政府の首都であり続けた都市。その都市に、冷たい雨が落ち、風が吹き荒れる。雷が轟く。


「マグフェルト総統閣下、まもなく元老院本会議場です」

「…………」


 漆黒のスーツを身にまとった俺の部下――トーテムが言う。灰色をした大きな扉が開かれる。俺とトーテムは、元老院本会議場へと足を踏み入れる。万雷の拍手が鳴り響く。


「国際政府全権執行最高大臣・マグフェルト総統閣下――」


 俺は議会場中央の総統席へと歩いていく。鳴りやまぬ俺への拍手。それは、俺がこの世界の王であることを表すのに、充分であった。

 だが、本当にこの世界の王であるか、と言われれば、それは違う。“まだ”、違う。――近い将来、名実ともにそうなる。


「元老院議員の皆様、国際政府暫定総統のマグフェルトで御座います」


 暫定総統? 違うな。やがて暫定は常任となる。俺が永遠に総統であり続ける世が来るのだ。俺こそが世界の王となるのだ。


「先日より議題となっている――」


 トーテムが俺の側で総統席のコンピューターを操作する。元老院議員それぞれが座る席に、1枚のシールド・スクリーンが現れる。そこに映るのは、1人の女性軍人。黄色の髪の毛にエメラルド・グリーンの目をした女性。――パトラー=オイジュス。


「“連合政府”に対する不当な侵略を排除する命令案に御座います。現在、我が国の南西部は連合政府のアレイシア軍によって不当に占領されています。この侵略によって、我が国は莫大な国益を失っているのです。わたくしは、今すぐに本命令案を可決し、侵略を排除したいと考えております」

「今すぐに採決を!」

「採決をお願いします!」

「総統閣下、国益を取り戻しましょう!」


 俺は笑いたくなるのを堪え、総統の椅子に座り、側のトーテムに合図する。


「皆さんっ、本命令案について審議が尽くされたものと判断し、これよりっ、採決を取りたいと思います! 賛成の方は賛成のパネルを、反対の方は反対のパネルに触れてください!」


 トーテムが大きな声で話す。万雷の拍手が鳴り響く。賛成が圧倒的多数だった。そりゃそうだろう。国際政府の国益を取り戻す大事な命令だからな……





 【国際政府首都グリードシティ 元老院議事堂 総統オフィス】


 誰もいない真っ暗な俺のオフィス。暗闇に浮かび上がる不気味な青色の立体映像。映っているのは、国際政府と対立する連合政府のグランド・リーダー――連合政府総統のティワードだった。


[参上致しました、パトフォー閣下]

「あの命令案は可決させた。アレイシア軍の指揮官に伝えよ。――あの女を、パトラー=オイジュスを殺せ、とな」

[……確かに承りました]


 本当に笑いたくなるな。侵略も、命令も、全て俺の自作自演よ。国際政府も、連合政府も、俺一人の道具でしかないのだ。

 ……俺の邪魔をする者には、死あるのみ。あの若い女性軍人がいよいよ死ぬこととなる。パトラー=オイジュス。これまでご苦労であった。俺の都合いい操り人形として働いてくれた。だが、彼女はもはや邪魔になった。俺の望む世界を壊そうとしている。


「パトラー=オイジュスを消せば、もはや俺の計画は最終段階に入る」

[分かっております]

「あの女を生かしておくな。確実に抹殺せよ」

[はっ……!]


 俺はそう言うと、その場から立ち上る。映像が消えていく。あの男――ティワードとて不必要になる時が近い。そうなれば、もはや邪魔者。長らく俺の操り人形だった礼として、安らかな死を与えてやろうではないか。

 大きな窓から外を眺める。骨身まで凍らせるような雨風が吹き荒れている。時々光る雷が、闇の空に厚い雲の姿を晒す。パトラーとティワードが、その身体を風雨に晒す日も近い。


「悪いな。俺の道具は、全て使い捨てだ――」


 役目が終わるとき、その命に終わりが訪れる。忠実なあのトーテムさえも、いずれ役目が終わる。その日が訪れたときに、彼らは気が付くのだ。自分はただの使い捨ての道具でしかなかった、ということに……


「――世界さえも、俺の道具だ」


 雷が激しく鳴り響き、俺の姿を何度も光に晒す。雨と風が窓ガラスに叩きつける。天は、俺のことが嫌いか? だが、言ったであろう。――俺の邪魔をする者には、死あるのみ。例え、天であろうが、神であろうが、俺の邪魔をするならば、死を与えるだけよ。

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