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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 東部の戦線 ――レート=クライシス――
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第9話 クライシス河の激戦

 【クライシスシティ クライシス河】


 西岸からも白い小型ボートが何十隻と出撃していく。そこに乗るのは国際政府軍の兵士たち。河を渡る途中で、黒いボート――連合軍の軍勢と戦いになる。

 河の上でも戦いになっていた。白いガンシップと黒いガンシップが激しい撃ち合いになり、1機、また1機と河に落ちていく。

 激しい銃撃音や爆音が鳴り響く。両岸から砲弾と銃弾が飛び、敵陣地に攻撃を加える。炎と煙が挙がり、コンクリートや鉄で出来た砲台や防壁、建物が崩れていく。


「しっかりと捕まっていろ!」


 クラスタが叫ぶ。私は彼女の腰に捕まり、片手に持ったサブマシンガンで近づいてくる連合政府の軍用兵器を撃ち落とす。

 私たちはクライシス河にいた。河を渡り、連合の支配地に乗り込もうとしていた。激しい戦闘が行われるクライシス河。何度も水しぶきが起こる。


「パトラーさん、後ろを!」


 私たちの右隣をスピーダー・バイクで飛ぶクローン兵が叫ぶ。仲間のコマンダー・ヴィクター准将だ。彼女の声に、後ろを振り返る。2体の黒い人間型機械兵士が、スピーダー・バイクで迫って来ていた。乗っているのはバトル=メシェディだ。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 バトル=メシェディは、片手に持ったアサルトライフルで、私たちを狙い撃ちしてくる。何度も銃弾が飛んでくる。


「メシェディか。私に任せろ」

「アーカイズ!」


 装甲服を着たクローン軍人――アーカイズ中将が、急に速度を落とし、2体のバトル=メシェディよりも後ろに下がる。彼女は背中に背負ったジェット機で飛んでいた。

 アーカイズは腰に装備していたハンドガンを手に取ると、バトル=メシェディ2体の首を正確に撃ち抜く。機械兵士は機能を停止し、乗っていたスピーダー・バイクごと河に突っ込む。


[パトラー=オイジュスを上陸させるな、彼女を討ち取れ]


 スピーダー・ボートに乗っている人間型指揮官ロボットのバトル=アレスが命令を下す。護衛のバトル=メシェディたちがアサルトライフルを手に、私たちに銃弾を浴びせようとする。

 だが、銃弾が放たれる前に、ボートに砲弾が着弾する。ボートは木端微塵になり、バトル=アレスも河に消えていく。


「ここでパトラーを死なせると、アレイシア将軍に怒られるじゃないか」

「コマンダー・サーラ!」


 砲弾を撃ったのは、元アレイシア軍のコマンダー・サーラ中将だ。スピーダー・バイクに乗る彼女の左腕は、鋼の砲身に変化していた。彼女は武器の特殊能力者パーフェクター。身体の一部を武器に変化させる事が出来る。


[パトラー総帥、クラスタ将軍]


 突然、私の通信機に連絡が入る。クローン軍人のソフィア将軍からだ。


[こちら、クライシス下流。東岸に攻め込めたわよ。これから北上して、プロヴィテンスの本陣に進むわ]

「了解、気を付けて!」

[ええ、そっちもね]


 そう言い、ソフィア将軍は通信を切る。南部市街地で臨時政府のクローン兵10万人を率いるソフィアの部隊は、思ったよりも早く攻め込めたようだ。

 そのとき、後ろで大きな水しぶきが起こる。水が私たちにもかかる。すぐ後ろで砲弾が落ちたらしい。私を狙ったものだな。


「バトル=ガンシップ……!」


 後ろには大型のデルタ型をした黒い軍用兵器が飛んでいた。ボートやガンシップよりも大きな軍用兵器だ。アレでもロボット兵器らしい。三角形の先に近い部分に、砲身が左右に2つ着いている。機体の下には、バトル=アルファと呼ばれる人間型軍用兵器が30体もぶら下がっている。

 私は後ろから猛スピードで追って来るバトル=ガンシップに、サブマシンガンで銃弾を浴びせる。だが、それらは全て弾かれて弾かれる。シールドを張っている……!


「邪魔をするな」


 アーカイズが飛んでいく。右腕に黒い雲状のエネルギーを溜め、その拳でシールドに覆われたバトル=ガンシップを殴りつける。衝撃波が起こり、シールドは砕け、そのまま本体にも大きな亀裂が入る。

 バトル=ガンシップは炎を噴く。くるくると回転しながら、浮力を失い、西岸に向かおうとした黒いガンシップに激突し、水中に沈んでいく。


「さすがだな」


 クラスタがスピーダー・バイクを操りながら言う。気が付けば、もうすぐクライシス河東岸だ。連合軍の部隊がいる場所だ。

 そのとき、再び通信が入る。今度はスロイディア将軍とホーガム将軍からだ。


[こちら、クライシス北部市街地だ。東岸に上陸成功した。南下して敵の本陣を突く]

「了解、ホーガム将軍」

[どちらが先にプロヴィテンスに辿り着けるかな?]

「ふふっ、急ぎ過ぎて死なないでくださいね」

[そのセリフ、そのまま返そうか]

「……お互い死なない程度にがんばろう」


 私はそう言い、通信を切る。北側から攻め込んだ臨時政府の軍勢も東岸に渡った。北側にいる臨時政府クローン兵も10万人だ。合計で20万人のクローン兵が北と南から攻め込んでいる。

 そして、中部市街地では、私たちが攻めていた。臨時政府クローン兵が10万人。国際政府の一般軍人が20万人。総合計で50万人もの兵士が東岸の連合軍と戦っていた。

 数の上では連合軍が勝っている。でも、兵の質では遥かに私たちが上だった。連合の主力であるバトル=アルファは所詮、量産型ロボット。その実力は、クローン兵と比べると遥かに下だった。


「パトラーさん、クライシス東岸です!」


 コマンダー・ヴィクターが言う。私はサブマシンガンを両手に握り、スピーダー・バイクから飛び出す。空中で体制を整えながら、地上のバトル=アルファたちに向かって銃撃する。脆弱なロボットたちは次々と倒れる。ある程度の数を倒したとき、私は地面に着地する。


「さて、この先にプロヴィテンス将軍がいるんだな」


 あと少しだ。この戦いが終わり、連合政府首都を落とせば、連合政府はきっと崩壊する。ラグナロク大戦の終結は近い――!

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