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目指す先は同等






「両者、前へ!」


 教師の言葉を合図にルークとクインは試合が行われる範囲に入る。

 二人は相手から目を逸らさず、それでいて会話は無い。

 ルークもクインも先程交わした言葉で十分だと感じているからである。

 兄妹故に飾った言葉など必要ないのだ。


 観客と化した生徒たちは勿論、ルークの決意やクインの心情など知らない為、暢気に歓声を上げて応援をしている。


「どっち応援するよ?」

「男を応援する趣味はねぇ」


 やはりと言うべきか、交友関係の広いクインに声援を送る生徒が多い様子で、尚且つどちらも知らない生徒は見目麗しい女生徒を応援する為に会場全体がクインの勝利を願う形となった。

 無論、ルークの勝利を願う生徒も居ないわけではないのだが、大多数に押され、声を上げる事が出来ないようだ。

 

 そんな観客席をマオは見やり、そして二人に視線を戻す。

 マオとしてはどちらが勝っても良いと思っている。

 もう自分の王都行きは決しているし、所詮ユアンの友人であり、マオとの接点はさほど無いのだから。

 しかし、ユアンの為を思えば両方と共に王都へと行く方が良いのである。

 叶う事なら意識を保ったまま、どちらかが勝利するのが望ましいのではないだろうか。

 なぜなら、ガーナードが気絶により戦闘不能であるからである。

 この学園の制度や方針を見て取れば生徒に厳しい。

 気絶で倒れた生徒を慮り、試合を延期するなどの優しさを見せるとは思えなかった。

 つまり、どちらかが負けても意識さえあれば王都行きの切符を手に入れることが出来るかも知れない。

 ただ、これはマオの予想であり、マーサ学園長の考えとは異なる可能性がある。

 出来る事ならユアンの為にも自分の推測が当たる事を願うマオであった。


 そんな事を考えていると観客の歓声が大きくなり始めた。

 それは試合が開始する事を意味している。


「先の戦いで怖気付く事なかれ、負けを認めるも一つの手段である」


 審判を勤めるファドレド先生の言葉に二人とも頷く。

 ファドレド先生の気遣いであり、先の戦いをもっての注意喚起であった。

 それを確認したファドレドは観客の望む言葉を発する。


「では・・・試合開始!!」


―わああああああああああああ!!!!!!!!!


 開始と言う言葉と同時に前に飛び出したのは当然、ルークである。

 彼の武器は槍という中近距離武器だ。

 魔法も風を武器に纏わせたり、防御に使用したりと中近距離魔法を得意としており、近付かなければ話にならない。


 魔法で追い風を作り出し、自分の背中を弾くルークは爆発的な速さで地を舐めるようにクインとの距離を縮める。

 いつの間にか風を纏わせた槍を突き出し、首を狙う。

 その一撃は手加減など感じさせないモノで、対峙しているクインが死を予感するほど鋭い。

 試合という枠組みで戦っているとは思えないほどである。

 

 ルークは落ちてきた者であるが、実力が足らずに落ちてきた訳ではない。

 どちらかと言えば実技に関しては優秀な方であった。

 彼の生まれ持った体質が無く、多種多様な魔法を使えたのであれば上位に食い込むほどの実力者である。

 ただ、相手もその実力者に含まれる人間である。

 クインがここにいるのは父の命令とルークが心配であったからだ。

 彼女もまた、王都の学園において優秀な成績を残した魔法師である。


「『巨人の土手甲』」


 槍の切先がクインの首を貫く寸前、地面が隆起し、間一髪、ルークとクインの間に土壁を作る。

 しかし、ルークの猛攻はまだこれからであった。

 追い風により加速したルークは土壁に衝突するかに思われた。

 だが、クインが魔法で回避することは予想していたのであろう。

 巧みに風を操り、壁に沿うようにして直角に曲がったのだ。

 土壁を回り込み、更なる追撃を加えようとしたのである。

 しかし、壁が途切れ、向こう側に顔を出したその瞬間、ルークは殺気を感じ、無意識に風を強め通り過ぎてしまう。

 その判断は正解であった。

 クインは出てくる瞬間を狙って水系統の魔法『水刃』を放っていたのである。

 水の刃は地面を抉りながらルークがいた場所を過ぎ去っていった。

 あのまま、クインに追撃を食らわせようとしていたのであれば今頃、真っ二つになっていたであろう。

 本能的な回避に助けられた形だ。

 しかし、これが切っ掛けにルークは不利な状況になってしまった。


 授業内の模擬戦で見せたクインの戦い方はちくちくと嫌な攻撃を繰り返し、相手の苛立ちを利用するようなものであったが、本来彼女は遠距離型魔法師である。

 一定の距離を保ちつつ、逃げながら相手の不利な状況を作り出し、遠距離から一方的に攻撃するのが彼女の戦闘形態だ。


 今まさに現状がそうであるいや、そうさせたのであった。

 ルークの攻撃が届かない位置から彼の得意な風や覚えたての炎系統の魔法では対処し辛い水や土系統の魔法で攻め立てる。

 が、ルークも棒立ちし、攻撃を受けるほど馬鹿ではない。

 巧みに風を操り、宙を舞い、地を這い、見事に魔法を避けてみせる。

 隙を見せれば、魔法で牽制、陽動をし、近付き決定打を与えようと試みていた。


 しかし、流石は兄妹と言ったところであろう。

 どちらも相手の動きを読み、隙を狙い、弾かれ、流す姿は他の人間から見ればまるで演舞をしているように錯覚してしまう。

 生徒が求めていたのはこのように白熱した戦いだった。

 先の試合はマオが圧倒的であり、盛り上がりに欠け、ガーナードに同情してしまうほど悲惨な戦いに見えたのだ。

 その為、このように攻守が入れ替わり立ち替わる試合は何とも彼らの興奮を刺激していた。


「『流水の叛乱』」

「ふっ・・・はぁ!!」


 水系統の魔法を放ったクインにルークは避けるしか方法が無く、攻めきれない状況が続いている。

 皆が熱狂の渦に飲み込まれている中、一人の姿がこの場を去ろうとしていた。

 マオである。

 マオはこの試合の行く末がおおよそ予見できていた。

 どう足掻いたところで攻め手に欠けるルークではクインに叶わない事を。

 無論、それだけで判断したつもりは無い。

 ルークが火系統の魔法を会得し、成長したようにユアンの近くで訓練をしていたクインもまた、成長しているのだ。

 彼女の成長は目に見えて変わったという事はなかった。

 ただ、その成長は彼女の戦い方と相性が良かったのである。

 彼女は『精霊との親和性』がより良くなっていた。

 魔法の威力、射程、発動速度、それらが少しばかり向上している。

 一つ一つはそれほど脅威でなくともその小さな成長は現に今、ルークを苦しめていた。


「シッ!!・・・!?」

「ふっ!・・・『土霰』」

「ちっ!『道阻む気流』!!」


 漸く掴んだ一つの機会も魔法により中断させられる。

 それも逃げれぬように相性の悪い土系統の広範囲魔法で。


 交戦の一部を見届けるとマオは訓練場に背を向ける。

 それは見る必要が無いと言うのもあるが、身体を気遣ってのものであった。

 マオにとっては苦しくなくともユアンであれば倒れてしまうほどの高熱と胸痛が襲っている。

 体は既に限界寸前と言ったところであろう。


『待って』


 戻る直前、マオは足を止める。

 彼の足を止めることの出来る人間など一人しかいない。


『マオ・・・待って』

「ユアン、起きたのか・・・」


 ユアンが目を覚ましたのである。

 マオは試合など見ずにさっさと自室に戻るべきだったと後悔した。

 それは次に発するユアンの言葉が分かっていたからである。


『マオ、僕はこの戦いを見届けたいよ。・・・ううん、見届けなくちゃいけない気がするんだ』

「・・・」


 身体の主導権はマオが持っている為、ユアンの言葉を無視し、戻っても構わない。

 どう考えても自室に戻り、身体を休めるのが最善策だということは分かっているはずなのに、ユアンは終わりまで見たいと言う。

 後遺症が出るかもしれないというのに。


「・・・わかった」


 最近、マオが引くことを分かっていてユアンはお願いをしている節がある。

 少し引き締めないといけないなと思いつつも結局の所、ユアンに甘いマオが折れるしかないのだ。

 

『ありがとう、マオ』

「ただし、身体の主導権は俺が持つ」

『・・・ありがとう』


 どこかむすっとしながらも自分の事を考えてくれている彼に感謝の意が絶えないユアンであった。



 戦いは中盤に突入していた。

 相変わらずクインが距離をとり、ルークが攻めきれない状況が続いている。


(・・・やりづれぇ)


 それがルークがクインに対する最もな感想であった。

 自分の事を熟知され、尚且つ相性も悪いと来る。

 狩人にじりじりと追い詰められた獲物のような息苦しさを感じるのだ。


 まさにそうなのであろう。

 ルークには現状を打破する方法が無く、クインはルークが逃げ辛いように土系統で足場を悪くしている。

 石畳が捲れ上がり、中の土肌が見え、水系統の魔法によりぬかるんでいる地面は逃げに徹しているルークにとって足を取られ、反応が遅れてしまう危険があった。

 いくら風を纏っているとは言え、その一瞬の隙が命取りになるほどのギリギリな戦いなのだ。


(可能性に掛けてみるか?いや・・・だけど・・・)


 一つだけこの現状から抜け出す手をルークは思いついていた。

 だが、彼にとってそれは一度見ただけの魔法。

 それも正確に見せてもらったわけでも無い。

 それをこの場面で挑戦できるかと言われれば、ルークには不可能であった。

 不確定な魔法に頼るほど怖い物はない。



 一方のクインは着々とルークを仕留める準備を整えていた。


(後はルークを落とすだけ)


 宙を自由自在に飛ぶ彼は本当に風に愛されている。

 彼の風だけはクインでも太刀打ちできない。

 故に策を弄するのだ。


(どうしてルークは諦めたの?・・・私には分からない)


 余裕のあるクインは試合前にルークが言った言葉を思い出していた。

 クインは今までどれだけルークが辛かったか知っている。

 体質により学内では友人に恵まれず、教師には貴族と言う肩書きから腫れ物のように扱われ、家ではクインと比べられていた。

 彼がどれだけ努力し、その都度苦渋を味わってきたかクインは知っている。

 それでもと諦めずに進んできた彼が何を見て、何を思って『諦める』という結論に至ったのか。

 何に対しても食らい付いて来た彼が・・・。

 クインには分からなかった。


(でも、ルークの目は何か違うように見えた・・・)


 ルークは何か隠している。

 この戦いでそれが分かるのだろうか。

 クインはそれを確かめるべく、気のせいであれば目を覚まさせる為に全力で叩き潰す。


(お姉ちゃんだもの)


 ルークの光彩の奥に秘めた決意を確かめる為に・・・。



 飛び回るルーク、それに追撃するクイン。

 盛り上がっていた会場も単調さが見えてきたこの試合に飽きを感じ始めていた。

 特に逃げ回るルークに苛立ちを持ち始めている。

 男の癖に、逃げんな、落ちるのも仕方ない。

 そんな声が聞こえてくる中、ルークは相変わらず隙を窺う。

 しかし、試合の流れが変わったのはルークの行動からであった。


「『ヒュオナグランデの槍』」


 英雄譚『ヒュオナの意思』と言う物語に出てくる槍を模造した槍を風で作り出した。

 勿論、完璧に再現したわけではないが、風の切り裂く音からそれがどれほどの威力を持っているか察する事ができるであろう。

 それをまるで投槍のように掴み、クインを見据える。

 それを見たクインの顔は若干引き攣っていた。

 彼女はその魔法を知っているのだ。

 敬愛する二人の兄が好んで使う魔法。

 その一撃の威力は一度領地に作られた訓練場を吹き飛ばすほどの威力。

 ルークにしても完璧に再現できているわけではないだろう。

 しかし、それでもクイン一人吹き飛ばせる威力はある。


「『『『巨人の鉄手甲』』』!!」


 先程とは比べ物にならないほど重厚な壁をクインは生み出す。

 金属特有の光を放つ表面に分厚く並べられた三枚の壁。

 それは何も通さない意志を感じさせる。

 ルークはしっかりと踏ん張れるように地面に降りた。

 さすがのルークも空を飛びながら放てるほど余裕がある魔法ではないと言う事だろう。


「ぶっ飛べ!!」


 上体を反らし、握り締めたその魔法をばねの様に射出する。

 自分の魔法にも拘らず、反動で後ろにたたらを踏んでしまう。

 『ヒュオナグランデの槍』は周囲の風をも自分に吸収し、その大きさを更に肥大化させていく。


 捲れ上がった石畳を全て吹き飛ばし、『鉄手甲』に衝突すると、まるで鉄と鉄を擦り合わせたかのような甲高い音を立て始める。

 拮抗しているように見えたその競り合いは『鉄手甲』が抉れると言う常識ではありえない状況として周囲の人間に知らしめた。

 

 全く勢いが緩む事無く、三重の『鉄手甲』を難なく貫通してしまった。

 それは更に観客を護っていた結界にぶち当たる。


「ダンケル先生!!」

「わかっちょる!!」


 ダンケルは周囲に張り巡らせていた結界に流していた魔力を唯一点に集中させ、強度を上げ、生徒を守るべく、全力を尽くす。

 一回戦にマオの魔法で貫通してしまった経験を生かしたということになる。

 結界にぶつかり、尚も一直線に進もうとするルークの魔法が消えたのは少し経った後だった。

 徐々に風の螺旋が弱くなり、最後にはふわりと消えて霧散した。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」


 荒い呼吸のルークをよそに生徒の視線は先程まで魔法があった場所に釘付けであった。


―わああああああ!!!!


 掌を返すようにルークへの賞賛の声が上がる。

 素直に彼の魔法に驚く生徒も居れば、彼はこれを狙っていたと分かったように振舞う生徒も居た。

 ルークはそんな言葉も耳に入らず、唯単にクインが居たであろう場所を見やる。

 彼の勘がこれで終わらないと告げていたのだ。

 当然だ、ルークは元々これで終わらすつもりも無かった。

 唯、この魔法で何か変われば打開策が見えるかもしれないと、そう思っただけだったのだ。

 しかし―


「地面に降りたね」


 聞きなれた声の筈なのに不気味に聞こえるその声はまるで耳元で囁かれたような近さでルークに最悪を告げる。


「『死霊の泥手』」


 それは地面から生えた手のような物。

 何本もの泥の手は死へと誘う死霊の手に見える。

 危険を察知し、飛び立とうとしたルークの足をしっかり掴み離さない。

 それどころか更に奥へと引きずり込んでいく。

 抜こうともがくが、更に沈むばかりだ。


「ちぃっ!!『狂乱を運ぶ猛風』!!」


 地面に向かって放たれた魔法も泥を少し弾くだけですぐに元に戻る。


「『一滴の憐憫』、降参すれば外してあげる」

「くそっ!くそっったれぇえええええ!!」


 手を前にかざしクインはそう告げる。

 唯、これは言ってみただけ。

 頷かない事など分かりきっている事だ。


 外そうと努力するルークにクインは慈悲無く魔法を完成させた。

 拳大の水の塊。

 傍から見ればただの『水球』であろう。

 しかし、クインがそのような初心者じみた魔法を使うはずが無い。


「これで私の勝ち」


 魔法が放たれた。

 それはふよふよとゆっくりルークの元へと進む。

 触れてしまえば弾けてしまいそうなほどか弱く、緩やかな動き。

 だが、勿論この魔法もルークは知っている。

 弾けたあの水球が引き起こす現象を。


(負けるのか?こんなところで?新しい夢を見つけたばかりなのに?)


 周りの声が、目の前に迫る魔法が更にゆっくりになるほど、思考に飲まれる。


(クインに俺の決意を見せるんじゃなかったのか?)


 負けたくない、負けれない思いがルークを動かした。

 それは身体が勝手にさせたものだろうか、はたまた精霊が手を貸したのか、当の本人を以ってしても分からない。

 右手が赤く光り魔法陣が浮かぶ、左手も同様に緑の魔法陣が輝いた。

 誰に教えられたものでもなく、勝手に身体が動いたのだ。

 光る両手の掌を合わせ、交じり合った魔法陣で魔法を紡ぐ。


「『昇華する劫火』」


 と。


 それはマオがユアンに見せた混合魔法。

 ルークが見たのは魔法が発動した後の惨劇のみ。


「嘘!!」


 誰が予想できたであろうか。

 咄嗟にこの状況を打開する魔法を放てるなど、クインも当のルークでさえ成功した事に驚きを隠せない。


「ほう」

『凄い・・・』


 マオは感嘆の息を漏らし、ユアンは称嘆の言葉を発する。

 マオはルークが何故あの魔法を放てたのか、おおよその見当は付いていた。

 マオが魔法を見せた時の精霊がルークに力を貸したのだろうと。

 唯、精霊の力だけで成功するほど甘くない事も分かっている。

 そこは運であろうか、はたまた本能で感じるものがあったのか分からないが、土壇場であれを放てたルークに対し、素直に驚いた。


 ルークの放った混合魔法はクインの魔法と衝突するも、圧倒的な熱でクインの魔法を蒸発させてしまう。

 クインの放った魔法は当たったものを包み込み、生き物なら窒息死し、魔法であれば飲み込んで消し去ってしまうものであった筈なのに、一瞬でクインの魔法の方が消え去った。

 

 ただ、唯一の不幸はルークが制御できるほどこの魔法は甘くなかったところであろう。

 制御できないその魔法は一直線にクインの元へと進んでいく。


「クイン!!」


 怯えて動けないクインに、力を出し切ったルーク。

 教職員も咄嗟の事に対応できていなかった。


―轟!!


 誰も動けぬこの場所で唯一人だけそれに対処できる人が一人居た。

 燃え盛るそれがクインに当たる瞬間、人影が割って入る。


「クイン、お前の負けだ」


 この魔法を初めに使ったマオだ。

 クインの前に立ち、劫火を水系統の魔法でそれを受けきった。

 炎や爆発で視界が閉ざされていた為、内魔力を使い、魔法を構築したのだ。


 クインはその場にへたり込んだ。

 無理も無い、死が目の前に迫る光景は大人でも恐怖するだろう。

 ましてやクインはまだ成人前、幾ら魔法の扱いに長けていようと精神はまだまだ子供である。

 ルークも価値に拘り過ぎていた事に反省の色を示す。


「介入してしまったから再戦か?」


 マオは二人に構わず、審判のファドレド先生に問う。


「本来であれば、な?」


 ファドレドの視線はクインに向いており、彼女の反応を待っている様子であった。

 ファドレドはクインの口にする言葉が分かっていたが念の為ということであろう。


「私の負けで構いません。私にあれを返す余裕などありませんでしたから」

「だそうだが?」


 その言葉はルークに向けられたものであったが、彼はそれに頷くだけで勝利が確定したはずなのに―


「再戦を要求します」


 ―と言う。


「俺にとって今の魔法は偶然出来たものです。何ら俺の実力ではな―」

「ルーク」


 ルークの言葉をクインが遮る。


「もういいよ」

「勝ちを譲られて嬉しい男なんて居るはずねぇだろ!!」

「譲るんじゃないよ」


 クインの言葉は優しくて、家族を思う感情が込められていた。


「ルークの決意は感じたから・・・強くなる以外の新しい何かを見つけたんだよね?」

「・・・」

「お姉ちゃんに話してみて?」

「姉じゃねぇよ・・・」


 ふっとルークは息を吸い、大声で会場に響く声で宣誓する。


「ユアン!!!俺はお前より強くなる事を諦めた!!だけど―」


 もう一度息継ぎをし、マオを指差し宣言した。


「―お前の横に並び立つほどの男になりてぇ!!頼む!!お前の持つ全てを俺に分け与えて俺を強くしてくれ!!」


 結局は強さを求めている辺りルークらしい。

 だが、その本質は丸っきり変わっていた。

 自分の試行錯誤でお前より強くなれないから、『以上』を諦めるから教えを乞うてでも同等で居たいと。


「ふふっ、やっぱりルークらしい」


 クインは微笑む。

 結局は強くなる事を求めていて、もしかすれば今まで以上に辛い道かもしれない道を選ぶ。

 ルークはどうしようもないほどの訓練馬鹿だったことを再認識するクインだった。


 マオはルークの宣誓に返事を返さない。

 いや、返すべきではないと思っていた。


『ねぇ、マオ』

(なんだ)

『僕はやっぱりズルしたように思う』

(何度も言わせるな。俺はお前の力の一部に過ぎない。その力に偶々意思があっただけだ)


 マオはユアンを諭す。

 ただ、続けられた言葉に逃げ道を作って。


(それでも尚、ルークに後ろめたさを感じるのであれば、奴より強くなれ、俺より強くなれ。それだけだ)

『・・・・・・分かった。それとすぐに倒れないようにするよ』

(頑張れよ)


 マオはそういい残し、意識を落とす。

 それに釣られ、ユアンも意識を落とすのであった。

 薄れ行く視界の中、ルークが何か言っていた気がするユアンであった。



「返事を返せよぉおおおおおおおお!!!!!!!!!」


 と。


 その日、王都行き優秀者の名前が公表された。

 一年 ユアン

 同じく一年 ルーク・ディナトルエ

 そして三年 ガーナード


 この三名が王都行きという事となったのであった。

(@´ー`)ノ゛やぁ


Q:生きてるかい?

A:生きてるよ


Q:飯食ってるかい?

A:朝はパン、昼はそうめん、夜はおにぎりって感じで食べてるよ


Q:お盆だね

A:ですな、私は13~15日ですたい


Q:何か言う事あるんじゃないの?

A:ヾ(;´Д`●)ノぁゎゎ

  ごめんよぉ・・・

  今回、文字数増やしたから許してぇ・・・(当社比三話分ぐらい)


Q:仕事ブラックなの?

A:ち、違うもん

  休みは週一、大きな休みも三日しかないけれどちゃんと残業代も出るし、定時に帰っても文句は言われないよ

  ただ、他の人達が仕事好きすぎて帰るに帰られないだけだよ(顕著なのがシャチョーサン)


Q:本文の話をどうぞ

A:間違ってるところがあったら教えてね(読み返してないからどんな伏線張ってたか思い出してない・・・)

  最後の一文は間違いじゃないよ


では最後に謝辞を皆様、何時もながら更新遅れて申し訳ありません。

前回も告知したように十月になれば何とか更新頻度を上げられるようになりそうなのでもうしばらく・・・なにとぞなにとぞよろしくお願いいたします。

これからも『一人組』をどうかよろしくお願い申し上げると共に、この暑い中皆様の体調が悪くならない様にお気をつけてくださいませ。


後、新作に関しましての情報は最近書いてなかった活動報告のほうにでも情報を乗っけておこうかなと思っております


ではでは(以下茶番【嘘次回予告】)


王立魔法学園に通う少年ユアン

彼の正体は王都を賑わす大怪盗マオであった!?

そんな彼が通う学園に一通の手紙が舞い込む

「月が円を描く時、学園に眠る秘宝『純なる聖杯』を頂きたく候   怪盗マオ」

しかし、ユアンはこのような手紙を送った事実を知らない

『純なる聖杯』という宝に興味を持ったユアンは闇夜に隠れそれを狙うことにした

果たして『純なる聖杯』とはどのような宝なのか?

偽マオとは何者なのか?

ユアンは学園の真相へと介入するのだった


「どんな秘宝よりお前の心が欲しい」

「マオ様///」



次回「最後の台詞、乙女ゲーに出て来そう」「城○内死すと迷った」の二本で合おう

デュエルスタンバイ!!


・・・なんだこれ?


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