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傷跡 その二

前話書き直してます

アイナとの出会いを三年にしました

理由は余り無い

強いてあげるなら優秀者は三年生から基本的に選ばれると言う規則に則ったためです






 窓から差し込む麗かな陽気。

 昼食を食べる為に学外に出る人が多い教室で人の居ない教室の片隅、僕はパンを片手に本を読んでいた。

 一人静かな空間。

 最近唯一一人になれるこの時間帯を僕は何よりも愛している。

 本の捲る音が教室に反響し、心落ち着く。

 次の実技は訓練場で行われる為、他の人間が戻ってくる事は無いだろう。


 ―あぁ、忙しなくていいなぁ。


 近頃、このゆっくり出来る時間が何とも得難いものだと分かってきた。

 いや、分かる事を強要されたといっても過言ではないだろう。

 何せ―


「あ~!!こんな所にいた!!」


 元凶がやってきたようだ。


 ―あぁ・・・さらば、安らぎの時間よ・・・。


 最近の僕は彼女に付き纏われている。

 あの中庭での邂逅以来、何度も彼女は教えを乞いに来た。

 断ればいいのだけど、そのままずるずると押し切られる形で勉強を見てあげるといつしか彼女は僕の横に居るようになったのだ。

 まるで奈落に引きずられている様に感じるのは僕だけだろうか。


「はぁ・・・」

「なによぉ、そのため息は」


 アイナはため息を吐いた僕に不満な様子だ。

 僕の不注意とはいえ、なぜ彼女は僕にこうも懐くのか。

 別の教室なのに休憩や学園の後にこうして僕のところに来るのだ。

 たいして面白い事があるとは思えないけれど。


 自分で言うのも癪だが、僕は他人から見れば近寄り難い人間ではなかろうかと思う。

 他人とは余り話さず、かといって教師からの覚えが悪くない。

 無能もしくは教師からの贔屓が無ければ、陰口の対象に出来たかも知れないのに、残念ながら優秀で立ち回りも隙がないと自負している。

 嫉妬の対象にはなっているけど。


 ともかく理由が思いつかない。

 一目惚れと言う線も無い訳ではないが、彼女に対する扱いを思い返せば、百年の恋も冷めるんじゃないかと言うほどには雑な扱いをしていると思う。

 彼女が虐げられて興奮する変態でもなければ、恋と言う感情は芽生えないだろう。


 ・・・変態じゃないよね?


「何読んでるの?」


 彼女の問いかけに思考の底に沈んでいた意識が浮上する。

 目線を本から逸らし、前を向くとすぐ近くに彼女の顔があった。

 吐息が頬にかかるほどの距離。

 宝石のように煌く琥珀色の瞳の奥に僕を映している。

 その様子に一瞬ドキリとしたが彼女は何時もこうである事を思い出した。

 彼女の何気ない仕草全てが無防備だ。

 僕を男として見ていない事が見て取れる。

 だから僕はそっと一目惚れという言葉を心の手帳から消した。


「君に言っても分からないと思うけど?」

「そんなの分かんないじゃない。ほらほら言ってみ?」


 彼女は両手を自分に向けて振り、早くと急かす。

 絶対に分からないと思うけれど、言うのはタダだ。

 絶対に分からないと思うけどね!!


「『軍事魔法改革論―詠唱編 詠唱と想像の関係性から読み解く精霊の優先度』って題だけど分かる?」

「・・・何言ってるの?」

「・・・」

「・・・」


 今のはここ最近で一番腹が立ったかもしれない。

 人に聞いといてそれは無いと思う。

 だから聞いてきた責任として僕の見解を聞いてもらおうか。


「君にも分かるようにゆっくりと説明するよ」

「あ!!私、次の座学の準備しなくちゃ!!」


 逃がすか。


「大丈夫、君の次の授業はファドレド先生の歴史だ。何も用意する物はないよ」

「・・・」


 彼女は逃げられないと悟ったのだろう。

 背を向けて逃げ出そうとしていた体勢をこちらに戻した。

 その顔いっぱいに苦々しい表情を浮かべて。


「時間もいっぱいある事だし、君が分かるまで付き合ってあげるから」

「・・・お、お手柔らかに」


 当然だ。

 教える側には教えると言う行為に責任が生じる。

 分かるまでしっかりと教えてあげるよ。

 だから逃げ出さないように、ね?

 

「まぁ、研究者と言うのは簡単な内容でも難しい表現を使って偉ぶっている変人の集まりさ。『軍事魔法改革論―詠唱編』なんてごちゃごちゃ書いてるけど、要は兵士が良く使う魔法をどれだけ簡単にすばやく、尚且つ威力をそのまま、もしくは上げる事ができるかの研究結果のまとめだよ」

「・・・つまり?」


 まだ分からないようだ。

 最初は疑問符を浮かべ、考えている風を装っていたが、結局思考する事を諦め、僕に聞いてくる。

 もう少し、自分で努力したらどうなんだ・・・。


「・・・つまり、兵士が使う魔法をもっと使いやすくしようって事」

「おぉ~、分かりやすい!!」


 教えると言った手前、止めるつもりは無いけれど彼女に理解させるのは骨が折れそうだ。

 ここは彼女の身近なもので例を挙げて説明したほうが分かりやすいに違いない。


「この本に書かれている事を説明すると―」


 詠唱を大きく分類すれば言葉だ。

 言葉や単語にはどうしたってその言葉に含まれる意味がついてくる。

 ここで例を挙げてみよう。

 『火』と言われれば皆、差異はあれど燃える松明の先や焚き火などを思い浮かべるのではないだろうか。

 このように言葉には意味があり、それが想像に繋がるわけだ。

 皆がなんとなく魔法を使う時に発する言葉―詠唱や魔法名と呼ばれるもの―は自分がその魔法を想像しやすいように各自が無意識に発するものである。

 無論、自分で意識して言葉を選ぶものも居るが。

 

 『火球』は火の球、『火矢』は火の矢。

 このように言葉が想像に与える影響は大きいだろう。

 そしてここで軍事魔法改革という言葉を思い出して欲しい。

 兵士が使う魔法と言えば基本的に攻撃系魔法だ。

 勿論、衛生兵などは考慮しないものとしてだが。

 

 攻撃系魔法において重要視するべき点はいくつかあるが、その中に発動速度というものが含まれるのではないだろうか。

 大規模な魔法を即座に発動できたらどれだけ前線は楽になるだろうか、想像に難くないだろう。

 つまり、詠唱をどれだけ短くし、兵士の生存率を上げれるかと言う事を記した本なのだが・・・彼女には難しかったらしい。


 彼女は虚空を見上げ、ぼけーっと間抜けな顔を晒していた。

 絶対に聞いてなかったと断言できる。


「聞いてた?」

「・・・う、うん聞いてたよ?」

「・・・(じー」

「・・・ごめん、さっぱりだった」


 知ってた。

 ま、途中からアイナを考慮しない自己満足的な部分もあったから強くは攻められないのだけどね。

 

 会話が途切れたその瞬間、ふと彼女は何を思ったのか、真剣な顔つきで僕を見つめてくる。

 何か変な事でも言っただろうか?

 そう思うも人付き合いの少ない僕には何が悪いのか分かるはずも無く、彼女の言葉を待つしかない。

 僕から話しかける事はなぜだか躊躇われた。


 静かな教室で向かい合う二人は傍から見ればどういう風に映るのだろうか。

 意味の無い問いかけに答える相手は居ない。

 時間だけが過ぎていくこの場所に僕と彼女だけが取り残されたように感じる。


 彼女の沈黙はどれぐらいだっただろうか。

 長かったのか、短かったのか。

 時間の感覚がおかしくなりそうになったその時、ようやく彼女は口を開いた。


「ガー君の夢は何?その本を読んで君の未来に影響があるの?・・・王都に行きたい?」


 唐突な問い。

 先ほどの話から全く繋がっていないように思えるが、彼女の中で何か繋がる部分でもあったのだろう。

 しかし、その問いに僕は答えを持ち合わせては居なかった。


 夢。

 

 同級生が友人同士でよく話題に出しているのを近くで聞いていた。

 特に今の時期、三年ともなれば来年どこに実地演習に行くか。

 それによって先が決まるのだ。

 敏感になるのは仕方の無い事だろう。


 しかし、僕はどうだろうか。

 漠然と故郷の役に立つ仕事と考えているが、衛兵にでもなりたいのだろうか?

 なぜだかしっくり来ない。

 今は自分を高める努力さえしていればいい。

 だけど来年は?

 分からない。

 答えられない。

 彼女はそんな僕をどう見ているのか。

 今は彼女の表情を見る事さえ、出来なかった。


 そんな沈黙を破ったのは他でもないアイナだった。


「私はね、治癒師になりたいんだ。歴史に名を刻めるほど優秀な治癒師に」


 大きな都市では治癒院、小さな村や町では教会で働く魔法師の事だ。

 傷や病を直す職で、その地域にとって掛け替えの無い存在である。

 治癒院では費用を取るが、教会の治癒師は殆ど慈善活動のようなもので金銭の要求はしないといわれている。

 それによって目指す者が少なく、治癒院でも採用数が少ない為、あぶれた治癒師は地方に回される。


 そんな職業を彼女は目指すと言う。

 険しい道だろう。

 そんな夢を持つ彼女を僕は眩しくて直視できなかった。

 彼女に比べ何て自分は惰弱な人間なのだろうか。

 そんな負の感情が心に巣くった。

 彼女はそんな僕の心は露知らず、夢を語る。


「昔、故郷の教会に優しい治癒師さんが居たんだ。いつもあったかくて―」


 彼女の瞳は今、僕ではなく輝かしい夢へと向けられているのだろう。

 高揚して頬を赤くする彼女から訳が分からない後ろめたさに僕は意識を逸らしてしまった。

 だから僕は聞き逃したのだ。


「―だから私はどんな手を使ってでも上に行くよ・・・」


 彼女が小さく呟き、零した本音を・・・。

 

お久しぶりです、晴月松です。

二週間ぶりぐらい?の更新ですねぇ

月日が経つのがものすごく早いです

まぁ、色々ありましてね・・・

更新しなかった理由を一言でまとめますと


『腐ってました』


ですかね?

(以下事情説明と愚痴っぽい?【しおりを挟む、ブクマ登録、ブラバ推奨】)


一つ目はスランプっぽい物と言ってたあれは多分五月病でしょう

学生時代はよくなったものでして、その度に「あぁ~だる」といってました

二つ目は仕事量が増えた事ですかね?

何度か後書きでも忙しい忙しいといってたような気がするのですが、今回は桁が違いました

ベテランのパートさんがやめてしまったのでそれのツケを私に回ってきたわけですたい

まだ終わってないんですがね・・・

三つ目、これが一番心にきました

五月病程度なら無理してでも書きますよ?

忙しい程度なら時間を作って書きますよ?

でもね・・・

小説データが飛ぶのはマジで勘弁・・・

と言うよりパソコン内のデータが全部飛んだ

パソコンに詳しくないのでなぜ飛んだのか分かりませぬ

戻るのかすら分かりませぬ


一人組(この作品)の最新話、新作の七話分、そしてプロローグだけ書いたり、数話だけ書いて放置している何作品か

全部消えたのよ・・・(´・ω・`)そんなー


まぁ、こんな感じで心が折れて腐ってました

すみません


ここまで読んで下さった読者様、長ったらしい言い訳にお付き合いくださり、ありがとうございます

前話の後書き通り、やめることは無いのでしょう

しかし、今回のように長い間更新しない場合もあるかと存じますが、ゆっくりとお付き合いくだされば嬉しく思います。


ではでは~

(以下休息中に思いついた茶番)


「こんな文章で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」


誤字脱字、色々→ぐわぁあああ


「神は言っている、ここで投稿すべきではない、と」


シュルルルル(時間が撒き戻る音)


「こんな文章で大丈夫か?」

「書き直させてくれ、一年ぐらい」

「「・・・」」


あ、六月一日ですね

kadokawaさんからリリースされるラノゲツクール楽しみです

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