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選抜戦 一回戦

言葉の裏を読み解くのって本当に難しい・・・

怒らせる事になるかも知れないのでね・・・







 訓練場は今、上空から見れば四つに分けられている。

 白線が引かれ、右上が第一区画、左上が第二、右下が第三、左下が第四という風だ。

 生徒達はおのおの自分が応援したい候補の区画に移動し、候補者は十字になっている区画の端に集まる。


 本来は対戦相手と自分の二人で決める為、わざわざ中央に集まらなくともいいのだが、最高学年のガーナードが候補者を集めた。

 ルークやクインも集めた理由が分からず、ガーナードの話に耳を傾ける。


「選ばれた候補者の皆、おめでとう。僕はガーナード。五年生になって未だに就職先が決まらないお馬鹿さんさ」


 まさしく、優しい王子様という言葉が相応しいほどの美形。

 ルークでは勝ち目が無いけどユアンならどうだろうなどとクインは全く関係の無い事を考えていた。


 ガーナードは皆に自分を卑下した紹介をし、笑いを誘おうとする。

 しかし、その言葉に一年以外の候補者は苦笑を零す。

 決まらないのではなく、決めないということを知っているからだ。

 彼は引く手数多の優秀な生徒なのだから。


「僕はこの中で一番の高学年だから選抜戦をよく見てきたんだよ。だから色んなことを知っていてね。一年生や他の学年の子にちょっとだけ助言をと思ったんだ」

「それは確かにありがたいですけど・・・」


 クインは思う。

 それは本当に『助言』なのかと。

 普通、自分が優秀者に選ばれたいのだとすれば、そんな相手に好都合な事を言う必要はない。

 ガーナードが本当にお人好しでもなければそんな事はありえないのだ。

 ましてや、就職を断ってまで王都に行きたい人物が、だ。


「一回戦を自分達で決める規則は過去に一回あったよ。それの中で一番効率的だったのは―貫通的当てだ」


 ガーナード曰く、貫通量によって勝ち負けを決めるこの的当ては体力、魔力共に消費量が少なく、早く決まる。

 当てるだけではなく、貫通量も計測されるので実力差も出るという訳だ。

 

「更にいい所を上げれば、二回戦への温存が出来るね。まだ二回戦の規則発表がまだだし、何が来るか分からない状況での温存は必要だと思う」


 この言葉に頷くのはルークと上級生だ。

 一人疑問に思うクインはこの提案に頷く事はできない。

 好意的に見れば、この提案はガーナードの言った通り良い物だろう。

 しかし、これは二回戦への温存を前提とした強者の(・・・)言い分だ。


 貴族の勘が一つの答えを導き出していた。

 ガーナードはユアンとルークをまず落とすつもりなのだと。


 貫通量で決めるという事は威力の高い魔法が必要となってくる。

 一般的に威力が必要ならば炎系統の魔法が好ましい。

 ルークの情報を得ているのであれば炎系統はまだそこまで扱えていない事を事前に知っていると思われる。

 これでルークは落ちたようなものだ。

 更に、早く勝負を決める事でユアンが参加する前に終わらせ、優秀者候補の剥奪を目論んでいるのだろう。

 クインはガーナードの笑みが黒く染まっているように見えた。


「どうかな?」

「私は反対しま―」

「いいぜ」


 クインの反対を遮ったのは心配していたルークだった。

 意味に気が付いていないのかとルークを睨みつける。

 しかし、ルークはにやりと笑い、後ろを指差した。


「―遅くなった、すまない」


 言葉では謝っているものの全く悪びれた様子の無いユアン―マオがそこに立っていた。

 体調不良と聞いていたが、そのような様子は見えず、寧ろ鋭い視線を候補者に向ける。

 クインとルークはこれを知っている。

 模擬戦の時、ユアンが好調だと言う状態だと。


「おせぇよ」

「・・・・・・さっきは悪かったな」

「何の事か忘れたぜ」

「・・・そうか、助かる」


 ルークとマオが話す間、クインはガーナードにちらりと視線を向ける。

 その表情は凄まじく―無表情であった。

 それが何とも恐ろしく感じるクインであった。



「じゃあ、貫通的当てでいいかな?」


 すぐさま、表情を取り繕ったガーナードは当初の予定で通り、そう提案する。

 おそらく、ルークだけでも落そうとしているのだろう。

 クインはルークが同意してしまった事に不安を感じる。


「ルーク・・・」

「分かってる、大丈夫だ」

「抜かるなよ」

「当然」


 マオが来た事でルークの様子が先ほどとは比べられないほどよくなった。

 ユアンでは無いのだが、心配が取り除かれた事でいつもの調子に戻ったのだ。


「決まったようですね。ガーナード君、二人で決めるように言ったのにまさか全員で決めるとは思わなかったですよ」

「はは、学園長。規則は『二人で決めてよい』だったじゃないですか。何人でもいいのでしょう?」


 規則の穴はいくつもある。

 それを利用するガーナードはやはり優秀なのだろうと、クインは警戒度を上げる。


「何でもいい、さっさと始めろ」


 学園長に対して、そんな言葉を放つマオに周囲はぎょっとする。

 ルークやクインは偶にあることなので呆れているだけだったが。

 

「・・・聞かなかった事にしてあげます」


 学園長は青筋を立て、肩を震わせながら規則の決定を言葉にした。

 各候補者は区画ごとに別れ、戦闘準備をする。

 戦闘準備といっても魔法で的を貫通させるだけなので、しいて言えば心構えだけなのだが。


 貫通的当ては授業にも採用されており、一年でも使われる。

 備品は訓練場に保管されていた為、すぐさま、準備が終わった。


「では、一人目魔法を放ってください」


 生徒は派手な戦闘光景を想像していたのだが、始まったのはただの的当て。

 地味な戦いになるだろうと全生徒は嘆息を漏らす。

 その予想が裏切られたのは当然、第二区画だった。

 マオが有言実行したのだ。

 さっさと終わらせると。


「『水穿孔』」


 マオが選んだ魔法は他の候補者が選んだ炎と真逆の系統―水であった。

 言葉通り放たれた魔法は一直線に進み、的の中央に穴を開けても止まらない。

 訓練場の壁には結界が張られているのにも関わらず、ピシリという音を立て貫通させてしまった。

 

「・・・結界は最大限に発動していましたよね?」

「しているはずなのじゃが・・・」


 ビュールは思わず、隣にいるダンケルに確認を取る。

 あの師匠にこの弟子あり、か。

 そんな思いがビュールの頭を過ったのであった。

 念の為、的の後ろに生徒が立たないようにし、壁に向かって撃つような形を取っていたのが幸いした。


 これには他の候補者も振り返ってしまうほどであった。

 クインやルークはいつもの事なので大して驚かなかったが。


「失敗したかな?」


 ガーナードは思わず呟く。

 当初の予定では、戦い方を統一し、ルークを先に落す目的であった。

 ユアンに関しての調べはついていたが、そこまで重要視してい無かったのだ。

 容姿が優れているや優秀などという情報を得ていても、それは一年の間であろうと楽観視していたのだ。


「次の対戦は彼と、か。もう少し調べておくんだった」


 後悔してももう遅い。

 始まってしまったのだから仕方ない。

 ガーナードはどうすれば自分の有利な戦いに持っていけるか、貫通魔法を放ちながら思案する。


 そして、注目されていたのは第二区画だけは無い。

 第三区画、第四区画でも他の生徒の予想を大きく外していた。


「勝者、クイン・ディナトルエ!!」


 第三区画はクインの圧勝であった。

 魔法に関しては圧倒的な才覚を見せるクイン。

 彼女に掛かれば一般的に使われる炎系統の魔法も数倍の威力に跳ね上がった。

 それでも、マオには敵わなかったが。


 第四区画はまさかの接戦だった。

 ルークは炎系統を選ばず、何時もの得意な風系統を選んだ。

 これに対戦者であるドールはにやりと勝ちを確信した。

 風は貫通力が低いだろう、と。

 しかし、思わぬ結果を生むこととなる。


「風よ、お前に全てを託す。勝つ為に必要な物を用意してくれ」


 ルークの言葉に風がふわりと返事を返す。

 するとルークの前に圧縮された風が姿を現したのだ。

 風は槍と化し、ルークの得意な全てが揃う。


「『穿つ我が暴風』」


 それはユアンと始めての戦いで使った魔法。

 成長したルークのそれはマオが指摘した弱点を克服し、爆発的な威力を以って的を貫いた。


 ドールも炎系統で狙ってみたが、まさに風の悪戯。

 炎を燃え上がらせるどころか消す勢いの風が向かい風となり、失速しまったのだ。


「勝者、ルーク・ディナトルエ!!」


 誰もが予想しなかった、一年全員が二回戦へと駒を進める結果である。


「「「わあああああああああああああああああ!!!!!!」」」


 一年生の間から大きな歓声と拍手が彼らに送られたのであった。


二話目


自分に描写力が無いのは知っているのです・・・

心理描写、情景描写、戦闘描写

足りない物が多すぎる・・・


でも頑張る

というより書きたいのだもの

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