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言葉の裏

◇が多くてすみません

なんとなくあの男を唯の悪者にしたくなかったのです


女生徒(ショタコン疑惑あり)はモブです







 クインは横目でルークを見ながらあの時の話を思い出していた。

 それは三日前の事、クインが学園長の部屋を訪れた時の事である。



「それで?あの人はマーサ学園長に何をさせて、私に何をして欲しいのですか?」


 クインは今回の事のおおよそ、想像が出来ている。

 元々、ルークについてくるように言ったのはあの男だ。

 あの時から何かさせるのであろうと予想はしていた。

 王都に戻る方法は一つしかないのだ。

 その時に仕掛けてくる事も・・・。


「あぁ、それは単純な事ですよ」


 あの男がマーサに寄越した伝言はただ一言であった。


「いらない前口上を除けば一言でした。『馬鹿息子と娘を万全の状態で必ず二回戦で当てるように願う』とね」


 クインは内心ため息をつく。

 どのような経緯で優秀者が三名以上いるという情報を得たのか分からないが、ルークが必ず選ばれると思っているようである。

 このときまだ、ルークが選ばれた事を知らないクインは思うのだ。

 自分の考えが必ず正しいと思っているその自信や過度な期待が私達にとってどれほど重圧になっているか知っているのだろうか、と。


「・・・学園長はどうされるんですか?」

「勿論、受けますよ」


 マーサの返答は即答であった。


「爵位も彼の方が上ですし、何より上流貴族に貸しを作る又とない機会ですからね」


 断れない訳ではないだろう。

 これは公事ではなく私事なのだから。

 しかし、マーサは貸しを作る為に受けると言う。


「貴方の家系は軍に関係する人が多いでしょう?父親然り、お兄さん然り。コロギから優秀な人材を引き抜かないように要請するのもありですし、逆に就職先を斡旋してもらうのもありですね」


 マーサの言葉を聞き、クインはあの男について疑問に思う事がある。

 しかし、クインは自分に関係ないと思い、口にする事はなかった。

 その代わりにルークについての疑問が浮かび上がる。


「彼は優秀者に選ばれるのですか?」

「あぁ、それは問題ないですよ。先の会議で名前は挙がりました」


 クインはこのことを聞きホッとする。

 あれだけ努力し、問題を克服したルークが報われないのは何とも酷な話だ。

 問題さえなければ落ちる事のなかったルークならば選抜戦でも勝ち上がってくれるだろう。


「理解できましたか?」

「・・・えぇ」

「では、帰って宜しいですよ」

「失礼いたしました」


 クインは学園長室を後にしながら考える。

 どうすれば上手くルークを王都に戻せるか。

 自分の実力とルークの実力を考え、クインは頭を悩ますのであった。



 クインが学園長室を出た後、マーサは一人、彼女達の事を思う。


「あの年頃の子達は親の愛情を感じ難いのでしょうか?」


 言葉の表面だけを受け取ると厳しいように思えるのだが、裏を読み解く事ができれば本来の意味が見えてくる。

 貴族としての教育を受けているクインであれば気が付いてもおかしくないのだが。


「親だと盲目になってしまうのでしょうか?」


 それが信頼から来るものなのか、はたまた嫌悪からか。

 それはマーサには分からないが、子供達に理解されないあの男を思い浮かべるとクスリと笑いを零してしまう。


「彼は昔から貴族然としてましたし、何より口下手でしたね・・・」


 マーサは過去の記憶を思い出し、最愛の女性に愛してるの言葉が碌に言えない彼を笑った記憶を掘り起こす。

 そして、今回の要請で彼の本質が全く変わってない事を嬉しく思うのだ。


「『万全な状態で』だなんて『一回戦を弱い相手で消耗がないように』ってことじゃない。それに『必ず二回戦でクインと』って意味もクインさんの性格を知っているならわざと負けに行く事が予想できるわ」


 マーサには強引かもしれないが、総当りではなく、勝ち抜き戦にしろと聞こえたような気がした。

 更にもう一つだけ隠された意味があることにマーサは気が付いている。


「本当に子煩悩だこと」


 貴族であり王都に伝手があるからこそ、気が付く事だった為、教員は誰も知らないだろう。


「今年は総当りにしようと思っていたのだけれども仕方ないわね」


 要請を受けたからにはその通りに動かなければならない。

 同級生の彼を思い、息子や娘との関係改善を願いながら、マーサは選抜戦に向け、色々と準備に追われるのだった。



「クイン」

「何?怒ってるの?」


 回想に耽っていたクインを呼び戻したのはルークの呼びかけであった。

 学園長の話に耳を傾けながら、お互いに小さな声だけで話し合う。

 当然だが、二人とも視線は前を向いたままである。


「何も話さなかったのは別に怒ったりはしねぇよ。ただ―」

「何よ」


 ルークの声音は真剣で決意を持っている。

 茶化さずに聞かねばならない。

 クインはただ次の言葉に集中する。


「―手は抜くなよ」

「・・・」


 クインは思わずルークの顔を見た。

 ルークは変わらず前を向きながら、クインに構わず言葉を続ける。


「親父に何を命令されて何をさせられてんのか知らねけどよ、絶対に手は抜くな。全力で戦え、それだけだ」

「・・・」


 長年一緒に居て相手を見ていたのはクインだけではない。

 ルークもまたクインの事を良く知っているし、見ている。

 彼女が何に悩み、何に苦しみ、何に喜びを感じるか。

 それは兄妹だからこそ感じ取れるものだ。


「・・・わかったわ」

 

 ルークはその返事に満足したのか、それから言葉を発する事はなかった。

 その間も学園長の話は続いており、規則の話となっている。


「一名居ないのですが、この八名で優秀者の座を決める規則を発表します」


一、今回の決闘方式は勝ち抜き戦と定める。

  (八名である為、二回勝てば王都行き決定である)

二、一回戦の規則は自分と対戦者の二人で決めてよい。

  (例:武器なし、魔法あり、時間無制限、道具なし、的狙い、演舞、などなど)

三、二回戦は教師が決めた規則に従う事。


四、危険だと教師が判断した場合、注意のみ行う。


五、候補者諸君は不正を行わず、正々堂々と戦う事を推奨する


六、候補者は各個人の責任で決闘を行う事。 以上


「候補者は一回戦の抽選後、第一区画から第四区画に分けられた訓練場に行くように」


 候補者は皆、学園長の元へ行き、くじを引くことになった。

 高学年から引かれたくじは―


一回戦


第一区画 ガーナード、レルベル

第二区画 アディ、ユアン

第三区画 マイン、クイン・ディナトルエ

第四区画 ルーク・ディナトルエ、ドール


 となった。

 このことでルークはあの男が関わっている事を強く確信したのである。


「では優秀者選抜戦の開催を宣言いたします!!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 学園長の宣言で候補者達は始まるという緊張で、他の生徒はやっと見られるという興奮で身体を震わせた。


 選抜戦は選ばれる自信の無い生徒にとって選抜戦は一種の娯楽である。

 教師達は優秀者から学んで欲しいと願うのだが彼らにその思いは届かない。

 白熱した戦いを望む生徒はすぐさま移動を開始し、自分の応援する候補の話に花を咲かせる。


 三年生の反応は―


「ガーナード先輩一強かなぁ」

「おいおい、ドールとマインも応援してやれよ」

「二回戦で同じ学年が当たるなんて運がわりぃな」

「勝つこと前提かよ」

「一年相手だしな。ま、どちらかは安定だし応援はいらねぇだろ」

「ひでぇ」


 ―と何とも余裕綽々であった。

 しかし、一方の二年生は―

 

「レルベルは死んだな」

「そうだな」

「アディを応援したいところだが・・・」

「「「ユアン君は来るの!?」」」

「・・・女子があれじゃなぁ」

「アディ・・・お疲れ・・・」


 ―誰を応援しているのかよく分からない反応である。

 そして一年生は初めてということもあり、移動に意識を持っていかれ、候補者に三人も選ばれた事実を飲み込めていない様子であった。


 そして肝心のマオはまだ到着していなかった。








「私達の天使ちゃんはまだ!?」

「団長!!」

「何や!!」

「天使ちゃんは体調不良って学園長が言ってたじゃないですか」

「来るまで信じようや!!まだ始まったばっかりなんやから」

「「はい!!団長!!」


 ガーナードを応援する者がいる中、四年生と五年生の間で天使ちゃん応援団などというよく分からない団体が密かに結成されていたとかされてないとか・・・。

一話目・・・


発想が浮かばない

王都の新キャラひょっこり頭を出して邪魔をする・・・

くそぅ


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