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喧嘩

書き直しました!!(また全消しして・・・)







 朝一番に、全生徒へと召集が掛かった。

 ユアンとルークがビュールに優秀者候補として告げられた日から三日後の事である。

 今年入った一年は何事かと疑問符を浮かべ、二年以上の生徒は今年も来たかと興奮を感じている様子だ。

 しかし、召集が掛かって四半刻経ってもユアンとルークの姿は寮にあった。


「お前・・・」


 ルークはユアンを見下ろし(・・・・)、呟く。

 その呟かれた言葉には悔しさや悲しさなどが混ぜ合わさった、なんとも言葉で表し辛い感情が含まれていた。

 人の感情に鈍感なユアンですらその事に気が付いている。


「あはは~・・・」


 ユアンはそれにどう反応して良いのか分からず、困ったように笑う。

 何時もの明るい笑い声ではなく、力も無い。


「今日、どうするんだよ・・・」

「ん~・・・どうしようも無いかも・・・。お昼になれば動けるようになってると思う・・・けほっ・・・けほっ」


 ルークの問いにユアンは咳き混じりに答える。

 今のユアンは寝台に寝かされ、氷嚢で熱を下げてる状態だ。

 ルークは寝台の横に立ち、ユアンの状態を見ていた。

 まだ直っていないのか、と。

 同級生の間でも知られているが、ユアンは虚弱体質である。

 そして、これも何時もの発作であった。


 昨日、ルークが訓練から帰宅したその時、既にユアンは床に倒れていた。

 熱により汗をびっしょりと掻き、寒気で身体を震わせ、荒い呼吸を繰り返している様子にルークはすぐに発作だと気づく。

 そして、すぐに寝台に寝かせ、ビュールを呼びに行ったのである。

 その手際は慣れた様子であった。

 当然であろう、ユアンと一緒の部屋で過ごして一年。

 同じ事が何度もあったのだ。

 初めの方は焦っていたが、何度も繰り返す内に慣れてきたのである。


 その後、ルークとビュールの看病のお陰で夜中には安定した呼吸になり、落ち着きを取り戻した。

 ユアンはこれから二人に頭が上がらないであろう。

 

 因みにだが、何時ものようにマオが代われればよかったのだが、丁度ルークが帰宅した為、代われなかったのだ。


「何で、今日に限って体調が悪くなんだよ・・・」


 その呟きは誰に向けた言葉でもない。

 ユアンだって病気になりたくてなっているのではないと知っている。

 だが、呟かずには居られなかったのだ。

 ルークは何時もながら苦しんでいるユアンに何もしてやれない悔しさが募る。


「早く行ったほうがいいよ?」


 今日の召集が何を意味するのか。

 そんな事は明白である。

 全生徒が召集されるなど、彼らにとって一つしか思い浮かばない。

 何せ、優秀者候補なのだから。


「お前は・・・」

「僕は行けないよ・・・。行ったとしても優秀者を選別する何かに耐えられる気がしない」

「・・・」


 ユアンの言葉にルークも同意見だ。

 頭を使う方法も、肉体や魔法を使う方法も、どちらも身体に負担がかかる。

 体調が悪いユアンがどうやって最後まで残れるというのか。


 会話は途切れ、静寂だけが部屋を支配する。

 生徒は訓練場に向かったのだろう。

 外から聞こえるのは学園通りの喧騒だけで、生徒の話し声は聞こえない。


「多分さ・・・」


 ユアンはぽつりと呟き始めた。

 

「来年もあるよ・・・、その次だって―」


 その言葉はルークにとって禁句であった。

 彼にとってその言葉は諦めに聞こえたのだ。


「―ふざけんなっ!!何で諦めるんだよ!!」


 ルークは分かっている。

 今回は厳しいという事を。

 だが、それでもユアンの口からは聞きたくなかったのだ。


「朝、ビュール先生が言ってただろ!!優秀者に選ばれた後、もし何らかの理由で辞退などした場合、次に選ばれる可能性は限りなく低いって!!」


 辞退だけでなく、ユアンのように体調不良であっても適応される。

 体調管理も優秀者の責務であると。

 出来ないのであればそれは優秀者に不適格だと。


「聞いていたよ・・・」


 召集が掛かる前、ビュールはこの部屋を訪ねてきた。

 ユアンの見舞いのためだ。

 そして、もう一つ告げることがあると。

 それが先ほどルークが言った事であった。


『無理強いはしないわ。貴方の様に優秀であれば次にもう一度選ばれる可能性もあるかも知れないから・・・』


 ビュールもユアンに期待していたのであろう。

 悲しげな表情を浮かべ、部屋を出て行った。


「・・・ごめん」


 一緒に王都に行ければ、どれほどよかっただろうか。

 楽しかったに違いない。

 そう思うと、ルークに謝罪の言葉しか浮かばない。


「~~~~っっ!!勝手にしろ!!」


 勢い良く閉じられた扉は大きな音を立てて、ルークとの間に壁を作った。

 窓も開いていないというのに寒々しい風が吹いたような気がし、布団に潜るユアンであった。



『ユアン、代われ』

「ん?マオに代わってもらうほど苦しくないからいいよ」


 ルークが部屋を出た後、マオは短い言葉を発した。

 しかし、マオの言葉にユアンは応じず、身をよじる。


「はぁ~、来年も選ばれるといいなぁ・・・」


 ユアンもそれがどれほど難しいのか理解しているつもりだ。

 それでも、やらなくてはいけない。

 夢の為に。

 だが、そんな決意を知らずか、マオの反応は変わらなかった。


『代われと言っている』

「いや、だから大丈夫―」

『違う。お前を心配してでは無く、お願いでもない。命令だ、代われ』


 マオはユアンの返事も聞かず、中へと引きずり込み、表に姿を現す。

 この一年で更にマオはこの身体を把握していた。

 ユアンを無理やり引きずり込むのも容易く出来る。


『何するのさ!!』


 ユアンはマオに抗議の声を上げる。

 勿論、聞こえているのだろうが、マオは服を着替え、学園に行く準備を整え始めた。


「ユアンよ、お前は何か勘違いをしていないか?」

『勘違い・・・?』


 マオは準備を進めながら言葉を放つ。


「なぜ、自分が優秀者にならなければいけないと思っている?」

『なんでって・・・』

「身体は同じなのだ。俺でも良かろう?」

『・・・』


 未だにビュールでさえ二人が一つの体だとは気が付いていない。

 マオが表に出ても何ら問題は無いはずなのだ。

 なのに、ユアンは自分が(・・・)優秀者を勝ち取らなくてはいけないと思っている。

 それは―


「ルークやその他の優秀者に悪いとでも思っているのか?」

『・・・』


 黙るという事は図星と同義だ。

 他の優秀者は自分の実力で勝ちに来ているのに対し、マオに頼ればユアンは他人の力で勝ったことになる。

 罪悪感が生じるのであろう。

 マオの言葉は的確だった。


『狡いじゃないか・・・』

「狡い?馬鹿なことを。お前は自分が狡くないとでも思っていたのか?」


 生まれながらにして勇者、マオという先達者が身体にいる事。

 これが狡くないと言えるだろうか。


「ユアンよ、正道を行くお前を俺は好ましく思う。だがな、手段を選んでいては先に進めぬ時もあるのだ」


 今回は特にだ。

 このまま辞退すれば、王都だけでなく『七つの異観』という目的が遠退く。

 目的が達せなくなる訳ではないが、余計な時間が掛かってしまう。

 それはユアンとしても、マオとしても不本意であろう。


「平人の命は短い。魔人とは違うのだ。特にお前は病弱だろう。限られた時間を効率的に進めるにはどうすれば良いか考えろ。友と過ごす時間を確保する為に俺を使え、いいな?」

『うん・・・』


 ユアンの命はきっと普通の平人より短い。

 もしかすれば、ユアンは道半ばで力尽きるかもしれないのだ。

 楽しくない時間は少ないほうが良いに決まっている。


「これは楽ではない。寧ろ、苦だと思え。俺は今回、一瞬で終わらせる」


 身体が治ったわけではない。

 無茶をせず、尚且つ最小限の消耗で勝つ。

 これが必須条件。


『分かったよ、マオ。僕の代わりに王都行きの切符を勝ち取ってきて』

「任せろ」


 マオは思う。

 ユアンはきっと変わらずこれからも正道を歩もうとするだろう。

 それが好ましく、そして疎ましい。

 その度に自分は諭し、導く事になるだろう、と。


 納得がいったかどうかは分からず仕舞いだが、マオは急ぎ訓練場へと向かうのであった。

実は昨日(月曜日)には書けていたんですが、

気に入らなくて全消ししてしまいまして・・・

毎度の事ながらごめんなさい


話は変わりますが

私には腹を抱えて笑うような話は書けませんし、

涙を流させるような事も出来ません。

読者様の想像に助けられてばかりであります。

感謝感謝。


出来れば、にやりと笑う、ちょっとだけ鳥肌が立つ、そんな話が書けたらいいなと思います


後、一万pv達成SSはもうすぐで一万五千pvになるのでその時にあわせて出したいです

待たせてごめんね?


ではでは~

(茶番期待してる方今日も無いよ?)

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