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対話

修正します。いつか・・・


 書物に囲まれた月明かりだけの薄暗い部屋の中で始めてユアンと魔王は出会った。

 ユアンは幻覚ではないかと目を擦り瞬きをする。

 三面鏡のうち真ん中だけが魔族を映しその他は自分の横顔が映し出されている。

 ユアンがその現象に驚き固まっていると、その幻覚(?)は話しかけてきた。


「初めまして、でいいのか?それとも俺が居る事を知っていたか?」


 突然の問いかけにユアンは困惑する。

 居るとは何か、その意味さえ分からずにいると、それは分かったように独り言を呟く。


「なるほど、自覚は無しか。ならば俺だけがお前を知っていて中から見れていた訳か。いやしかし、身体はこいつの物・・・。記憶は身体に残っているはず・・・。」


 何を言っているのか分からないユアン。

 しかし、恐ろしいはずの魔族が目の前にいたとしても両親に助けを求めることはしなかった。

 それはなぜだろうか。

 ユアンは分からないことが多すぎた。

 故に若干の不安を隠しながら聞いてみることにする。

 初めての質問は―――。


「あなたの名前は何ですか?」


 一人でぶつぶつと何かを呟いていた魔王は言葉を止め、じっとユアンの目を見つめた。

 しばらくすると彼は肩を震わせ、顔に手を沿わした。


「口を開いたと思えば質問で、その質問が名前とは・・・くははっはっは」


 一頻り笑った後、目じりに涙を溜めながらもう一度ユアンを見て、彼は質問に答える。


「くっくっ、名前か・・・すまぬなユアンよ。名前など無い。これが答えだ」

「それじゃあ、君の事呼べないよ」


 その答えに不満を含む声で返すユアンの顔には先ほどまでにあった不安の陰はもう無かった。


「私を見て恐怖を抱かぬばかりか、名前を聞きたがる人間など始めてだ。面白い」


 しばらくし、二人は言葉を交わし続ける。

 その中にはユアンを驚かせる内容が多くあり、それに対して質問をすれば目の前の彼が答えてくれる。

 そんな会話を二人が繰り返していると一時間以上は経っている事に気が付く。


「じゃあ君はずっと僕の中に居て、僕が寝ている間に動いていたの?」

「そうだな、この部屋を知ったのもそのときだ。大量の本は糧となり俺の人生を潤すだろう」

「本って楽しいかなぁ?」


 身体が弱く外にあまり出なかったユアンは友達が居ない。

 ユアンにとって彼と話す間は心が躍る時間であった。

 それももう終わりが近い。

 闇を晴らす太陽の明かりが東の空を赤く照らし出す。


「俺はお前と交渉に来たのだ。平人と話すという新鮮な会話に心が踊り、忘れていたようだ」


 一呼吸入れ、魔王は言葉を紡ぐ。


「ユアン。望みが無いか?お前の望みを教えてくれ。それを叶えよう。力か?知恵か?それとも世界か?」


 魔王にとってそれらは望めば手に入れることの出来る不可能な物ではない。


「俺には叶えてたい夢がある。それにはお前の身体が必要なんだ。二十年ほど身体を貸してほしい。その代わりにお前の望みを叶える」


 ユアンは考えた。

 ―――欲しいもの・・・。

 すぐに答えは出た。

 悩む時間など無く、ほしい物を彼の目を見て言う。


「友達が欲しい。君と友達になりたい」


 魔王は目を見開き、硬直した。


「君の驚く顔を初めて見れた。・・・僕と友達になってくれる?」

「それでよいのか?」

「うん」

「そうか・・・、ならば今この時よりユアンと俺は友だということにしよう」


 この日、ユアンと魔王は初めての友達が出来たのであった。



 ユアンと魔王の会話は毎日のように続いた。

 書庫の中、三面鏡の前、夜更け。

 決まった時間、決まった場所で話すこの時間をユアンは楽しみにしていた。


「今日はね、君にあげたいものがあるんだ」

「ほう」


 ニコニコした笑みを浮かべ、話し出したユアンの手には何も持ってはいない。

 魔王にも分からぬように魔法で隠しているのかと思ったがユアンにそのような魔法の技量は無い。


「名前、考えてきたよ」


 物を考えていた魔王にとってそれは考えもしない贈り物だった。


「マオ、君の名前」


 自分が魔王だったことはユアンに話している。

 魔王の意味が分からないのか、初めは魔王と言う名前だと思っていたらしい。

 魔王からとって『マオ』。


「助かる」


 何とも安直な名前であったがそれでも魔王にとっては嬉しいことであった。

 マオと何度も口ずさみ、自分に刷り込ませていく。

 自分という証明が手に入った、その事実を感じるために。

 それからいつものように会話を楽しむことにした。


「えーっ!?僕って一回死んだの!?」

「うむ」


 衝撃的な事実を告げられ驚くユアン。


「でもどうして生き返ったんだろう?」

「あくまで俺の予想だが」

「うん」


 そう前置きをし、マオは自分の考えを話し出した。


「死ねば肉体は生き返るが魂までは不可能だ」

「・・・」

「俺は例外だったがな」


 そう言い生まれたときのことを話す。


「―――その虹の光は俺の魔力とは全くの別物で、何か大きな力が働いた。俺はおそらく世界の意思だったんじゃないかそう思っている」

「世界の意思?」

「そう世界の意思は時に大きなことを成す。例えば勇者が隠された伝説の武具を『偶然』見つけるように。例えば城の結界が『なぜか』薄くなるように」


 マオが魔王をしている時、勇者や英雄と呼ばれる存在は厄介であった。

 『なぜか』や『偶然』が良く起こり得たのだ。

 調べに調べた結果、答えは『分からない』であった。


「故に俺は世界の意思と呼ぶことにした。もしかしたらユアン、お前は勇者なのかもな?」


 にやりと笑うマオを見て、ユアンはいい顔をしなかった。


「どうした?勇者は嫌か?」

「だって勇者は魔王と戦わなきゃいけないじゃないか。僕は嫌だよ?マオと戦うの」

「くっくっ、それもそうだな」


 ユアンの理由を聞き、本当に面白いとマオは笑う。


「じゃあ魔族にそんな事は無かったの?」


 そして先ほどの話に戻る為、ユアンはマオに話を振る。


「いや、過去にはあったらしい。まぁ、何処何処に攻撃を仕掛けられた時川が氾濫したとかだったがな」

「ふ~ん」

「聞いといて興味なさげか」


 空が明るくなり始め今日の話はそれで終わりとなった。



 次の日、少女とその親が御礼をしに来たことをユアンはベッドの中で夢心地に聞くこととなるのであった。

あけましておめでとうございます

本年もどうぞよろしくお願い致します


本日からお仕事の方も多いと思います

頑張ってください

私は挨拶だけして帰ってきました

明日からか・・・まだ寝足りないですね


今年も続く限りよろしくお願いいたします


あっ、名前に関してはセンスなくてすいません

名前がないと不便なもんで

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