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異変の原因 その五



シーナ「・・・15歳未満の皆は見ちゃダメよ?・・・ダメなんだから!!」


はぁい









 暗い洞窟を慎重にしばらく進む。

 曲がり角が多く、うねるような一本道で後ろを振り返っても入り口はもう見えなかった。

 蝙蝠型の魔獣が発する音が洞窟内を反射し、マオとミロの場所まで届く。

 どこから魔獣が現れるのか分からない為、常に警戒をしていなければならない状況だ。


「・・・」


 無言で歩くこと四半刻。

 ようやく、長い一本道だった洞窟に変化が現れた。


「分かれ道、か」


 右はマオの身長の何倍も大きくなっており、左は今まで歩いてきた道と同じぐらいの大きさだ。


「どちらに行きます~?」


 ミロは判断をマオに任せる。

 護って貰っている自覚がある為だろう。

 

「右だな」


 マオは迷わず右の道を選ぶ。

 血の臭いが濃くなっているのが右だったからだ。

 左からも薄っすらと臭うのだがそこまで強くない。


 危険は承知している。

 だが、マオの口元は弧を描いていた。


 ミロも同意して頷き返す。

 調合した液体の輝きも右を指し示していたためだ。


「何が出るか楽しみであるな」

『・・・』

「・・・」

 

 ユアンも緊張をしているのであろう、マオの邪魔にならないように口を開かないでいる。

 コツコツと歩く音が反響し、それが更に恐怖心を煽る要因の一つとなっていた。


 濃密な血の空気が鼻を刺激し、それがマオの魔王時代の記憶を呼び覚ます。

 戦場を駆け巡り、国に仇なす敵を殲滅した記憶。

 ユアンと共に過ごした数年を塗り消すようにそれは奔流となって覆いつくしていく。


『マオ?』

「大丈夫だ、心配ない」


 様子がおかしいことに気が付いたユアンはマオに話しかける。

 ユアンの声で自分の記憶に呑み込まれそうになっていた事に気が付いたマオは、それを押さえ付け普段通りに振舞う。


(俺はもう、魔王ではない)


 それでも血肉沸き踊る感覚を覚えるのは、そういう性分なのだろう。


「・・・もうすぐです」


 あの曲がり角の先にこの臭いを撒き散らす原因がいる。

 魔獣か、はたまた強者か。

 期待と恐怖という対照的な感情を抱く二人が角から身を出して見たものは―


「・・・(ちっ)」

「・・・(ほっ)」


 マオが舌打ちをし、ミロが安堵の息を吐く。

 その先のものを見た結果落胆と安堵で二人の反応が丁度分かれた。

 

「落盤か・・・」


 マオが呟いた通り、そこは岩が崩れ落ち、先に進めない状況となっていた。

 

「臭いの発生源はここのようですね・・・」

 

 その岩の下から赤い血溜まりが広がっている。

 渇きや量から言ってかなりの数が死んだと思われる。


「どうしてここに集まったのでしょう?」

「それを調べるのが貴様の役目であろう」


 マオは洞窟の壁を触り、地質を確かめる。


「最近出来た洞窟のようだな。触れば崩れ落ちる」


 硬化せず、もろもろと崩れるため落盤の原因はこれだろうかと予想する。


「この血は魔獣のもののようですね~。・・・分からないことが多すぎますよ~、本当に」

「そうだな」

 

 いつ、誰が、何の目的で、どうやって魔獣を集めたのか。

 偶然崩れ落ちたのかそうでないのか。

 崩したのであれば目的が達成されたからなのか、それとも何らかの原因があって崩せざる得なかったのか。


「ただ言える事は・・・残念だということだな」

「原因が分かると思ったのですがねぇ~」


 噛み合っているようで噛み合っていない会話だ。


「正確な調査はまた今度にするとしまして、どうします?もう一つの道も行っておきますか?」


 先ほど選ばなかった左の道のことだろう。

 

「確かに微量ながら血の臭いもしていたな」


 血の匂いに紛れて甘い香りもしていた為、マオの知識が正しければ余り近寄りたくない場所であったが。


「もしかしたら、隠すために甘い香りをさせたのかもしれませんよ?」


 マオがミロにそのことを話すと人為的な可能性があることを示唆する。

 勿論、マオもそのことを考えなかった訳ではないのだが。


「ま、何とかなるか・・・」

「危険を承知でここにしているのです。何があろうと大丈夫です!!」


 胸を張りミロがそういったことでマオ達は左の道を探索する為、元来た道を戻るのであった。



「こっちが正解だったかもしれませんね」


 ミロがそう思ったのには理由があった。

 此方の道で先ほどから数回魔獣に襲われている。

 小鬼や大鬼、豚鬼とマオにとてさして脅威にならない魔獣であるが、邪魔ではあった。

 特に豚鬼は道を塞ぐため、倒して進まねばならない。


「・・・こっちの道は洞窟がしっかりしているな」

「こっちが本来の洞窟だったのでしょうか?」


 壁が崩れないところを見ると先ほどの道は最近作られた道で、こっちが本道なのだろう。


「そう考えればあちらの方が怪しいのですが・・・」

「分からんな」


 いったん情報を整理する必要がありそうだ。

 この探索が終われば組合に丸投げすることを決めたマオ達は警戒を怠らず先に進む。

 

 血の臭いよりも甘ったるい臭いが洞窟内に充満している。

 

(これは・・・、やはりな・・・)


 くらりとするほど臭いが強烈になり、思考がだんだん溶けていきそうになる。

 マオは持ち前の自制心で耐えることが出来ているが、ミロはふらつきを押さえられないようだ。


「大丈夫か?」

「・・・なんれすかぁ~?」

『・・・なにかいったぁ~?』


 ユアンも酔った様に呂律が回っていない。

 これは危険だと感じたマオはミロに引き返すように提案をしようとした。

 その直後―


「あれはぁ~!?―サガン花!?」


 目を見開きミロが花の名前を叫ぶ。

 ミロの目には広くなった洞窟の最奥に一輪の花が見えたようだ。

 

 サガン花は幻の花と言われている。

 青い花弁をし、人の体温で枯れるというほど弱い。

 とある下流貴族がこの花で上流貴族に求婚した結果、成立したという歴史があり、女性の憧れでもある。

 趣向品として貴族が探し回っているが、見つかったという報告は無い。


『シーナちゃん!?』


 一方、ユアンは居る筈の無い人間の名を呼ぶ。


 考えれば分かることだが、ケルト村に居る筈のシーナがこんな所にいるはずも無い。

 故にこれは―


「行くな!!!」


 ミロがサガン花を求めて走り出す。

 マオの言葉は聞こえていないのか、その花を手に取るとにニヤニヤと笑う。


「これは・・・私のもの・・・私のもの・・・」

『シーナちゃん!!行かないで』


 中で外に出ようとユアンが暴れる。


「少し、黙ってろ!!」


 マオはユアンを無理やり中に押さえ付け、ミロの元に駆け出す。


 その瞬間、地面がボコボコと揺れ動き、姿を現したのは緑色の蔦だ。

 それは未だ現実に戻らないミロの体を這い、拘束する。


「ちっ」


 マオは自分の知識が正しかったと証明されたことに舌打ちをする。


「やはり動食植物か」


 ミロやユアンが見たのはこの植物の幻覚だ。

 この蔦の魔獣は甘い臭いで思考を鈍らせ、魔法に掛かりやすくし、自分の分身を対象の望むものに見せ、近づいてきたものを食らう。

 本来の大きさはマオの半分位の全長で、小動物を食らうだけのはずなのだが―


「どれだけ食らったらこれだけ大きくなる!!」


 蔦の太さも長さも規格外だ。

 

「ん・・・あっ・・・」


 ミロの体を這い回る蔦は何かどろりとした液体で濡れている。

 虚ろな目のミロを食らうつもりなのだろう。

 液体は煙を上げて服を溶かし始め、白い肌も火傷の様に赤く腫らす。


「はぁ・・・はぁ・・・、あぁ・・・ふぁ・・・」


 蔦はミロの体を好き勝手に動き、腕、足、胴体、胸、そして顔に纏わり付く。

 蔦の先端がミロの口内にぬるりと滑り込んだ。

 体内から弾け飛ばすつもりなのだろうか。

 

「面倒をかけるな!!」


 それを黙ってみている程、マオは優しくない。

 ミロが見ていないことを瞬時に確認し、内魔力を練り上げる。

 

「『太虚なる断罪』」


 凄まじい暴風が洞窟内を蹂躙する。

 風は鋭い刃となり、蔦をも切り裂く。


「『戦乙女の大盾』、『神の御心』」


 マオは自分の魔法で傷つかぬようにミロの体を魔法で覆う。

 そのついでと言っては何だが同時に傷も直しておく。


 ミロを回収し、即座に後退し、蔦の様子を伺う。


―キシャアアアアアアアアア!!!!!!!!!!


「ようやく本体のお出ましか・・・」


 ほぼ裸体に近いミロを横に寝かせ、外套を着せた後、本体に視線を向ける。

 獲物を奪われたことに腹を立てているのか、蔦で地面を揺らし威嚇をしていた。

 切り刻まれた蔦もまだうねうねと生きているように見える。


「残念だったな、お前が生き残る唯一の方法はミロを離さないように逃げ惑うのみだった」


 右手に赤い魔法陣、左手に緑の魔法陣。

 それは学園で見せた魔法。

 

「灼熱の業火は大気をも焼き滅ぼし、怨敵を滅する。『昇華する劫火』」


 放たれたマオの魔法は洞窟を全て飲み込み、近くにいた魔獣も骨すら残さず消し炭とする。

 当然、どれほど大きくとも植物であることに変わりは無い目の前の蔦の魔獣も同様だ。

 焼け跡から甘さを含んだ焦げ臭さが漂う。


「・・・洞窟内で火の魔法を使うのは危険だな。危うく死に掛けた・・・」


 咄嗟にミロに放ったものと同じ魔法を自分に掛けねばマオもあれと同じになっていただろう。

 全力で放った魔法はそれほど強力で大規模であった。

 

「さすがに洞窟が耐えられなかったか」


 ガラガラと音を立て、崩れ始めた洞窟をマオはミロを背に走り抜ける。

 まだまだ調べ足りない場所であったが崩れてしまったものは仕方がない。


「ま、あの蔦の魔獣が他の魔獣を呼び寄せ、魔獣の減少に繋がったのだろう」


 あの大きさだ、栄養は幾らでも必要であったはずだ。

 崩れた洞窟の下敷きになっていた魔獣に関しても丁度、分かれ道の先にあった為、道を間違えた魔獣が偶然潰されたと考えるのが現実的であろう。


 そうマオは組合に報告する内容を纏め上げた。


 洞窟を出た後、崩れた洞窟を見て、マオは思う。

 

「本当にそれだけであろうか」


 と。


 しかし、考えたところで答えは出ない。

 拭えぬ不快感を胸に夜空を見上げる。


「明日学園だが・・・起きれるのか?」


 そう思うがユアンは自分の中で寝ているため大丈夫だろうと楽観的な考えで森を後にするマオ。








「きゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

「うるさい」

「何で服が無いんですか!!はだ、裸!?・・・はっ!?・・・もしかして襲いました?」

「・・・捨て置くぞ?」


 後ろからぎゃーぎゃーと騒ぐミロにマオは星が綺麗だと逃避するしかないのであった。



シーナ「・・・えっち」

クイン「さすが男の子だね。にしし、黙っといてあげるよ♪」

ミロ「・・・しくしく」



・・・ぜんぜん『えっちぃ』話にならなかったことをお詫び申し上げます!!

慣れない事をするべきではないことを実感いたしました


いやぁ、筆の進まないこと進まないこと

マジか

16時更新に間に合わないとかマジか


もうちょっとうまく書けると思ったのに・・・

多分、もうえっちな回はない


以下没案です↓


「きゃあああああああああああ、ちょっとなんですか!!これぇ!!」


 ミロは蔦によって宙に浮いている。

 その様子はものすごく卑猥だ。

 足や腕を拘束され、胸を強調されるように撒きついている。

 無い胸を・・・。


「おいこら、無い胸って言うな!!というか何で『銀色』さん目を瞑っているんですか!?あ・・・そこはダメですよぉ~・・・やめてぇええええ」

『マオ~、見えないよ!!助けなくっちゃ』

「ユアンよ、成人したら目を開けてやる・・・」


 マオはユアンに悪影響だと思ったのだ。

 せめて成人の十六歳まではこういうことを見せぬように。


「ちょっと~!!助けてくださいお願いします!!なんでもするからぁ~・・・。あん・・・ふぁあああ」


 マオはそっと耳も塞いだという・・・。



ではでは~ 

本日はここまでかな?たぶん

運営さん、ギリセーフですよね?

読者の方もダメだと思ったら教えてください

書き直しますので

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