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異変の原因 その一






 ―ゴーン、ゴーン


 鐘の合図と共に実技の授業が終わる。


「おい、ユアン!訓練場で模擬戦しねぇか?」


 ユアンとの模擬戦は学ぶことが多い。

 ユアンとの、というよりかはユアンの言う友人とやらが見ているかのように的確な助言をくれる。

 それによって自分が強くなっているのを実感でき、もっと高みへと行ける様な気がするのだ。


「ごめん!!今日からしばらく外せない用事があって・・・本当にごめん!!」

「冒険者組合か?」

「うん」

「組合か・・・それじゃあ、しゃーねーな・・・」

「じゃあね!!」


 ユアンが冒険者になりたいという話は聞いている。

 個人的には俺と一緒の騎士を目指して欲しかったが、あいつの夢を横から口を出すのは友人として何か違うのだと思う。

 だから、あいつが冒険者を続けれなくなった時、騎士に引っ張り上げれる様な地位まで上がっておくのが俺の夢だ。

 目指すは兄越え。


 ユアンはそう言い残して鞄を手に教室を出ようとする。

 しかし、用事という言葉が聞こえていなかったのか、数人の女子がユアンに話しかける。


「ユ、ユアン君」

「何かな?」

「今から一緒に学園通りでお買い物でもどうかなって・・・」


 女生徒達はほんのり頬を赤らめて誘っていた。

 

「用事って言葉聞こえてなかったのか?」

「ユアン、モテモテだねぇ」


 俺が疑問を口にした後、クインが近くに寄ってきてそんなことを呟く。


「恋する乙女って自分にとって都合のいい言葉しか聞こえないんだよねぇ(もぐもぐ)」

「はっ、頭の悪い奴らだな」

「恋する男も頭悪いけどねぇ」


 クインは俺のほうを見てニヤニヤと笑う。

 王都の時のことを言っているのだろう。


 ・・・うっせぇ、まだ諦めてねぇよ

 

 そんなことを思いながら、人のいいユアンがどう答えるのか気になり、様子を伺う。


「ごめんね?今日は用事があって一緒に遊べないんだ」

「そうなんだ・・・」


 彼女は悲しげな表情を浮かべる。

 ユアンがそんな彼女を放っておける性格でない事を俺もクインも知っている。

 だから―


「でもでも、また今度誘ってくれると嬉しいな」

「本当?」

「うん」


 そういって次の約束を取り付け、埋め合わせをする。

 感情の機微には疎いが表情に出されると反応してしまうのがユアンだ。

 そんなところもあいつらしくていいのだが。


「・・・たらしになるね、あれ」

「たぶんな、それも天然だし・・・」

「でもね・・・あの女の子の顔見てよ。ユアンが埋め合わせするのを分かってたみたい、わざと悲しいって顔したんだと思うよ」

「・・・女ってこえぇ」


 その後もユアンは教室に出るまで何人もの同級生に声を掛けられていた。

 例えば―


「ユアン様!!この魔法陣の解読方法を教えてくださいませ!!」

「ん~、魔法陣基礎構成紋様全部覚えてまだ分からなかったら教えるから」

「ぜ、ぜんぶっすか・・・」

「うん」


 このような授業内容についての質問などもあった。


「頼られてるねぇ(もぐもぐ)」

「えぐいこと言うなぁ、あいつ。基礎構成紋様全部で何個あると思ってんだよ・・・なぁ?」


 同意されると思ってクインに聞いてみると。


「え・・・覚えてないの?」

「・・・」


 忘れてた。

 こいつも頭良いんだった・・・。


「つーか、さっきから何食ってんだよ」

「友達から貰った焼き菓子」

「・・・」


 ほんとユアンもクインも実力はあるし、社交的だ。

 

「ルークも訓練ばっかりしてないで友達作りなよ?私今日、友達と遊びにいくし」

「・・・」


 じゃあねといってクインも教室の外へ出る。


「・・・訓練場行くか」


 一人寂しく訓練場に向かうルークであった。





『ユアン、最近人気者だな』

「うん!友達が増えて嬉しいよ」

 

 ケルト村に居たときとは大違いで、友達を着々と増やしている。

 元々、ユアンは人当たりがよく、人懐っこい。

 更に、年齢より幼く感じるところも母性をくすぐられるらしい。


『いいことだ、人の輪を広げていけ。それはきっとお前のためになる』

「うん」


 部屋に戻り、服を着替え、皮鎧を身に着ける。

 これは組合に冒険者登録をした後、森に向かう前に買った新品だ。


 幻影で鎧をつけた『銀色』にしたとしても、それは実態があるわけではない。

 何があるか分からない、それが冒険だ。

 マオが用心に越したことは無いと思い、買ったものである。


「代わるね」

『ああ』


 そういい、ユアンは中に引っ込む。

 表に出てきたマオは姿を『銀色』に変え、魔法で作った氷の鏡で最終確認をし、東門へと向かった。



「やっときましたかぁ~」


 相変わらず、身の丈に合わない鞄を背負い、間延びした言葉で迎えるのはミロだ。

 傍らには馬が二頭、並んでいる。


「その馬はどうした?」


 その質問にミロはきょとんとした表情を見せる。


「どうしたって、これから森に行くんですよぉ~・・・?ただでさえ時間がないのに歩いて行く気ですかぁ?」


 普通の冒険者は馬を借り、森の手前で木に括り付けてそれから森に入る。

 何を今更とミロは疑問を口に出す。

 だが、ミロの前に居るのは常識の通じない人間であった。


「それでは逆に時間が掛かるであろう。返して来い」

「はい?」

「いいからさっさとしろ。時間が惜しいのだろう?」


 何を言っているのか全く理解できないミロだったが、彼がそこまで自信満々に言うのであれば何か策があるのだろうと思い、厩に返しに行く。

 勿論、料金は掛かってしまったが。


(後でモーデルさんに請求しよう)


 依頼の経費として下りるだろうと計算し、『銀色』の元へと戻った。


「行くか」

「はい~」


 さて何を見せてくれるのかとミロはちょっとした興奮を覚えていた。

 脚力が凄まじい軍馬か。

 はたまた魔獣か。

 魔獣ならばどんな魔獣か。

 報告書に書ける情報が増えることは喜ばしいと思っていたのだが。


「付いて来れるか?」

「はい・・・はい?」

「では行くぞ」


 そういいマオは足に魔法陣を形成する。

 人の居ないところであれば内魔力によって魔法を発動できるので魔法陣は発動しないのだが、今はミロが居る。

 そう言う事情もあり、わざわざ外魔力で魔法を発動したのだ。

 どんな魔法かといえばそのままである。


「『風纏う衣・脚』」


 本来、体全身を包む身体強化魔法を足のみに発動させる。

 グッと足に力を込め、そして地を蹴った。

 そして風を切る音がその場に残り、マオの姿はすでに遠くの方で小さい。


「・・・えぇ~」


 ミロは小さくそう漏らす。


 確かにすごい。

 報告書にも書ける。

 だが、期待していた物ではなかった。

 がっかりした感情とあの人は常識が通じないのかと思い、ミロはもう一度、厩に行き馬を借りる。


「絶対経費で落とそう・・・」


 無駄に掛かった金額を請求することをもう一度決心するミロであった。




昨日は更新できなくてすみません


今更なのですが注意書きを二つ

私の作品は基本的に横文字を使わないようにしています。

例えば

タイミング→間

フォロー→埋め合わせ

ギルド→組合

パーティー→団

などなど

読みにくいと思いますがどうかご容赦を

もう一つは


私のあとがきは茶番が多いので流し読みを推奨いたします。

たまに物語に関係したことを書きますが、茶番が多いです。

苦手な方は飛ばしてください

物語に関係することも読まなくても何とかなる内容になっているはずです・・・たぶん


以下私の目標


最近、知ったのですが100ブックマークって上位10%ぐらいしか居ないんですってね

当面の目標はこれで行きます

100ブックマークの後は完結させること

その後は考えていません


そんな感じの私ですがこれからもどうぞよろしくお願いいたします。


久しぶりですが皆様に感謝を

ブックマーク並びに評価、感想や誤字脱字報告、誠にありがとうございます


更新頻度も低く、文字数も少ない作品ですが

これからも読んで頂ける作品にしていきたいと考えていますので

皆様の時間が空いた時に少しでも開いて頂けると私は嬉しく思います。


ではでは~(今日はあとがき真面目に書けた!!)

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