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シーナと魔王とユアン

予定は予定ですから・・・(震え


後書きの方を一読していただけると嬉しいです

 




 少女―シーナは目の前の状況を理解することが出来なかった。

 いや、大抵の人は理解できないだろう。

 目の前に倒れていた少年が頭から血を流していた状況から一変し、少年が急に立ち上がったと思えば髪と目の色が変わり不適に笑っているのだ。

 受け入れることなど出来るはずもない。

 更に言えば七歳の少女に求めるにはそれは大きすぎる事態であろう。


「・・・・・・なるほど、そういうことか」


 少年(?)は何かに納得したように頷きながら周囲を見回し、ぐっと身体を反らした。

 小気味よい音を鳴らしながら身体を解す姿はまるで成年者を思わせる。


「いいな、やはりいい。太陽の暖かさと風が運ぶ草木の香り、耳に届く川のせせらぎ。全てが『中』で感じる物より美しい。そうは思わないか?同郷の血を受け継ぎし者よ」


 そんな言葉を口にする少年の顔はやはり先ほどの少年の顔で幼さの残る美形だがどこか恐ろしく見える。

 何の魔法を発動したのかシーナには分からなかったが、少年の目の前にいきなり水の塊が浮かび上がり、凍った。

 おそらく鏡の代わりに使っているのだろうとシーナは当たりをつける。


 そして自分を見ていた紅眼がシーナを視界に入れたとき、彼女はただただ硬直する他無かった。

 ただ、そんな少女に何かを感じたのか不意に視線を外し言葉を続ける。


「私は恐ろしいだろう?紅い瞳に黒い髪、周囲に溢れ出る魔力。人の地ではないことだろうからな」

「・・・」

「まぁ、答えなくともよい。俺は感謝しているんだ」


 感謝といわれてもシーナには心当たりが無い。

 感謝などいらないからすぐにでも逃げ出したい気分でいっぱいだった。


「名前だけは教えてはくれまいか?何もとって食ったりはせん」


 シーナは恐る恐る自分の名前を口にする。


「・・・シ、シー・・・ナ・・・です・・・」

「ふむ、シ・シーナという名前か」

「い、いえ。シーナです・・・」


 間違いを訂正するのにも一苦労であった。


「すまん、シーナか。うむ良き名である。シーナとやら先ほども言ったが私は感謝している。ゆえに褒美をやろう」


 シーナが逃げる前に少年はシーナに近づき、彼女の左目に手をかざす。


「・・・ひぅ」


 先ほどの赤黒い光ではなくただただ温かみのある優しい光がシーナの左目を包む。


「これでよいだろうか」


 数分たち手を退け何か満足げに頷く少年にシーナは首を傾げる。

 何も変わってはいない。

 痛い場所も無く、少しだけ頭の隅で考えていた、食べられるということも無かった。


「ほれ」


 少年の言葉と同時に目の前に出てきたのは先ほど少年が自分を見るために使った魔法であった。

 そこに映し出されていた自分の顔を見たとき不意にほろりと涙が落ちた。


「シーナよ。お前が忌み嫌うその瞳を愛せる時が来れば、その魔法を外せばよい」


 その言葉を最後に少年ゆっくりと髪と眼の色が戻り、崩れ落ちる。

 その傍らには少し前とは違う涙を流しながら座るシーナが居た。

 涙が浮かんでいるその瞳は『両方』とも宝石のように輝く蒼眼であった。



 涙を流す少女を見ながら魔王は不意に思う。

 紅い瞳は魔族の象徴。

 それを持ちながら人間の地で生きることの難しさ。

 生まれたその時から背負わされた業。

 仕方ないと感じながらも手を貸してしまった。


(これも『影響』か)


 この身体の持ち主と一度、話を必要がありそうだと魔王は思い、目を閉じる。

 身体が離れていくのを感じた。



 ユアンが目を覚ましたのは月光が大地を照らし夜空に瞬く星が宝石のように見えるそんな夜だった。

 家の中は静寂が支配し、両親は寝ていることを感じさせた。

 少女を護ることが出来なかった事を思い出し、不甲斐無さに目じりが下がる。

 なんとも情けない表情を浮かべていた。


(頭はもう痛くないけど、なんだか身体がだるいや・・・)


 ベッドから出て水を飲みに行くことにしたユアンは部屋の扉を開け、廊下に出る。

 その時、ユアンは何かに呼ばれたような気がした。


「ん?」


 きっと気のせいだろうと踵を返すと今度ははっきりと聞こえた。


―――こっちだ


 そう言う方角を見ると頼りない燭台の灯りだけがぽつぽつとある廊下だ。

 その先には両親が集めた本が積み重ねられた書庫があるだけだ。

 蝋燭の炎は、闇へと誘う悪魔の手のように不気味に揺れる。


 しかし、ユアンはなぜかその声が自分を害する物だとは思えなかった。

 むしろ自分を包んで守ってくれてるような気さえする。


 ユアンは水を飲みにいくことも忘れ、炎の誘いを受けることのしたのだった。



 書庫の中は古い紙の匂いと掃除してないのか、カビ臭さがそこにはあった。

 ユアンの身長では届かないほど積み上げられた本を見て、両親は片づけが苦手なのではとおせっかいな疑問を抱く。

 そんな本の間をすり抜けた先にあったのは、大きく立派な三面鏡であった。


 月明かりによって足元から自分の姿が映し出され始める。

 そしてユアンは自分の目を疑うことになった。


 目の前にいたのは自分ではなく赤い瞳に黒い髪、頭にはこめかみから二本生えた大きな角、不適に笑みを浮かべるその口元にはギラつく歯。

 おおよそ人間には似つかわしくない成分が多分に含まれた男がそこには立っていた。



二つほどお話があります


まず初めにいつも読んでくださってる皆様、今年一年ありがとうございました

とはいっても再開したのも最近のことですが

無理はせず自分のペースでゆっくりと更新していきたいなと思っております

今年の更新はこれで最後になるのですが来年もまた皆様に読んで頂ける文章を書けるように努力をしてまいりますので暖かく(時には厳しく)見守って頂けると嬉しく思います

ありがとうございました


二つ目なのですが謝罪をさせて頂きたいと思います

ジャンル分けで「異世界『恋愛』」になっておりました

申し訳ございません

本作のジャンルとしましては「ハイファンタジー」とさせて頂いております

恋愛のほうを期待して手に取って頂いた方には申し訳ないことをしたと感じている次第でございます

恋愛も無いわけではないのですが主軸としては冒険を目的としたお話になっていますのでご容赦いただければ幸いです


長文、失礼しました

そしてありがとうございます

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