ユアン、冒険者に その二
冒険者通り。
そこは中央通りとは全てが違う別世界であった。
コロギの町の住人らしい住人は居らず皆、武器を持ち、盾や鎧を着込む冒険者然とした男女ばかりである。
男が大半を占め、女性は売り子や偶に見かける冒険者程度しかいない。
店の並びも飲食店というよりは酒場というほうが正しい場所が多く、武器の修理を担う鍛冶屋、冒険の必需品とも呼べる薬関係の店が軒を連ねる。
料理の匂いというよりは魔獣の血らしき鉄の臭いが周囲に漂っていた。
総じて中央通りや学園通りの心躍る軽やかな様子というよりかは殺伐とした大人な世界というように思える。
「わぁ~!!」
ただ一人はお気楽な様子であったが。
『はしゃいでないでさっさと進め』
マオにたしなめられるがユアンはお構いなしにきょろきょろと周囲を見回しては興味のあるものに指を差しながら感想を述べる。
「そんな事言ったって~・・・わぁ~見てよあれ、でっかい斧~。う~ん、僕は持てないだろうなぁ~。武器買わなきゃ武器!!薬も!!」
『貴様はいらんだろう・・・』
ユアンのはしゃぎっぷりに呆れ気味のマオ。
今のマオを第三者が見れば、確実に保護者に間違われるだろう。
体力の無いユアンに武器など必要ないし、薬もオババの物があるので必要ない。
なぜか減っているが・・・。
「冒険者組合ってどこ?」
『あの一番大きな建物だ』
マオがそう指し示した先には一際大きな建物が冒険者通りの中央に建てられてた。
周囲の店や家が木造に対し、その建物の外装はレンガ調である。
更に他の建物は平屋であるのにこの建物は二階まであるのだろう。
ユアンは建物に近づき、口をぽかんと開けたまま上を見上げている。
「おっきいねぇ~・・・。これだけ大きな建物って後学園ぐらいじゃない?」
『そうだな』
マオは相槌を打ちながら町を囲む外壁に登り、町の形容を眺めたことを思い出していた。
そのときに見た一番大きな建物が学園で、その次が冒険者組合であったことをユアンに教えておく。
『とりあえず入ってみろ』
「う、うん」
初めて入る冒険者組合に若干の緊張、不安と大きな期待が綯い交ぜになった感情を胸にユアンとマオは足を踏み入れるのであった。
◇
冒険者組合の中は当然ながら冒険者でごった返している―
―ということはなかった。
ユアンにとっては朝早く来たつもりであったが、冒険者にとってはそうではない。
勿論、今の時間帯から行動する者もいない訳ではないが少数である。
理由としては単純で、組合から斡旋される任務には限りがあるためだ。
早朝に張り出されることを知っているのだろう。
斡旋される任務は旨みが大きい。
報酬は勿論のこと、運がよければ依頼者と個人契約が結べる可能性がある。
個人契約とはその名の通り、依頼者がその冒険者を任務に指名するのだ。
これは組合を通さないため仲介料が発生しないため、皆これを狙う。
閑話休題。
ユアンは周囲の冒険者に視線を向けたり、天井の高さを見たりと完全におのぼりさんであった。
そんな中、組合に設置された椅子に腰掛け、二人で食事をしている男性冒険者達の声が聞こえてくる。
「おい、聞いたか?」
「あん?なんだよ」
一人が相方に話を振っているところであった。
「冒険者組合が『銀色』を探しているんだとよ。報酬も出るらしいぜ?」
「はぁ~ん、・・・ところで『銀色』ってなんだ?」
「かぁ~っ!!だからお前はいつも流行に乗り遅れるんだよ」
話を振った男は頭に手をやり、やれやれと首を振る。
そんな様子にもう一人の方はいらつきを覚えたのか、教えろと話を急かす。
「『銀色』ってやつはな。数日前に冒険者登録をしに来た新人なんだがよ」
「新人で『二つ名』がついてんのか!?どんなことをしでかしたんだ?」
「それがよ、単独での牛鬼討伐だ。やばくねぇか?それも死体が無傷で、そいつも無傷」
「どうやったんだよ、それ・・・」
二人は結局そのままどうやって倒したのかという話に華を咲かせるのであった。
「すごい人がいるんだね~。ところで牛鬼って強いのマオ?」
『・・・』
「マオ?」
マオの様子が少しおかしいのでユアンは何かあったのかと思う。
『・・・その人それぞれによって感じ方が違うのではないか?・・・さっさと登録を済ませようじゃないか』
「それもそうだね」
しかし、いつも通り話を摩り替えられ、ユアンもそれ以上追及しないのであった。
◇
受付は建物の中央に位置していた。
そこには美人な女性が二人と男性が一人、合計三人の職員が座っていた。
当然、男性が多い冒険者は美人な女性の受付へと並んでいる。
普通に依頼や素材の買取の話をしている者が多いのだが、中には受付嬢を口説いている者も少なくない。
しかし、受付嬢の対応能力は凄まじかった。
ただ一言で冒険者達を捌いていくのである。
奮起する者もいれば撃沈する者もいる。
撃沈している者達がとぼとぼと去っていく様は哀愁漂う父親を思わせる。
ユアンは人が少ない男性職員の方へと並ぶ。
列は大して長くないが、手持ち無沙汰だった為、隣の話に耳を傾けてみる。
「ねぇ~、今夜ご飯一緒にどうかな?」
「そうですね・・・『銀色』様ぐらい大量に魔獣を狩ってきたらいいですよ」
ニッコリと微笑む受付嬢にピシリと固まる冒険者(美形)。
もう一つのほうでは―
「君にこれを送りたいんだ」
そう冒険者が差し出すのは花束である。
それに対して受付嬢はというと。
「はい、ありがとうございます。では組合の花瓶に飾っておきますね?」
「いや・・・君に・・・」
「飾っておきますね?」
「・・・はい」
やはりとぼとぼと帰っていく冒険者(可もなく不可もない顔)。
断りの言葉で多いのはやはり『銀色』という言葉だ。
『・・・』
マオの内心を誰も推し量ることなど出来はしまい・・・。
「次の方~」
「あ、はい」
そんなマオの感情を機微に疎いユアンが気が付くはずもなく、呼ばれるがままに男性職員の前に立つ。
「今日はどうされました?」
彼はユアンがまだ成人前の少年だと分かったのだろう。
穏やかな口調で話しかけてくる。
好感が持てる態度だとマオは先ほどの現実から目を背けるように感想を述べた。
「冒険者登録をしたくて・・・」
「登録ですね?これに必要事項の記入をお願いしてもよろしいでしょうか?それとも代筆いたしましょうか?」
「いえ大丈夫です」
断りの言葉を告げ、紙に記入をしていく。
年齢、名前、出身地、得意魔法、戦闘に関しての役職希望場所。
「役職希望場所って何ですか?」
「ああ、それは前衛、中衛、後衛、斥候などがよく書かれる内容だよ。自分の戦闘型に合わせて書いてくれればいいから」
ユアンの希望場所は当然、マオと同じ近距離魔法戦闘術なので前衛に当たるだろう。
(じゃあ前衛かな?)
『違うな』
(え?)
『お前が前衛など務まるものか。遊撃と書いておけ』
(なんでさ)
ユアンが理由を尋ねるとマオの回答はあっさりした答えであった。
『体力無いお前が前衛など恐怖でしかない』
「・・・」
ユアンは自分が後衛で体力が無い前衛を据えたときのことを考え、黙って『遊撃』と書いたのであった。
勝手に疑問に思っているだろうなってことを解答していくこ~な~!!
Q:エンビィはホモですか?
A:違います。マオが平人を殲滅したときの圧倒的な力と過激な攻撃姿勢に信仰心を抱きました。
Q:なぜエンビィは『忠誠の鎖』で死ななかったのですか?
A:過去のマオも現在のマオも未来のマオもマオなので『忠誠の鎖』を持ってしてもそこまで分類できないのです
Q:シルヴィアって誰ですか?
A:幕間過去一でも一応名前だけは出しています(修正で・・・
Q:前話シルビィになっていましたがなぜですか?
A:ミスです。すみません
Q:謝罪SSはないんですか?
A:ごめんなさい、ないです
Q:更新頻度が落ちていますがなぜですか?
A:お し ご と
Q:読者に一言
A:いつも読んでくださりありがとうございます。
茶番にまでつき合わせてすみません
出来るだけ更新はしたいのですが、なかなかうまくいかなくて・・・
愛される作品にしていきたいなと思っておりますので、これからもよろしくお願いいいたします。
ではでは~




