幕間 記憶
私が覚えている記憶で最も古いものは村の最後であろうか・・・。
西方の簡素な村の出身だった私は家族四人で細々と暮らしていた。
それでも、両親は優しく、兄はいつも私を引っ張ってくれており、幸せな生活をしていたのだと思う。
母の料理は貧しくともおいしかったし、父の背中はいつも大きく、兄が私の手を握る手は力強かった。
このまま、一生この村で過ごせるのだろうと。
成長し、愛する女性が現れ、子を持ち、父や母や兄のように立派になれるのだと。
願わくば、このまま一生変わらぬ時間を・・・。
そんな願いは儚く散りゆき、幸せな時間が終わりを告げたのだ。
平人族の大規模侵攻。
それは平人族の王が代替わりした翌年のことだったのだ。
その王は先王の弟だったらしい。
先王の息子がまだ幼かったため、王弟だったそれが摂政を務めることになったのだと。
彼は先王時代の軍関係に対し、そして魔人に対しても大いに不満を持っていたと聞く。
曰く、なぜ全ての平民は国を守る軍に在籍していないのかと・・・。
曰く、魔人などこの世に存在していいはずがないと・・・。
曰く、現魔王は腰抜けだ、今が攻める時であろう・・・。
と。
当時の私は唯の村人であった為、他国の政治などに興味もなかったし、触れることの出来る物ではなかった。
しかし、政治云々を抜きにしても関わらなければならないのは西方の村に住むが故の運命だったのであろう。
大規模侵攻は平人族の男性は殆ど招集され、女子供も後方だが配属されたらしいのだ。
今の私からすれば、戦いの経験が乏しい民兵など使う場面が限られており、使えるときが来るまで物資を食い潰すだけの存在だ。
それに一般兵と民兵を一緒に使うのは愚策である。
もっと言えば兵站はどこから捻出するのだろうか。
穴を探せばきりがない。
しかし、当時何の力もない子供だった私にとって、種族が何であろうと大人の男は恐怖の対象でしかなかった。
――一つ目の村が虐殺にあったらしい
――川を挟んだ向こうの街が略奪にあったようだ
――ついに隣村が焼かれた!!
闇夜を照らし、轟々と燃え盛る隣村を見た私は、部屋の片隅でガタガタと震えることだけが唯一できることであった。
そんな私の手を握り、引っ張ってくれたのはやはり兄であった。
―逃げよう。
―勝ってこないんだ。
そんな兄の言葉の裏には悔しさや憎悪が隠されていた事に私は後で気が付いたのだ。
闇に乗じて逃げる事を決め、家を出た私たちが見たものは―絶望であった。
何千と村の周囲を囲む平人。
なぜこんな辺境の村一つ一つを狙うのだろう。
あと少し、時間があれば・・・。
色んな感情が綯い交ぜになり、涙が溢れた。
指揮官らしき男性の一声。
―撃て
と。
何百もの炎の塊が流星のように村に流れ落ちる。
私たちはそれを呆然と眺めるしか出来ないでいた。
怒号が響き、爆音が村の中から聞こえる。
村の男衆は皆、鎌や鍬を持ち、火花を散らしかち合う。
しかし、一人と対峙していれば後ろから剣に切り裂かれ、魔法で障壁を張れば、弾幕がそこに集中する。
また一人、一人と倒れ、ついに女人と子供だけが取り残された。
残された理由は単純であろう。
子供は残党狩りをする時の人質に。
例え王が魔人を嫌悪していたとしても一般兵はそうではないのだろう。
女人は兵の欲の捌け口に。
悲鳴と泣き声が木霊するそこはもう記憶にある村の様子ではない。
私の心はひび割れ、光の無い目をしていたことであろう。
しかし、私たちは忘れていたのだ。
我らが王の存在を。
齢百五十にして魔王の椅子に座し、三千という時を経て今もなお、その地を下されていないあの王を。
―轟っ!!
そんな爆裂音が空気を震わし、地を揺らす。
落ちたのは平人の軍勢の中央部であった。
天から落ちたその光の先にあの姿が見えた。
あの方の姿は闇に包まれ、よく見えなかったが大きなそれでいて力強いあの言葉だけは未だに私の耳に残っている。
―貴様らぁぁぁあああああ!!!我が民をよくも甚振ってくれたなっ!!
―生きて故郷の地を踏めると思うなよっ!!
―代償は貴様らの命である!!死んで侘び、悔いて死ね!!
単独で来られたあの方は極大に魔力を込めた魔法を平人に放った。
私たち魔人と平人が入り混じる場所に落ちたにも関わらず、その魔法は平人のみを焼き殺し、塵すら残さず、消え失せた。
怒りに心が支配されても私たちを救ったあの方は、すぐに次の戦場へと飛び去った。
周囲は静寂に包まれ、何が起こったのか誰もがわからない状況であったが、時間が経つにつれ、助かったのだと実感が体の内から湧いてきたのだった。
この時、すでに私はあの光景に、そしてあの方に心を奪われてしまったのだ。
あの方なら私のこの身に宿る憎悪を拭い去ってくれるだろう。
そう信じて、あの方に仕えるため私は魔都に向かうのだった。
◇
あれから何年たったであろうか。
私は念願の魔王城に足を踏み入れることが出来たのだ。
内に燻る憎悪は日に日に大きく、そして身を焦がすほどになっている。
しかし、これもあと少しで消え失せるだろう。
そう考えると若干の寂寥感を覚えた。
その感情はもう少しであの方に会えるという期待が消してくれる。
王座の間に続く廊下を城内に入れる者だけが身に付けられる勲章を胸につけ、誇らしげに歩く。
―もうすぐだ。
王座の扉の前で呼吸を整え、開かれるのを待つ。
緊張と期待。
待ちに待ったこの瞬間。
王はすぐそこにおられる。
ギギギと音を立て開かれた先に私は一歩、歩みを進めるのだった。
◇
―なんだあれはっ!!!!
―あれが平人の軍を一蹴した王だと?
声に出さず、私は城内の壁に向かい拳を突きつけていた。
―ははっ、間違いに違いない・・・。
―過去に私が見た王はあれではないはずだ・・・。
乾いた笑みが口からこぼれる。
―あんな計画を立てるなんて考えられない。
―そうか、私の王は老いたのだろう。
私の心に黒い感情が浮かび上がる。
―私はあなたを崇拝しております。
―あなたに忠誠を誓いましょう。
―しかし、私が忠誠を誓うのは過去のあなただ!!!!!
―決して腑抜けた今のあなたではない!!!
私は私の信じるあなたを体現するための計画を練る。
例え、それがあなたを害するとしても・・・。
狂った副官は消えぬ憎悪を抱き、王の計画を否定し、自分の望みを押し付ける。
それが正しいのか。
きっと答えは出ない。
なぜなら――・・・。
皆さん、こんにちは。
昨日は更新できないでごめんなさい。
連投稿一話目です。
そして、嬉しいことがございました!!!
小説情報を見れば分かることなのですが、感想いただきました!!
ありがとうございます。
故に私は前に自分が言ったことを有言実行しようと思います。
皆さんの意見が採用されるかもよ?
といったのでSSを書きます
本編には少ししか絡ませることが出来ませんでしたが(私の実力不足な為)
イケメン「ほら、薬持ってきてやったぞ」
美女「いつもぶっきらぼうな貴方が!?」
イケメン「い、いらねぇんだったら持って帰る」
美女「そんな、嬉しい、抱いて!!」
という風にハーレム系ならこうなるんでしょうけど
マオとユールさんなのでこういう風になってしまいました(以下SS
ユール自室にて
ユール「どうしろっていうのよ・・・もう・・・。連絡先なんて知らないし・・・。転属願い出そうかしら本当に・・・」
コンコン(ノック音)
ユール「誰かしら?どうぞー、開いてるわよー」
マオ「じゃ、遠慮なく」
ユール「うぇえええええ!!!ど、どうして・・・」
マオ「なんだ、人を化け物みたいに。失礼だとは思わんのか?」
ユール「いえ、だって・・・。そ、それでどういうご用向きで・・・?」
マオ「いやなに、胃痛で学園を休むと聞いてな。一応顔見知りなのだし見舞いをと来てみたのだ」
ユール「(ありがた迷惑~~!!!)そ、それはどうもご親切に・・・。しかし、どうやって入ったのですか?寮周辺には部外者が入ったら警告が鳴る結界を張っているのですが・・・」
マオ「意味があると思うか?」
ユール「・・・ありません」
マオ「それはともかく。ほれ、胃薬だ(ポイ」
ユール「え?あ・・・、ありがとうござい・・・ます?」
マオ「なぜ疑問系なのだ」
ユール「いえ、だってこれ・・・手作りじゃないですか?」
マオ「そうだぞ(オババ特製の)」
ユール「・・・また実験台ですか?」
マオ「そうともいえるな(正確な効能が知りたい)」
ユール「え~・・・」
マオ「文句があるのか?」
ユール「だって・・・」
マオ「いつでも連絡を取れるようにしろと言われたんじゃないのか?」
ユール「なんでそれを・・・って思いましたけど、もう驚きませんよ」
マオ「なんだ、本当だったのか」
ユール「カマかけたんですか!?」
マオ「いいからさっさと飲め」
ユール「うぅ~(涙目で嫌々ながらゴクリ)」
マオ「どうだ?」
ユール「・・・まぁまぁです」
マオ「そうか・・・では感想も聞けたことだし私はこれで去るとしよう」
バタン(閉まる音)
ユール「・・・いったかな?・・・これ貰っとこ」
マオ「・・・(窓からチラリ)」
ユールは今後胃痛に悩まされることはなくなったのであった。
ちゃんちゃん
こんな感じでどうでしょう!!
ではでは




