覚醒
お越しいただきありがとうございます
前話、書き足しているので読み返して頂ければ幸いです
書き足してるといっても途中にではなく最後に魔王視点ということですので内容に変化はありませんが…
エルオロス王国アニール領にあるケルト村。
魔人と平人が戦争している時代にも関わらず、その村は平穏そのものであった。
もともとアニール領自体が戦場から最も遠い東側にある。
王都から南東に十日ほど馬車に揺られるとアニール領最大の町コロギに着く。
そこからさらに三日揺られてようやくケルト村に到着する。
とにかく王都から遠いのだ、戦場からなど考えるべくもない。
昔、過激化した戦場に徴兵されたとき、アニールの人は遠すぎて時期を逃したことさえあった。
そのため戦争と言うものを知らない人間が多いアニールの人間のほとんどが温厚で平和主義者の集まりと、このご時勢に相応しくない集団であった。
そんな村で死に掛けた―いや、一度は死んだのだが―赤ん坊は八年という歳月が経ち、元気に育っていた。
身長はもうすぐ父の太ももを超えるだろうその少年は母親の栗色の髪と優しげな目元、父親の鼻筋と骨格を譲り受けている。
今はまだ幼さの残る顔立ちをしているが、成長すればすれ違う女性が振り返ってしまうほどの美形となるだろうと父であるアレンは密かに思っていたりする。
「ユアン、今日はねちょっぴりお願いがあるんだ」
「お父さん、なぁに?」
あの幼子はユアンと名づけられ、目の前にいる父と母を見上げていた。
コテンと可愛らしく首を傾げる様にアレンとセラは甘やかしていたい気分になる。
しかし、その感情をぐっと抑え獅子が子を崖から突き落とすように厳しいお願いをする。
「くぅぅぅ、・・・あのね、今日はユアンにね。・・・その、・・・あのね。か、か、買い物に行ってきてほしいの!!」
あぁ言ってしまった、そんな風に崩れ落ちるセラに、大丈夫僕らの息子はそんなに弱くはないよそっと手をやるアレン。
アレンの表情も不安げであるが・・・。
二人は完璧な親馬鹿であった。
しかし、そんな状態になるのも無理はないだろう。
あの状況を見たアレンは妻であるセラに事の詳細を報告した。
セラは当然のごとく気を失いかけ、アレンが咄嗟に我が子を抱かせなければどうなっていたか分からない状況であった。
ただそればかりでなく、ユアンは体の弱い子である。
すぐに風邪を引き、体を壊すことも多い。
風邪ならば薬や魔法で治せたのだが問題はそれだけではなかった。
原因不明の発熱、それがアレンとセラを親馬鹿たらしめる原因であった。
セラの回復魔法も、オババの調合した薬も効かず、アレンとセラが全力でコネを使い、招いた医者もお手上げ状態だった。
ただ発熱は二、三日で収まり、元気に過ごせているのが幸いだっただろう。
「うん!わかった!がんばる」
そして今日はそんなユアンを始めて外に一人で出す日であった。
不安になるのも無理ないだろう(?)
外には何度か出ているがいつもは母や父が傍にいるため、若干の不安を携え外に繋がる扉へと手をかけた。
◇
ケルト村は周囲と比べ、比較的大きな村である。
中央の道はしっかりと舗装され、その先には噴水があり、婦人達の談笑の場となっている。
その噴水から見える小高い丘はその子供達であろう子が元気に走り回っている。
丘の横には道と小川が平行して道が延びている。
その道をユアンは通ってきたのだった。
ユアンはこの村が大好きであった。
談笑している彼女らもユアンを見ると手を振り笑いかける。
花壇の手入れをしているおばあさんは蜂蜜を舐めさせてくれた。
優しい人ばかりである。
「えっと、パンとミルクそれから・・・」
持たせられた手提げの中に入っていた紙を見ながら歩くと香ばしいパンの香りが鼻を撫でた。
着いたのはダナとミルドのパン屋さんと書かれた看板のお店である。
そう、産婆の手伝いをしていたふくよかな女性、ダナのお店である。
村唯一のパン屋でダナは売り子、旦那のミルドが厨房で作る夫婦二人三脚の店である。
ここのパンは外はさくさく、中ふんわりもっちもちの王都顔負けの一品だ。
「あら、いらっしゃい。ユアン一人かい?」
「うん!」
「そうかい、いつものでいいね?ちょっと待っててね。・・・はい、おまけしといたからいっぱい食べて大きくなるんだよ?」
「ありがとうダナさん!!」
「いいのいいの、知らない仲じゃないんだし」
村人ほとんど知らない仲じゃないのだがユランはそんなところに気が付かない。
豪快な笑みを浮かべるダナにもう一度礼を言うと、次の店へ向かうのだった。
◇
全部の店を回るともうすぐ昼食の時間になった。
きゅるきゅるとお腹が鳴るがぐっと踏ん張り、男の子だもんと自分を叱咤し帰路につく。
いつもの噴水が近くなると家はもうすぐであった。
小高い丘の横の道を通り過ぎようとしたその時、少年達の声が聞こえてきた。
「げっ、こっちみた。みなのものこうげきだぁー」
自分に向けられたものではない。
遊んでいるのかきゃっきゃきゃっきゃとはしゃいでいる。
普通なら微笑ましい光景だろう、手に持つこぶし大の石とそれを投げつけられている女の子を見なければ。
顔を伏せ、じっと耐えている少女の表情は見えない。
しかし、ユアンは彼女の瞳に溜まる水滴を見た気がした。
遠目からそんな物が見えるはずがない、ただの気のせいだろう。
誰もがそう言うだろうがユアンの足は少女の下に駆け出していた。
「そんなもの投げて怪我したら危ないじゃないか。やめなよ」
急に少女の前に立ったユアンに少年達はぎょっとした。
投げられていた石は止まったが、少年達の罵声は止まらなかった。
「邪魔すんなよ、お前には関係ないだろ!」
「もしかしてお前も仲間か!」
「二人に増えた、やっちまぇ」
止まった少年達の暴力はユアンの乱入により過激さを増した。
こぶし大とはいえ石は石である、狙ったわけではないだろうがたった一つの石が偶然にもユランの前頭部へと直撃する。
目の前が暗くなっていく、最後に見た光景は少年達の喜びの表情と少女の悲痛な嘆きであった。
◇
「やった、命中だぜ。百点~」
「今のは俺が投げたやつだ!!ずっこいぞ」
「な、なぁ。やばくないか、あれ。なんかすっごい赤くなってるんだけど・・・」
今にも喧嘩しそうな二人だったがもう一人の言葉を聞き、そちらに目を向けると、真っ赤な血を流し倒れている先ほど邪魔をした少年とその傍で泣いている少女であった。
「・・・へ、へっ、悪を倒したんだ。・・・村の平和は守られたんだよ」
「で、でもあいつは・・・」
「俺しらねぇかんな!!じゃあな」
最後の一人が当てたのは自分じゃないと一目散にその場から逃げ出した。
「おい、待てよ!!くそっ、俺らも行くぞ」
「う、うん」
その後に続き残りの二人も離れる。
取り残された少女は涙を流しながらオロオロとしていた。
「ぉとうさん、・・・だれかぁ。ひっく・・・」
少女はただ唯一信頼できる父の顔を浮かべた。
その時、ユアンの胸の部分が赤黒く光り出し、その光はユアンの体を包む。
「ひっ」
少女はユアンの体を心配しながらも、周囲にあふれ出した魔力の奔流に恐怖し小さく悲鳴を上げる。
するとゆっくりと赤黒い光がユアンの体を包み、収束していった。
ジワリジワリと全身に染み込む様に。
光が消えた後、そこに立っていたのは黒い髪をし、魔人特有の紅い瞳を持った少年であった。
実は私、書き溜めというのを一切しておりませんで…
投稿画面で考えながら書いてます。
なのでこれからも加筆、修正、削除大いにありますゆえご容赦を
作者の想像力不足のため食べ物は日本名でいかせてください
一応考えたのですがクルト→イチゴ
なんて読んでる側も面倒でしょうし、何より私が忘れます!!!!!!
ごめんなさい
修正しました