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解決策・・・?

三話目~





 (その話、本当なの?)

 『あぁ、魔王だった頃に少しな』


 それはユアンにとって、そして何よりもルークにとって解決できるかもしれない唯一の希望であった。


「ルーク!!友達がその体質について何か知ってるんだって!!」

「なっ!?」


 ルークはあまりの衝撃に驚きを隠せない。

 自分の体質については何度も調べた。


 王都国立図書館というのが王都にはある。

 そこは国中から集められた本が何万冊と保管されており、一般公開されているのだ。

 もちろん、禁書や限定公開になっているものもあるのだが。

 その一般公開されている本で自分の体質に関連しそうな本は粗方読んだはずだったのだ。

 その結果、何も見つからず時間を無為に過ごした事を何度も後悔した。


『あれは確か王になってまだ間もない日だったはずだ―』


 魔王とは勇者や冒険者、自国の民で魔王になりたい者に命を狙われるのが通例であった。

 それも当然で、日も浅い魔王など信頼における人物ではないと、先代から仕える老臣や新たな魔王が現れたことで危機感を覚えた平人の王が冒険者を募り、討伐隊を編成したりと敵ばかりなのである。

 

『そんなある日のことだ。命を狙われることに辟易していた俺はある考えに至った。自国民は殺せないが平人であればこっちから仕掛けようとな。若かったのだ、許せ。その時の俺は周囲に流されるまま内政や軍務に就いていた』


 魔王はある行動に出た。

 勇者に成り得る可能性のある平人を襲撃し始める。

 元々、平人と魔人は敵対しており、祖先の代から続く戦時下にあった。

 魔王の行動は撹乱の目的と平人の中では言われていたのだが、その実勇者候補の殺害を目的とした行動ということだったのだ。

 

「・・・」


 マオの過去を聞き、ユアンは考え込む。

 殺害に対して思うことはあってもマオに対しては忌避の気持ちは無い。

 過去はどう足掻いても変える事の出来ない事象であるし、仕方ない部分もマオにはあったのだろう。

 当時の事を知らぬユアンに口を挟む事など出来はしなかった。


『その事がきっかけでだんだんと自分の地位が確立していくのを感じていた。・・・ある村で見つけたのだルークとやらと同じ体質の子供を』

 

 話を繋げると結果的に見えてくる。


「・・・つまり、勇者候補・・・?」


 思わず言葉に出てしまうほど、ユアンは驚く。

 ユアンはマオによくお前は勇者だといわれていたのを思い出した。

 自分が特別だとは思わなかったが、この場に二人も勇者候補がいるということになる。


『まぁ、そうともいいきれんがな。その子供は土しか使えない様子であったな』

(解決策はあるの?)

『解決できるかどうかは試したことがないから分からん。だが仮に彼が勇者であったなら、勇者、単一精霊のみ、精霊には感情がある、という単語を合わせると―』

(合わせると・・・?)

『―彼は唯一つの精霊に愛されすぎているということだな』

「・・・はい?」

「俺にもわかるように説明しろよ!!」


 ユアンは言葉の意味を理解できずに疑問を浮かべる。

 時々出てくるユアンの言葉に痺れを切らしたのかルークは説明を求めてくる。

 しかし、ユアンにもルークに言えることが少ないのだ。

 特に魔王や勇者の話など。


『風だったな少年よ。つまり、風の精霊はその少年のことを愛しすぎて他の精霊を使うことで嫉妬しているのだと考えられる』

(はい?)


 何とも人間くさい感情を持っているものだなとユアンは感じたのだが、精霊という存在を見たこと無いユアンには何かをいうことは出来ない。


「嫉妬しているんだって風の精霊さん・・・」

「はぁ?」


 一応、伝えるべき言葉を伝える。

 当然返ってくるのは訝しげな視線と疑問の声だ。


「僕も分からないけど、他の属性魔法を使うときに風の精霊さんが嫉妬して他の精霊さんが干渉できないようにしているんだって」

「はぁ?」


 二度目のはぁ?である。

 ユアン自身もそう言いたいがマオはその答えに自信があるのだろう。

 

『精霊は人と一緒に現代まで過ごしてきたのだ。影響があってしかるべきだろう。感情も芽生えるのはありえぬものではない』

(じゃあ、結局解決策はないって事?)


 他人(?)の感情など第三者がどうかできるものでもないし、ましてや精霊など見えぬのだ。

 ほぼ不可能ではないか。

 しかし、それならマオもユアンやルークに希望を与えたりはしないだろう。


『簡単な話だ。ユアン、精霊と仲良くなるためにお前がシーナとしたことは何だ?』

(一緒に日向ぼっこしたり、暗闇で蝋燭見たり?)

『そのときに何をした?』


 そのときの記憶を探り、そして思い当たる。


「・・・精霊さんがいると考えて、精霊さんにも話しかける?」

『そうだ、これはまだ確実ではないが精霊の中には人の言葉を理解できる者も居るやも知れぬ』

「何度も話しかけて分かってもらうしか方法はないんだね」


 マオとの考察で結論が見えたユアンはルークに解決策を話す。


「ほんとにそれでいけるのかよ」


 精霊が言葉を理解できるなら何度も呟いた悔しさを理解しているはずではないかと考える。


「それは精霊さんに向かって話しかけてないからだよ」

「傍から見ればばかみてぇな行動だな」


 疑問に思いつつもユアンの友達はとてつもない才能があることを身をもって知っているルークはそれを試すことにするのだった。


 明日は初めての学園ということもあり、遅刻しないように二人は早く寝ることにする。

 ルークは小さな希望を抱きながら、ユアンに感謝を感じ、布団に身を沈めるのだった。

髪の毛切りにいってくる

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