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誕生

更新再開します

あらすじと1、2話ちょろっと変えてます


 穏やかな気候、陽光は包むような暖かさで風が優しく頬をなで、川のせせらぎや野鳥の鳴き声が心地よく耳に届く。

 エルオロス王国アニール領にある端の村。

 周辺の村の中心で魔人族との戦から一番離れた人間の村。

 他の村や町に比べ時間の流れがゆっくりと感じられるこの村で新しい生命が産声を上げようとしていた。


―――コツコツコツコツ・・・・・・コツコツコツコツ―――


 村の中で比較的大きな家の中、一人の男が扉の前の廊下で行ったりきたりを繰り返す。

 顎に手をやり、歩いてはため息、歩いては髪を掻き毟る。


「はぁ~」


 何度目のため息だろうか。

 むしろ出している事さえ気づいていない可能性のほうが大きいだろう。


「―――――――――」


 声にならない悲鳴が扉の中から聞こえる。

 男は咄嗟にノブに手をかけたが何かを我慢するようにぎゅっと握りそれを離した。

 先ほど中に踏み込んで産婆に怒鳴られたばかりだ。

 そう、中では男の妻が新たな命を産み落とす最中であった。


 こういう時、男は無力である。

 どれだけ魔物を退ける力があったとしても、どれだけ精神が強くとも戦うのは女性なのだ。

 男はただただ母子の無事を祈るばかりである。


 それからどれだけの時間が経ったか分からないが空が夕闇に染まる頃、部屋の中が途端に慌ただしくなり出す。


「――――いかんけぇ!!神官様、治癒魔法を!!死なせはせんけぇの!!ダナ、湯と綺麗な布を!!」


 中からそんな声が聞こえた。

 男の顔が瞬く間に青ざめ、咄嗟に中に踏み込む。

 そこで見たのは魔方陣の中心に寝かせられた我が子。

 産声も上げず、呼吸も浅い。

 産婆が指示を出し、神官が延命のための魔法、大柄の女性が新しく湯と布の用意をしている。

 だがそれが意味を成さぬように小さな命が消える、そんな瞬間だった。


「おばば!!俺らの子供は!?セラは大丈夫なのか!!な、なぁ!!」

「うるさいっ!!男は黙って自分の女の手でも握っとけぇ!!」


 産婆に軽く押され我が子に近づくことさえ叶わない。

――どうして、そんなことばかりが男の頭をよぎる。

 妻――セラの横で我が子を抱き、微笑むそんな光景を先ほどまでずっと夢想していたというのに。

 現実は非情にも突きつけられる。


「婆様、呼吸が「止める出ない!!魔法を切らすな、ワシらが諦めるわけにはいかんのじゃ!!」」


 トクトクと浅くも動いていた小さな胸が次第に動きを小さくし――――鼓動を止めた。


「・・・そん・・・な・・・」


 男は膝から崩れ落ちる。

 その表情は前髪で見えないが悲壮に満ちているだろう。


 セラになんと言えば・・・


 愛する妻がこんな現実を知ればどうなるだろうか。

 分かりきったことだ、泣く事だけでなく自棄になり最悪の事態も想定される。


 魔方陣の光も収束し、部屋には月明かりと僅かばかりの息遣いのみが広がっていく。


「アレン・・・すまぬ、ワシの力不足ゆえ・・・。小さき命を散らしてしもた・・・」


 誰もが何も言わずに顔を伏せ、産婆が小さな亡骸に手をかけたその瞬間。

 大きな魔力が部屋を包み込んだ。

 目には見えぬはずの魔力、それが赤黒い色を持ち、蛇のようにうねりを上げて、壁や床に染み込んでゆ き、魔方陣を形成する。


「なっ!?なんだいこれは」

「私も見たことがない魔法陣です!!いったい何が・・・」


 産婆を手伝っていたダナという女性が悲鳴に似た言葉を上げ、神官がそれに答える。

 皆が驚いているうちにも陣が完成したようで、虹色の光が視界を包んだ。

 暫くたち、部屋は元の状態へと戻った。

 光の中で男――アレンは我が子に虹色の魔力の塊のような物が入っていくのが見えた気がした。

 だがそんなことを吹き飛ばすことが目の前にあった。


おぎゃー、おぎゃー


 命が吹き返し、赤ん坊の産声が室内に反響する。

 それはまさに神の奇跡としか言いようがないものであった。

 それを見た反応はさまざまである。

 神官は神に祈りをささげ、産婆とダナは驚きで固まり、アレンは頬に伝う涙を拭わず、愛の結晶ともいえる我が子を抱いた。


「ははっ・・・心配させやがってこいつは・・・。よかった・・・よかった・・・」


 腕の中の大事をぎゅうっと包み、命があることを実感する。

 誕生、それを苦くも嬉しい体験にした子は腕の中で元気に存在を示すのであった。



 女神と会話した後、周囲が闇に変わった。

 先ほどの空間と違い自分の体も手足も見えず、動かせる感覚などなかった。


(何も見えん。種族が変わったと聞いていたが動けもしない。まさか目が見えず体が不自由な種族か?生きづらいとはこのことか?なれば簡単だ。直してしまえばどうと言う事はない)


 いつものように体に魔力をたぎらせ、魔法を発動しようとしたが――


(ふむ、魔力の流れが悪いな。体に慣れさせるためには相応の時間が必要か・・・。まぁよい、時間をかけてゆっくりとするとしよう)


体内に魔力を廻らせていく。


(一年もすれば体が慣れるだろう。この種族は短命かも知れないからな、時間がもったいないが致し方ない)


そんなことを考えていると急に光が目を焼いた。


(くっ!?俺はまだ何もしていないだろう!!)


 魔力を廻らせただけで魔法を発動させてはいない。

 だというのに周囲が明るく照らされていく。

 暗闇になれた目を容赦なく光が蹂躙した。


(どうなっている!?体はまだ動かせないっていうのに!)


 そして光に目が慣れたころ、目に飛び込んできたのはしわくちゃの顔をした平人の老人であった。

 その老人は目を細め柔らかな表情でこちらを見ている。


「よぉがんばったのぉ。ほれ暖かいのぉ」


 その声音と皺だらけの手は優しげに体を包み込んだ。


(なるほど、今まで母の胎内にいたということか。動けんわけだ。)


 魔王はそんなことを考えていたが、老人の表情が一気に青ざめ白くなる。


「産声を上げておらん!!いかんけぇ!!神官様、治癒魔法を!!死なせはせんけぇの!!ダナ、湯と綺麗な布を!!」


(うるさい!!耳元で大声出すな!・・・確かにこの体弱っている。このままでは死ぬか?生まれてすぐ死ぬなんぞごめんだがまだうまく魔法を使えぬ。ギリギリまで魔法の錬度を上げるとするか)


 そう決めた魔王は体内で濃密な魔力を練り上げた。

 しかしそれは失敗だったといわざる得ないだろう。

 なぜなら―――


「止める出ない!!魔法を切らすな、ワシらが諦めるわけにはいかんのじゃ!!」


 その圧縮された魔力に体が持たず衰弱は一気に加速してしまった。


(ぬっ!?まずい!!練りすぎたか!)


 その思いをきっかけに心臓の鼓動が止まってしまう。

 だんだん目の前が暗くなってくる。


(間に合え!!)


 最後の足掻きとばかりに魔王は溜めていた魔力を対外に開放し、蘇生魔法の構築に移る。

 あふれ出る魔力は可視化され赤黒い魔力がうねりを上げて部屋に満たされた。

 その魔力によって作り出された魔方陣は子を蘇生させるための物のはずだった。


(なっ!?)


 魔王は信じられないとばかりに驚く。

 なぜなら自分の組んだ魔法陣が形を変え、赤黒い魔力も虹色に変化した。

 更に魔王の持っている魔力をその魔方陣はみるみる吸っていき、完成した虹色の雫が体の中心へと落ちた。


(何が起きている!?くっ、意識が保てない・・・)


 周囲の人間が固唾を飲む中、魔王の意識は暗く深い闇へと沈んでいった。



皆さんの作品見てると恥ずかしいほど短く稚拙ですね…


加筆しました


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