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医務室にて





 倒れこむ二人を見た教員達は、傷の具合がひどいことを確認し、医務室まで運ぶ。

 原因は止めなかった教員にあるのだが、教員たちもここまで魔法の練度が高いとは思わなかったのだろう。

 主にユアンの方が。

 

「ルーク!!ルーク!!」


 少女が少年の名前を呼びかけ、意識が戻らないのを確認すると、服を捲り上げ傷の状態を調べる。

 治癒魔法を唱え、傷口を癒す少女の表情は少年―ルークの身を案じて不安げな様子だ。


「医務室に運べ!!治療は最優先させろ」


 ユアンの傷は職員の一人が塞ぎ、応急処置は終わらせている。

 二人は教師に魔法で運ばれ、学園の医務室へと運ばれていく。


「何で!!止めなかったんですか!!」

 

 少女は教師全員を睨み、大声で非難する。

 当然であろう。

 ルークもユアンも限界が見えていた。

 それなのに本来止めるべき職員は傍観を決め込み、ルークの魔法が危険だと判断するまで誰一人動かなかったのだ。

 

「クイン・ディナトルエ嬢、私が指示したのですよ」


 誰もが沈黙を選ぶ中、マーサ学園長が前に出てくる。


「なぜですか?」


 さすがに大声は不味いと思ったのか、少女―クインは声量を落とし疑問を呈する。

 その声色に非難の色は消えていないが。


「私には王都の学園で『成績不振者』と認定された生徒の実力を確認する義務があります。本来はこのような場面で確認することはしないのですが・・・、ユアンと言いましたか、あの生徒。彼が思った以上の才の持ち主であったが為に、両者の実力を判断するいい機会だと考えたためです」


 コロギの学園は制度によって王都に成績優秀者を送らなければならない。

 成績不振者より劣るものを送ってはまた突き返されるだけである。

 そのために今年の落ちてきた(・・・・・)生徒の実力を正確に判断する必要があった。

 

 本来ならば修学過程において、実技演習や対人戦闘術の科目で判断するのだが、良い逸材がルークの相手となったために丁度良いと学園長が独断したのだ。


「・・・・・・医務室にいきます」


 名字持ち(・・・・)であるが故に学園長の事情も理解しているクインは、結局それ以上責める事はせずに、医務室へと足を向けるのだった。




 マオは職員が目を離している隙に表へと出て、魔法による偽装を施し、寝ている振りを決め込んでいた。

 体のあちこちを弄られ、若干の不快感を感じながらも、自分は本来重症なのだとマオは我慢する。

 初期の魔王時代にはこれよりも酷い怪我など日常であった為、この位は我慢をするほどでもないと自己分析しながらも、一番酷かった怪我を思い出す。


(まぁ、死ぬ直後に胸を一突きにされたな)


 死ぬ間際、エンビィに刺されたことを思い出し、苦笑する。


(そういえば同郷の者はここにいるのだろうか)


 そんな思いから薄っすら目を開き周囲の様子を確認する。

 その頃には職員たちは医務室から退室しており、体に触れるものは居らず、静寂に包まれていた。

 だが、人がいなかった訳ではない。


「あっ・・・」


 少女が一人、隣の寝台に寝かされた少年の横に座る少女がこちらに気がつき、小さく息を吐く。


「おはよう」


 マオは取りあえず挨拶をし、反応を伺うことにした。


「う、うん。君は・・・大丈夫?」


 遠慮がちにこちらの様子を気に掛ける少女は座る位置からして、少年の関係者なのだろうとマオは予想した。


「大丈夫。おr・・・僕はユアン、君は?」


 ユアンの振りは中々に難しく、短く言葉を切ることにし、少女の素性を確認する。


「私はクイン、この子はルーク。さっきはごめんね。うちの弟が熱くなっちゃって」


「構わない、よ。戦いってそんな物だから、ね」


 ユアンらしく振舞うのは難しいことが分かり、もう面倒だから中に戻ろうかと思うが、彼女はそうさせないらしく、質問が飛んでくる。


「魔法師にこんな事を聞くのはご法度だって分かっているんだけど・・・」


 そう彼女は前置きをし


「最後のルークの魔法・・・どうやって止めたの?」


 やはりかとマオは思う。

 砂塵で見えなかったとは言え、動きが鈍くなったユアンが不自然なくらい的確に止めたのだ、疑問に思うのはおかしくないだろう。

 原理を解説するのは難しくない。

 少年の魔法は風の魔法だったため流れがあった。

 それと逆の流れの風魔法を発動し、指にも被害が無いよう強化系の魔法を併用すれば、なんら難しいことではない。

 マオにとってはという注釈が付くが。

 だがそれを説明すれば今、寝ているユアンが出来るということになってしまう。


 よってマオの返答は―


「友に聞いた」


「友達?」


「あぁ、戦っている途中に念話を使い、あの状況から脱却する方法を聞きだした」


 事実、動かなかったのは念話をしていたからと言えば、苦しいが理屈は通るだろうと予測し、返答する。


「その友達はあの場面を見ずに、魔法の種類を当て、なおかつ解決方法を導き、魔法の想像を明確に伝え、さらに反撃方法まで教えてくれたって言うの?相当な実力の持ち主ね」


「・・・はは、はは」


 頬がヒクつくのを抑え、微笑を返す。

 彼女が納得したかどうかは置いとくことにし、今度はこちらが質問する。


「君は王都から来たんだろうか」


 マオが初めにユアンが敵いそうにない者に目星をつけた時、この少女も含まれていた。


「どうしてそう思うの?」


「僕じゃ勝てないって思ったから」


 マオではなくユアンだが。


「王都ってどんなとこだろうか?僕は王都に行きたいから知りたいと思う」


「王都ねぇ・・・「・・・んぁ?ふぁああああ」」


 彼女の返答を聞く前に少年が目を覚ましたようだ。

 

(仕方ない、興味があったが今回は見送るとしよう)


 そう思い、彼が目を覚ましたことで喧しくなるのだろうなとも思うマオなのだった。



4話目~


今日はこれで終わりかな?


ルークとクインに対してのもっと踏み込んだ会話はまだ先です


次はちょっとシーナちゃんの幕間挟む予定


それで前から出てる露骨な伏線を回収した後、過去その二と魔王領の現状と言う幕間書く予定


何時も言ってるけど予定は予定だから!!

期待しないでね


ではでは


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