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第二幕

戦闘描写むっず






 ルークは焦っていた。

 周囲の連中と同じように見ていたあいつは今、目の前でこちらを睨みながら立っている(・・・・・)

 ルーク自身も傷や痣があるが、奴はそれ以上に傷がある。

 それでも立ち上がり、何度も挑んでくる様子に恐怖を覚えるほどだ。


―何がそうさせる?

―倒れてくれ、頼むから・・・


 動揺がルークの動きを鈍らせる。

 振り抜かれた拳はルークの頬に直撃した。

 しかし、重さが無く軽く倒れこむほどの威力しかない。


 教員はまだ止めない。

 他の生徒の時はこんなにもしていなかったというのに・・・。

 

 事実、教員達は二人の実力を正確に測るため、どちらかが負けを認めるまで見守るつもりであった。

 そんな教師やこの程度の試験で間誤付いている自分に腹が立ち、イライラが納まらない。


「てめぇ・・・!うざってぇな!!そんなにぶっ飛ばされてぇならそうしてやるよ!!」


 イラつきが爆発し、魔法を発動する。


「『穿つ我が暴風』」


 ルークが言葉を発したその直後、建物内だというのに風が吹き荒れ、砂埃を撒き上げる。

 急速に纏められた空気の塊はルークが持つ槍の先に集束し、魔法が完成した。


「うっっらぁぁぁ!!!」


 ユアンにはもう槍の穂先など見えぬほどの体力しか残ってはいなかった。

 

「ルーク!!!だめ!!!!」


 クインの声も風に掻き消され、ルークには届かない。

 立っているのがやっとの状態のユアンに突き出された槍は胸部へと吸い込まれていく。

 

 教職員もこれは危険だと判断したのか防御魔法の展開をし始めるが遅い。

 クインも防御魔法をユアンの前に出そうとするが間に合わないと確信する。


「だめぇえええええ!!!!!」


 悲痛な叫びが訓練場に木霊した。



 ユアンは腹部を擦りながら立ち上がってみせる。


『大丈夫か?』

(たぶん、平気)


 まだ上手く治癒魔法を扱えないユアンは我慢するしかない。

 相手の少年が魔法を使えるとは予想外であったが、実際自分も使えているのでそう珍しくも無いのかな。

 そんな思いを持ちながら少年に目を向ける。

 

―まだ闘志は折れてない


 気合を入れるために頬を軽く叩き、甲高い音が周囲に響く。


「『砂上の夢』」


 精霊に想像を汲み取ってもらい、未完成ながらも幻影魔法の行使に成功する。

 ユアンの姿が砂上に浮かぶ陽炎のようにユラユラと揺れ始め、二重に見えるようになった。


「ちっ」


 いろんな意味の込められた舌打ちを少年がする。

 

 そこからは殴打や魔法の応酬であった。

 魔法によって強化された互いの一撃は掠るだけでも相手に傷を負わせ、攻撃魔法を発動すれば二人とも避け、その霧散した魔法の残滓が二人の体に痣を作る。

 

 新入生とは思えない高度な戦闘に教職員は目を見張り、同級生は食い入るように見つめている。

 

 しかし、経験値の差だろうか、徐々にユアンの動きが鈍くなり、被弾回数も増えていく。

 実力が拮抗している為、一度開いた差は縮まることなく、体力の無いユアンと少年の差は開く一方だ。

 

 少年にも負けられない理由があり、ユアンもまた勝ちたい理由があった。


(これで負けたら・・・マオに顔向けできない!!!)


 友に教えて貰ったこの技術で初戦は勝利を飾りたいと思うのは仕方の無いことだろう。

 しかし、体力の限界を超えて戦った代償は大きかった。

 ユアンの手足は言うことを聞かないほど疲弊している。


 急速に集まり出した空気―魔力の塊は少年の槍の先を覆った。


「うっっらぁぁぁ!!!」


 突き出された穂先がユアンには妙にゆっくりに見えた。

 どこからか聞こえる少女の声は悲しみが宿っており、それが死の足音にも聞こえ始める。


(あぁ、負けちゃった・・・。ごめん、マオ・・・。勝てなかったよ・・・)


 心の中で親友に謝罪の言葉を紡ぐ。


『後は任せるがいい』


 意識が遠のく際、ユアンはそんな言葉を聞いた気がした。



 突き出された魔法は貫通力を高めるために外魔力を練り上げた物だ。

 しかし、感情の昂ぶりから練りが甘く、精霊に頼り切った結果、想像の欠陥が垣間見える。


「故に――止められる」


 人差し指を穂先に突き出し、魔力を練り上げる。

 衝突の瞬間、ぶつかり合った魔法同士が打ち消し合い、爆風を周囲に撒き散らした。


 砂埃が周囲に舞った為、この現実を見ているのは少年とユアンの代わりに外に出たマオだけであった。

 外に出たことによって髪色と瞳の色が変わり始める。

 同郷の者が反応を示すかどうか周囲伺うがその様子は無く、目の前の驚き固まっている少年に視線を返す。


 髪の根元が徐々に黒くなり始め、目の端から赤さが侵食し始める。

 完全に色が変わる前に決着を付けることにした。


「『風の砲弾』」


 死なないようにと思いながら手加減を施し、魔法を発動する。

 それは風ではなく嵐の塊に見え、それを制御するのにどれだけ高度な技術が必要なのか見るものが見れば分かるだろう。

 しかし今この瞬間、一瞬の魔法の発動を見れたものは少年のみだ。


「受け取れ」


 にやりと笑い、打ち出した魔法は少年に衝撃を与えた。


「がはっ・・・!!!」


 少年は場外に吹き飛ばされ、螺旋を描き、壁にぶち当たりようやく止まる。

 意識を失っておりぐったりとしているようだ。

 

「こんなもんだろう」


 そういいマオも体の主導権を戻し、意識を中に移動させたのだった。


 砂埃が消え去った後、周囲の人間が見た光景は倒れこむユアンと何らかの事象で場外まで弾かれた少年の姿。

 何が起こったのか理解できたものはいない。

三話目~

次、書けるかわかんないので~

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