少年 ルーク
次は戦うといったな・・・あれは幻影だ
ごめんなさい
別視点書きたかったんだ
長ったらしい学園長の話が終わり、周囲の連中は疲れた顔を隠そうともせず、教師の言葉を聞き座りだす。
そんな連中と一緒になりたく無いが為に、俺は少し離れた場所で壁に寄りかかり目を瞑った。
学園長の話に関する雑談を周りの奴等はしているが、そこに混ざりたいと思わないし、さらに言えばかかわりたいとも思わない。
(俺はこんな奴等とは違うんだ。絶対に王都に戻ってやる)
初めに目を瞑り周囲を拒絶したせいか、周りの奴等はこちらに寄ってくる気配も無い。
それでいいと思いながら目を開き、周囲の様子を伺う。
雑談に興じる者、教員の話に不安を感じる者、さまざま居るが一人目に付くものが居た。
(あいつは・・・)
座っている者の中に一人ぽつんと足を揉み解している奴がいる。
そいつは学園長の話が始まって半刻も経たない内に、足をプルプルさせていた奴だった。
(よし、あいつの事はプルプル野郎と呼ぶことにしよう)
勝手にあだ名を付け、そのあだ名に満足し頷いていると嫌な奴が寄ってきた。
「ルーク、何見てんの?」
「何でもいいだろ、別に」
ぶっきらぼうに返事する。
俺に話しかけてくる奴は一人しか浮かばない。
「いいのかなぁ~?お姉ちゃんにそんな口の聞き方してぇ~」
「うるせぇ、大体双子なんだから姉も弟もあるかよ。クインこそ何か興味を引く奴でもいたのかよ」
「ん~、そこにいる美少年が気になるかなぁ」
そういうクインの視線の先にはプルプル野郎がいた。
「ふん、軟弱な奴だ」
「顔では負けてるけどねぇ~」
「うっせ」
相変わらずちくちくと鬱陶しい奴だ。
そう思いながらも邪険に出来ないのは兄妹だからだろうか。
兄妹―その言葉を思い出したとき、クインに対する憎悪が膨れ上がる。
―なぜ俺だけが・・・
―双子のこいつは何とも無いのに・・・
負の感情を表に出さないように心の底に封じ込める。
時折顔を覗かせるその感情を自覚してしまうと自分を嫌悪。
いつもの繰り返しだ。
「どうしたの?」
心の葛藤を知らないこいつはいつも通り話しかけてくる。
声を荒らげそうになるのを必死で押さえ、ほかの話題を探す。
「・・・どうしてついて来た。お前は落ちないでよかったはずだ」
座学、魔法適正、実践演習、全部優秀なクインを王都の学園が手放したとは思えない。
大体の理由は予想つくが。
「お父様の命令だもん」
(やっぱりそうか)
クソ親父の顔が思い浮かび、苦々しい表情をする。
「後はルークが心配だからかな?」
「何だそれ」
「だって目を離すと何しでかすか分からないじゃない」
「余計なお世話だ」
お節介な奴だ、そう思いながらもどこか安心するのは兄妹だからか・・・、ちっ。
◇
実力試験は子供のお遊びに毛が生えたような者ばかりだった。
剣も碌に振れず、剣に振られている奴等は相手にならないと思う。
実際、俺はある事以外なら優秀な成績を収めていたはずだ。
こんな所に落ちている事なんて無かったはずなのに。
そう思うと教師のあの言葉が蘇って来る。
『戦場において君のように一つの精霊から”しか”愛されてないのは使えぬ存在なんだ。悪いことは言わないすぐに別の道を探すといい』
「ちっ」
別の道なんてあるもんか。
家の家系のこと知っているくせに、あんなことを言う教師を、クソ親父を俺はきっと見返す。
そう決めたんだ、誓ったんだ。
「二十七番、上に登りなさい」
少しばかり考えすぎたのか、自分の番が来た。
武器は手に馴染むまで使い倒した事のある槍。
慣れた手つきでブンと一振り、風切り音が鳴る。
俺はそれに満足し、中央に向かう。
相手が誰であろうと俺の進む道を邪魔させはしない。
全部倒して王都に戻る。
そして親父の顔をぶん殴ってやる。
ルークは熱き意思を胸に戦いに挑む。
このとき、ルークは相手の顔を見てはいなかった。
次こそ戦うから許して!!




