換算
寝落ちしたし・・・
マオはユアンの身体と過去の身体との相違点を確認し終え、森の魔物を換金するために町に戻る。
結局、牛鬼以上の獲物は発見できず、マオの後ろには彼の魔法によって浮かせられた魔物の死骸が浮いている。
何でも入る鞄や空間を捻じ曲げる魔法で運ぶことはできない。
それは神話や物語の中だけであって、今は現実には存在しないのだ。
それを残念に思いながら町に向かうこと半刻、ようやくコロギが見え始める。
夕日に照らされ始めたこの時間帯にも列があるが昼間ほどではなく、すぐに入れるように感じる。
マオが近づくと周囲がざわりと騒がしくなった。
誰も彼もがマオの後ろの死骸に目を向けている。
女性の中にはマオの容姿に見惚れている者も居るが。
(それほど珍しい物でもないだろうに)
牛鬼程度、そこそこの冒険者なら軽く倒せるだろうと思っているマオは後ろの魔獣の価値に気が付いておらず、何か珍しい素材でもあるのかと探るが分からずじまいだった。
今、もし悪徳商人が声を掛ければマオは必ず騙されていただろう。
どちらにとって幸運か分からないが、そのようなことは無く、自分の番に回ってきた為、冒険者登録証を提示する。
「大量ですね。なかなか牛鬼まで倒せる冒険者の方はいませんよ?」
話してきた衛兵にこいつは何を言っているんだ、と訝しげな視線を向ける。
「そうでもないだろう」
「謙虚ですな」
彼はきっと衛兵だから魔獣を知らないのだろうと勝手に思いこみ町の中に入る。
まだ人で賑わいを見せる一番通りを抜け、冒険者組合のある北四番通りまで来る。
その間も唖然とした表情の人々を見たが、相変わらず理由が分からず終いのマオは自分の正体がばれたのかと組合に着くまでひやひやしていた。
夕方の冒険者組合は依頼や狩り帰りの冒険者で混雑していた。
誰もが齷齪する中、組合に入ってきた男に視線が集まる。
その容姿が目立つことも要因だが、彼の言葉に一様に動きを止めた。
「外に魔獣の死骸がある。解体せずに持ってきたから手伝いが欲しい」
「解体せず・・・?」
誰かが言ったこの言葉で周囲の視線を集めた原因が分かる。
本来、冒険者が魔獣を狩れば解体し皮袋などに詰めて帰ってくるのだ。
もし大きいため皮袋に入らないのであればいい素材だけ持ち帰り、他は捨て置く。
もしくは事前に狙う魔物が大きいと分かっていれば、馬車を借り乗せて帰ってくる。
それでも重量の問題で解体はするが。
「ああ、面倒だったのでな。換金を頼む。解体料はそこから引いてくれ」
彼の言葉が真実かどうか職員の一人が見に行き、戻ってきた職員が正式な依頼として受理したことでそのことが証明された。
その中に牛鬼がいたことで更に騒然としたが、興味がないマオは早くしろとばかりにコツコツと足を鳴らす。
解体は組合に併設されている倉庫の一部で行われた。
素材の在庫置き場で中は獣の匂いで充満していたが、マオは戦場で人の肉片や焼け焦げた匂いを知っているため何ら問題にならない。
十数人の冒険者で取り掛かったにも関わらず、数刻を要した解体は日を跨ぐ事無く終了を告げる。
「すみませんが換算に時間が掛かるので明日また来てはいただけませんか?」
「すまないが明日は用事があって来れんのだ。いつまでも待つので終わらせてはもらえないか?」
努力しますと言う返事を聞き、目を閉じユアンの存在を確認する。
(・・・まだ眠っているようだな)
起きていれば文句を言われること間違いないので、寝ていることに安心する。
結局、日は跨いでしまったが換算が終了し、小袋を渡された。
中には黄金の輝きが詰まっており、マオは驚きの表情を我慢する。
「えっと、金貨三十枚、銀貨八枚、銅貨九枚ですね。解体料はもう引いてあるのでそのままで大丈夫です」
「多くないか?」
「適正価格です。牛鬼、豚鬼、毒針蜂、三枚舌蛙など結構な数でしたので時間が掛かってしまいましたよ」
渡された重みをしっかり感じ、ようやく平人の強さに下方修正を掛ける。
(よくもまぁ平人はこのような強さで俺に挑んできたものだ)
過去の記憶を思い出し、呆れるマオは用事は済んだとばかりに組合を出る。
外に出る頃には満天の星空がマオを迎える。
明日はユアンと町の散策だ。
平人はどんな料理を作るのだろう。
どんな道具を作るのだろう。
どんな楽しみが待っているのか。
マオは久しく忘れていた好奇心を感じながら宿に向かうのだった。
今日はここまで
マオさん・・・
オカンじゃないっすかね!!
書いてて、あれ?セラよりもオカン感が出てるって思いました
マオの一人称はわざとですよ?
心の中では俺
対外的には私もしくは我
そんな感じで行ってます
ではでは




