魔王的転生
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ではどうぞ
魔王、それは魔の者を統べる王。
圧倒的な力を持ち、王者として君臨するもの。
魔王は力によって選定される。
魔王になる方法は二つ。
魔の王を殺した英雄(人間)を殺すこと、そしてその時代の魔王を殺すことである。
先代の王を齢百五十にして殺した魔人がいた。
その若き王は魔の大陸に七千年もの安寧をもたらし、過去に類をみない勢いで魔王という地位を確立していった。
力だけでなく知識、統率力、魔力、礼儀作法、誰もが認めるほどだったという。
七千と五百年が経ったとき、その歴代最強と謳われた王はある日、殺された。
誰もが始めは信じなかった、だが魔王の亡骸が城門の前に晒された時、多くの魔人が悲しみを覚え、その死を悼んだ。
これは魔の大陸では老若男女誰しもが知る歴史である。
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「ここは・・・?」
気づいたとき世界は白かった。
壁もなく天井もなく地面もなく空もない。
平人も魔人も子供も大人もいない、そんな世界。
「死んだのだったな・・・。エンヴィよ、頑張れ。お前ならきっといい国が創れる」
恨む気持ちはない、それが宿命なのだから。
それよりか感謝の気持ちさえある。
近頃は英雄に近しい、つまり英雄の卵というべき存在が産まれず、国の改革などもほぼ理想通りになって暇を持て余していた。
もう引退しようかと思っていたところにあのエンヴィの裏切り。
「くくくっ、なかなかよかったぞ。最後が部下の裏切り、生涯の幕切れには最高じゃないか」
七千年完璧に国を治め、自分で言うのもあれだが部下にも民にも慕われていた王が、信頼していた部下による裏切り、これが面白くないわけがない。
「くくくっ・・・わははははははははっ」
一頻り笑った後、冷静になる。
なぜ自分は今を感じることができる?
死んだはずの自分がなぜ?
死んで生き返ったものはいない。
それは世界の理、魔法で死者の肉体だけ生き返らすことはできる。
だが、そこに精神、記憶、魔力、意思はない。
抜け殻の誕生である。
これは魔族、人間どちらでもいえることだ。
ではなぜ今自分に意思がある?
―なぜ・・・・・・?
「私がお答えしましょう」
それは唐突に聞こえた。
白い世界に小さな光、それは淡い青。
その光は徐々に大きくなりそしてひとりの女性が現れた。
その女は白い装束を纏い、優しげな表情を浮かべていた。
まるでこの白の世界を具現化したような印象を受ける。
「何者だ?いや、『平人』風情が何のようだ?」
そう、彼女は平人の見た目そのものだった。
「私は平人ではありません、平人の見た目が私の好みだったのでこの姿にしました。不愉快でしたか?ではこの姿でどうでしょう」
そういって彼女がくるりと回るとそこには魔人がいた。
「ほう」
面影は残しながらも姿は悪魔のごとく真っ黒な羽根、立派な角まで付けてある。
「では問い直そう、何者だ?そして何のようだ?」
彼女はやわらかく微笑みそしてこう告げた。
「あなたの問いにお答えます。私は輪廻の神、ここは輪廻の間。先ほどの質問ですが、輪廻の間は意思だけ召還する間、意思だけをここに呼び寄せました。そしてあなたには理に従って転生していただきます。本当は記憶も魔力も知識もすべて違うものになるのですが、あなたの魔力は例の剣によって私には干渉できないほど大きなものとなっています」
「ふむ」
冷静にその話を聞く、魔王は優秀である。
ゆえにこの女が嘘をついているかどうかをすべての状況を考慮し嘘はないと判断する。
この世界を見たことがない、女の存在が掴めないなどを含めた結果の返答であった。
「あなたには輪廻により転生をしてもらいます。先も言った通りあなたの魔力は輪廻の神である私の力を大きく超えています。私が変えられるのは限られていますので、あなたの種族を変えることにいたしました」
「かまわん。俺も選り好みするつもりは毛頭ない、早くしろ」
「そうですか。では次の種族をお楽しみください」
そうして、大きな光に魔王は包まれた。
そのときの王の顔は少年のように輝く笑みをしていた。
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