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コロギにて

胃が痛てぇ・・・





「うわ~!!」


 次の日の朝、太陽が昇り始めてから一刻ほど経った頃、ギーゴとユアンの姿はコロギ目前へと近づいていた。

 小さく見えるコロギの町は壁に囲まれており中の様子は見えないがそれでも初めての町ということもあり、ユアンは感嘆の声を漏らす。


「ん?あの人の列はなんだろう?」


 街に入るための門前に長い行列が二列出来ている。

 ユアンの疑問に答えたのは同行者のギーゴであった。


「ユアン君、あれは町に入るために並んでいるんだよ」

「入るため?」

「そう。コロギだけじゃなく大きな街に入るためには立ち入り許可書が必要なんだ。それを持っているか、持っていなければお金を払って入るんだ」


 その言葉を聞いたユアンは鞄の中を覗き、許可書の有無を確かめる。


「どうしよう、許可書が無い!!」


 両親が入れているのではないかと思ったが、それらしき物は見当たらずギーゴに助けを求める。


「大丈夫だよ。学園の入学者は学生証が許可書代わりになっていて、後で提示すればいいから」


 ほっと息を吐き安心する、と同時にマオはどうなんだろうと誰にも聞けない疑問を抱くのであった。



 そうこうしているうちに行列の最後尾に並ぶ。

 学園目的の少年少女や少数であるがギーゴのような商人、魔獣を狩ってきたと見られる屈強な冒険者などさまざまな人々が並んでいる。

 二列のうち右は金銭で中に入る者、もう一方は許可書のある者、もしくは学生になる為の人たちと分かれている。

 ギーゴとユアンは左側に並んだ。


「ん~、やっぱりこの時期は混んでるね。学園の式に間に合うように来たのだろう」


 ギーゴは慣れた様子で見回し、混雑している原因を予測する。


「普段はね、こちら側は並ぶことが無いんだ」


 ギーゴによれば普段の東門(ユアン達が居る側)は、ケルト村などに向かう少数の商人や魔獣を求める冒険者などが利用するだけで出入りが少なく、衛兵も少ないらしい。

 それに対して西門はコロギに出入りする商人、冒険者、西側の村人など人の出入りが激しく衛兵も東門に比べ数倍は多いとの事であった。


「近くで見る門は大きいね」

「ははっ、西門はこれよりもっと大きいよ。王都に行くときに振り返ってみるといいよ」

「うん」


 他愛の無い会話を楽しんでいると徐々に列が進み、半刻程経つ頃には目の前に門が迫っていた。


「許可書はあるか?」

「私の分はありますがこの子の分は無いです。入学希望者なので後で提示しますよ」

「保証人はあなたでよろしいか?」

「はい」


 衛兵の問いにギーゴが慣れた様子で手続きを済ませてしまう。

 保証人とはもしユアンが提示しに来ない場合、彼が代わりに罰を受ける制度である。


「いいの?」

「大丈夫ですよ。手続きを済ませばいいだけですからね」


 そういい馬車を前に進ませる。

衛兵は大きな門を開けるのではなく下に小さな扉を開けた。

 大きな門は上流階級の人間や小さな扉では入らないような獲物や木材を入れるための物らしくユアンはちょっぴり残念に思ったのだった。



「わぁ~~~~~!!!!」


 町の中は人で溢れ返っている。

 屋台の店主は大声で肉串を掲げ客を呼び込み、主婦らしき人は野菜を売る店主に値切りの要求をし、吟遊詩人は御捻りを貰うため琴を弾き唄う。

 ユアンが感動するのも無理は無いだろう。

 生まれてこの方穏やかなケルト村が世界の全てだったユアンにとって、この光景は衝撃的で感動的な様子であった。


「ほら行きますよ」


 ギーゴにそう言われなければじっと立ち続け、後ろの邪魔になったであろう。

 それほど驚きを感じた景色であった。


「ユアン君はこれからどうするんですか?私はとりあえず商品の補充に馬の手入れ、やることがたくさんあるのでユアン君には付き合うことが出来ないのですが・・・」

「うん、まずは・・・っ!!」

「大丈夫かい!?」


 邪魔にならないように道の端に寄りこれからの予定を決める事にしたその時、ユアンの身体がクラリと揺れる。


「はは・・・、ちょっと休憩するために宿を取ることにするよ・・・」


 慌ててギーゴはユアンを担ぎ、彼がよく利用する宿に向かうことにするのだった。



 宿の名前は『果実の甘味』という宿だった。

 女将さんがギーゴと知り合いだったためか、すぐに部屋を取ることができ、階段を上る。

 その間、ユアンはずっと青い顔をしており、すぐにでも寝かせないと不味い状態であった。


『辛いだろう。代わって寝ていろ』

(でも・・・)

『初めての野宿に精神的にも体力的にもギリギリなのだろう。安心しろ、代わっても無茶はしない』

(ありがとう、マオ)


 部屋に行く間に二人は入れ替わる。

 もちろん、代わる時に髪色と眼の色が変わるので魔法でユアンの色に戻す。

 その魔法は周囲の人間に気づかれないほどの早業で構築し発動してしまう。


「つきましたよ。何かあれば女将さんに言えば大丈夫だと思います。私に用事がある時は、女将さんに頼めば居場所を教えてくれると思います。ゆっくり休んで下さいね」

「はい、ありがとうございます」


 そこは簡素な造りの部屋だった。

 ベッド、鍵付きの道具入れ、机と椅子が一つずつあり、明かりになるような蝋燭は無かった。

 窓は表通りに面しており下には屋台や露店見える。


 ギーゴはすぐに寝かしたほうがいいと判断したのか、扉を開け部屋を出ようとした。


「一つ聞きたいことがあるんです」


 しかしそれをマオが止める。


「何でしょう?」

「今・・・、幸せですか?両親の屍を越えて歩けていますか?」


 それはユアンが不用意に聞いた話の続きであった。


「もちろんです。妻も娘もでき、彼女らの笑顔を見た時、最も幸せを感じます」

「そうですか。ありがとうございます」


 感謝を伝え、そこで別れた。


(まぁ、これでユアンに伝えたら安心するだろう)


 そう思い、窓の外を眺める。


「身体は少しだるいが町や周囲を探索するとしようか」


 明日になればユアンは町に繰り出すだろう。

 そう思い、許可書を探すときに見た鞄の中の金銭が心許ない事を思い出したマオは、金策のため外に出ることにするのだった。

まだまだ先ですがゴールデンウィークにそれまで投稿している話の一斉に修正します

それまで待ってくだせぇ


あと今更ですがツイッターやってます

しょうもないことと更新通知ぐらいしか呟いてないのであまり重要ではないのですが物好きな方はフォローどうぞお願いします。


バレンタインSSは日曜の更新のあとがきにでも書こうかなと思っています


ではでは

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