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出発

今日、幕間投稿してますよ






 ユアンの行動は早かった。

 丁度学園の式はもうすぐである事をアレンに聞いたユアンはすぐに出発をすることを決める。

 マオに聞きながら必要なものを鞄に詰めていく。


「これいるかな?」

『いらん』

「これは?」

『いらん!』

「これ」

『いらん!!』

「こ」

『いらんわ!!!』


 必要ないものを入れたがるユアンをマオが押し止め、準備は着々と進んで行き、すぐに出発の日となってしまった。



 村の入り口には小さな人だかりが出来ていた。

 初めはセラとアレンだけだったのがガットにシーナ、次にダナやその旦那のミルド、産婆のオババに神官様。

 その集まりを見たこの村の住人が次々とやってきて最終的には村総出の送り出しとなっていた。


「ユアン、商人さんの言う事をよく聞くんだよ?無茶はダメだからね」

「そうだぞ。母さんの言うとおりだ。無茶する前に逃げることを覚えるんだ、かっこ悪いとかそんな見栄なんかよりよっぽど命のほうが大事だからな」


 商人というのは今回『コロギ』まで一緒に行く人でギーゴさんという。

 彼はケルト村出身でこの村に来る唯一の商人である。

 偶々この村に来ていたのでアレンとセラがお願いをしたらしい。


「うん。無茶しないよ」


 それでも心配なのか不安な表情を見せるアレンとセラ。

 ユアンも不安であるが期待のほうが大きい。

 未知の世界がこの先に待っているのだ。

 マオも居ることによって不安はどんどん小さくなっていく。


「ほら、途中で食べな。お腹空くだろう?」


 そういってダナが手渡すのは大きなパンにハム、チーズ、野菜を挟んだダナのお店でもちょっとお高めのパンであった。

 ダナを皮切りにいつも蜂蜜をくれるおばさんに噴水の前で談笑する婦人達が餞別として食べ物を手渡していく。


「これもじゃ」


 マオに産婆をしてくれたオババである事を聞いたユアンは包みの中を見る。


「これは?」


 それは薬一式であった。

 傷薬に毒消し、化膿止めに風邪薬、熱冷ましまで入っている。


「わしが調合した薬じゃ。金に困ったら売るといい、それなりの金額になる筈じゃ。もちろん使うことをお勧めするがのぅ」

「ありがとう、オババ」


 感謝を伝えるとすぐ次の人がやってくる。


「私は物を送ることは出来ませんがせめて祈りだけでも・・・。親愛なる主よ、この者に安寧と祝福を。」


 神官様が祝詞をささげ、祈ってくれる。

 その様子に少し見惚れていると耳を引っ張られる。


「痛いよ、シーナちゃん」

「むぅ~」


若干ご立腹な様子のシーナはその表情を緩め、キリッとした表情に変え決意を示す。


「ユアン、私待てるほど大人じゃないから。学園の年齢制限は十三だって聞いたよ。来年私も行くから、・・・絶対に行くから。追いついて一緒に旅、付いて行く」


 その言葉は誰にも頑として譲らない決意が見えた。


「分かった、待ってる」


 そう答えたところで不意に暖かいものが頬に触れる。


「これが私からの餞別」


 頬を染めた彼女はとても可愛らしく、潤んだ瞳をして微笑を浮かべていた。

 後ろでガットが歯軋りをしながらユアンを睨みつけ、こちらに来ようとしているのをアレンに止められているのは愛嬌であろう。


「坊ちゃん、準備が出来ましたかい?」


 ギーゴが呼びに来たところで別れの挨拶は終わりを告げた。

 両親から手紙を受け取り大声で叫ぶ。


「行って来ます!!」


 新たな世界へとユアンは旅立つ。

 芯を持った決意を胸に秘め、愛する家族を残し、友と夢を追うことに決めた。

 その先に何が待ち受けているのか彼はまだ知らず期待と希望に満ちた表情で馬車に乗り込んだのだった。



出来れば後一話

ぐぬぬ

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