残される者
短めです
初めシーナ
◇以下はアレン(ユアンの父)視点で書いてみました
「村を出ようと思うんだ」
その言葉を聞いた私の目の前は真っ暗になった。
村を出るというのは聞いていたけどまだ時間はあると思っていた。
彼が成人するまではここに居てくれると思っていたのに。
それは私の願望で現実はいつも残酷に事を告げてくる。
「・・・まだ成人前じゃない。あと三年は居ても良いじゃない・・・」
「ごめん、待てないんだ。どうしても我慢が出来そうにない」
「・・・」
眉の下がった申し訳なさそうな表情が何も言わせてくれない。
あと少しだけ待ってよ。
そう言いたいけれど彼の瞳に宿る決意は固く見える。
沈黙が私と彼を包む。
彼との思い出が頭の中でぐるぐると回る。
一緒に魔法を勉強したこと、本を読んだこと、覚えた魔法でお父さんに悪戯をしたこと、いじめっ子達に仕返しをしたこと。
思い出す度、心を暖かくしてくれたそれらは涙となって零れ落ちる。
そして思うのだ。
あぁ、私はこの人がとても愛しいのだと。
自覚するのが遅かった。
もう少し早く知っていれば告げられたかな?
私は臆病者だからやっぱり無理だったかな?
その思いもやっぱり悲しくて、涙が止め処なく溢れる。
「泣かないでよ・・・。また戻ってくるから・・・」
彼は庇ってくれた時の様にやっぱり優しくて私を抱きしめてくれる。
暖かい。
その暖かさを手放さないように私はどうすればいいのだろう。
その夜、私は温もりを抱いたまま解決策を考えながら眠ったのだった。
◇
腕の中の妻は家の中に響かぬよう声を押し殺し泣いている。
他の男が彼女を泣かしたのなら問答無用で葬っているところだが事実は違う。
息子は大人への階段を上り始めたのだ。
親離れ。
いつかは来ると覚悟していたけれど思った以上にきつかった。
「・・・あの子は身体が弱いのに」
我が子は幼い時から身体が弱い。
発熱も頭痛も気だるくなる症状だって持っている。
「自分で決めた道だ。親がとやかく言う事はないよ」
彼女を励ますつもりが言葉の節々が震え説得力の欠片もない。
「学園に行けば色んな事を学んで生存率も上がるし、王都に行けばあいつらだって居る。冒険の一から十まで叩き込んでくれるだろう」
「・・・」
「大丈夫さ、きっと。自慢の息子だからね」
彼女をぎゅっと抱きしめ、頬に流れる水を隠すようにぎゅっとぎゅっと。
その日は彼女のくぐもった泣き声を聞きながら眠ることになった。
就寝時に息子へと送る言葉を考えた。
この先きっと辛いこともあるだろう。
それを乗り越えて行けると信じている。
だから父さんや母さんからはこの言葉を送りたいと思う。
「頑張れ」
と。
三人称視点に拘るつもりは無いのです
ちょっと一人称書きやすいなぁなんて思っていません・・・よ?
これからも主人公視点で書きたいとか思っていません・・・
まぁあまり視点をころころ変えるのは好ましくないかと思うので出来得る限りこのままで。
一人称ってなろうで多いような気がします。
短くてすいません
ではでは




