決意
精霊が外魔力を扱う
このような趣旨の一文を前話加筆しました。
それとシーナの年齢を七歳にし、ユアンとの年齢差をおおよそ一歳にしました。
ユアンが十三歳になる頃にはマオはある確信を抱いていた。
ユアンは勇者の卵であると。
魔王の魂が勇者の身体に、そして勇者と敵対するわけでもなく、同じ夢を語り合う友となっているのだ。
不思議な運命である。
マオにユアンが勇者であると確信させた理由として上げられるのはいくつかあった。
まず、精霊に愛されすぎていること。
精霊と仲良くなるためにさまざまなことを行ってきたが異常なほど愛され、祝福を受けていた。
比較対象が居たのは僥倖だろう。
シーナに比べて精霊達の想像に対する理解度が断然違う。
行使したい魔法の想像が不十分であっても精霊が補うというある種、イカサマじみたことが行われているのをマオは感じ取っていた。
若干であるがユアンによってシーナにも恩恵があったのだろう。
ユアンの横で同じ事を行っていたためか精霊達の間でシーナに対する仲間意識が早く感じられたことも理由の一端となっている。
二つ目として上げられるのは魔法や武術などの習熟度合いが早過ぎる。
マオの教え方が良いというのもあるのかも知れないがそれにしても理解する早さが異常である。
文字など他の分野でも天才的な能力を発揮していた。
こちらはマオが勝手に本を読み漁っている記憶が残っていたからかもしれないが。
最後にもう一つある。
勇者にとってよく持ち合わせている事象。
運の強さ。
これもまた異常であった。
偶然が必然に変わる瞬間を間近で見たマオはただただ笑うしかないと心の中で思ったほどである。
◇
ある日、陽光照らす大地が朝露のきらめきを持って返事をする。
太陽の輝きはユアンのこれからを祝福しているように感じられる。
その日、ユアンは決意を持って両親の前へと向かう。
シーナには昨日伝えた。
ひどく泣いていた彼女の顔を思い浮かべると決意が揺らぎそうになるのをグッと堪え前へと進む。
反対されるかもしれないと思いながらも、この身を焦がすほどの衝動はたとえ両親といえども止める事は出来ない。
ユアンは決めていた。
十三歳になればこの村を出て冒険者になり、七つの異観を網羅する夢をかなえると。
ここ数年で背が伸びたユアンはアレンの精悍な顔立ちにセラの優しげな髪色と瞳を持つ美少年へと成長していた。
トントンと料理をするセラ、その近くで警備で使うであろう長剣を手入れするアレン。
近づくと二人とも穏やかな表情でユアンを迎える。
「おはよう、ユアン」
「もうすぐ朝食が出来るから待っててね」
この変わらぬ愛に満ち溢れた日常に身を沈めてしまいたいと考えてしまうほどに安心感を与えてくれるこの場所をユアンは手放すのだ。
誰の意思でもなく自分の意思で。
「父さん、母さん。ご飯食べ終わったら話があるんだ。いいかな?」
神妙な面持ちで話すユアンに何かを感じ取った二人は頷く。
食事はごくごくありふれた物でパンにミルク、サラダに卵。
それらを食べ終えるのに四半刻も掛からない。
「それで?話ってなんだい?」
セラは食器を洗いながら聞くつもりなのだろう。
後ろを向きながらこちらに耳を傾けている。
「僕はこの村を出ようと思う」
遠回しに言うことなくそのまま伝えた。
セラの手が一瞬止まったことには気が付かずそのまま話を続ける。
「僕の夢は七つの異観を見つけること。冒険者になって世界を見たいんだ」
「・・・」
返事はない。
だけども伝えるべきことは伝えた。
じっとユアンの目を見つめるアレン。
そこに言葉はなくただ時間が過ぎていく。
水の流れる音が妙に鮮明に聞こえる。
緊張を孕んだその空間はふっと緩んだ。
「・・・そうか。そうか~、そっかそっか。ユアンもそんな歳になったか~」
ア レンは自分に納得させるために何度も頷き、何とか飲み込んで見せた。
「わかってはいたんだよ。血は争えないっていうしなぁ。ユアンが書庫に出入りしているのも知っていたし」
「知ってたんだ・・・」
「俺とセラももともと冒険者だったんだよ」
驚愕の事実であった。
よくよく考えれば分かることで警備の仕事をするだけでは付かないような肉体。
辺境ではありえないほどの治癒魔法の使い手。
「あの書庫の本は全部冒険者時代に仲間から貰ったり買ったりしたもんだ。だから冒険や英雄譚なんかが多かったはずだ。それを見たら男なら目指すよな冒険者」
確かにとそう考えれば冒険に役立つ魔法書や野営の仕方、槍の英雄グリフィルなんて冒険譚もあったと思う。
「よし分かった。行って来い!!息子の夢を応援できん親なんぞおらん!!」
「やった!!」
「ただ条件がある」
喜びも束の間。
条件とやらがあるらしくそれを達成できねば帰ってこいとの事であった。
「ここから三日ほど西に行くと『コロギ』という結構大きな町がある。そこの学園に入ることがまず一つ目の条件だ。」
「うん」
「二つ目はその学園には特殊な制度があってそれを使えば王都の学園にいける。それを使って王都の学園に行くこと。三つ目は王都に着けば、冒険者組合に顔を出して『精霊の泉』という団に手紙を渡すこと。手紙はまた今度書いておくからな。四つ目はちゃんと生きてるって手紙でも何でも良いから知らせること。以上だ」
意外と条件が多く意味の分からない物も含まれていたがそれでもユアンは冒険を許してくれた喜びに包まれていた。
喜び勇んでいつもの書庫へと向かう。
マオと顔を見て話したくなったためだ。
「ありがとう!!」
笑顔で部屋を出たユアンは後ろを振り向かずすぐさま走り出す。
その後ろでは肩を震わせ、食器を洗う振りをしたまま佇むセラを優しく抱きしめるアレンがいたことをマオは見ていた。
加筆修正多くてすいません
見切り発車もいいとこですね
あと、読み返せば読み返すほど修正したくなるのはなぜなんでしょう?
説明不足感が否めない・・・
私にもっと文才を!!!
あと、タイトル詐欺もいいとこですね
魔王出てないじゃんという方、ご安心を!!
森人、魔人、竜人は魔王のターンです
まだまだ先ですがね
予定ではそうなってます
それまで続けるんだ・・・
読んでくださりありがとうございます
ではでは




