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角見つけました。



………身体中が痛い。



チュンチュン、と聞こえてきた鳥の鳴き声と早朝独特の匂いがしてうっすらと目を開けようとするが朝日の光が眩しくて一瞬目が眩んだ。


(…あ、朝か)



今日は土曜だから学校もバイトも休みだ。そう思いながらも朝御飯どうしようかなーと考える。

寝惚けながら布団を捲ろうとするが布団が何処にも、ない。


(あれ、布団どこいった…?)


そこまで寝相は悪くなかったはず…

そう思ったが布団が自分に掛かっていないのは確かだ。開かない目を伏せながら、ぺたぺたと辺りを探ったがふわふわの布団の代わりに手に感触を与えたのは、ざらざらとした砂の感触。何故だ?と思いながら嫌々重い瞼をゆっくりと開けると目の前は自然で溢れていた。


(木?……あぁ)


そうでした。すっかり忘れていた、私は今"異世界"にいるんでした。

あ、ちょっとそこ、引かないでよ。私別にイタイ子じゃないから。



覚醒してきた頭を働かせることもなく、んんー!!と伸びをすると背骨が、身体中の骨がボキボキなった。身体中がぎしぎし痛いし、土の上に寝てたんだ髪の毛も土埃りがついてる。

……うう、お風呂に入りたい。


「いだっ…~っつぅ、こんな所で寝たらそらこうなるわ。ってか寒っ……ん?」


パサリッと私に掛かっていた布が膝に落ちた。あれ、これって…


「起き、た?お、はよう」


びくぅっ!!と驚いたけど声に聞き覚えがあったため声のするほうをみるとそこには…


「あ、お、おはよ」

「う、ん」



にこっと朝日に敗けを劣らない笑顔をさせてこちらに近づいてくる魅碌がいた。

くそぅ!そんな眩しいものを起きて間もない私に見せるな!!

そう言ってやりたかったが、そんな元気もなく「あぁ、うん」と返した。


「何か、食べ、る?」

「んー…うん、食べたいかな。」



そう、元気が出ない原因の一つは空腹だ。私は昨日のバイト終わりにアイスを食べてから何も食べていない。だから力が出ない。もう空腹を通り越して何も感じなくなってきたが…


魅碌は私の正面にある焚き火を(あ、焚き火やってくれたんだ。)挟んでストンと地面に座ると手元で何かごそごそやりはじめた。


「何やってるの?」

「…ごは、ん」


ああ~ご飯の準備か、ありがたやありがたや。別に私、料理が出来ないって訳じゃないんだよ?ただ日頃ハイテクな物が揃ってるから今みたいにいきなりサバイバルみたいな状況になったら役に立たないだけ、いつもはちゃんと家事はやってますとも。


(あれ?でも、材料って…)


こんな森のなかに、ご飯になる物なんてあるのだろうか?異世界にキャンプ場みたいなものが存在するのか?それか、まさか……ね。

某テレビ番組でよく芸人さんがやっている、いわゆる"ゲテモノ"を食すつもりじゃ……それは嫌だ!!



人は反射的に頭で考えるより身体が動くことがあるがまさに今、その状態だ。

硬い土の上で寝ていたため、身体が痛むがそんなこともお構いなしに、ばっ!!と立ち上がり魅碌にちょっと待て!!と言おうと駆け出したが


「っ………あ、あれ?」



ん?とハテナマークを浮かべた魅碌の手元には、直視できないほどの、モザイクが強制的に脳内でかかるほどのグロテスクな物ではなく…


「さ、さか、な?」


先の尖った石と普通の魚があった。

キラキラと臙脂の鱗が輝き、ほどよく肥えている美味しそうな魚である。


「どう、かした、の?」

「いや?なんでもない!つ、続けて!」


あ、危うく魅碌の持っていた魚を蹴り飛ばすところだった…あぶねぇ!

魅碌はよりハテナマークを頭の上で飛ばしていたがそこは笑って誤魔化した。


その後は何も問題なく魅碌がテキパキと魚を捌き細長い枝に魚を刺して火にあてて出来上がるのを二人で待つ。


数分待っていると、突然魅碌は自分の懐を探り始めた。何してるんだろう?と思いながらも暇だったからじっと見ていると、魅碌は目的の物を見つけたのかぴこっと反応するとそれを懐から出した。


(あれは…巾着袋?)


魅碌が懐から出した小さな巾着袋。それを持ってどうするのかと思いきや、ぱっと目が合った。え、何。


すっと立ち上がりこちらに近づいてきた魅碌は私の隣で立ち止まるとしゃがみこむ。


「な、何?どうしたの」

「ん、紅緒にわ、たす」


胸の前に出された巾着を両手で受け取り、魅碌の顔を見ると開けて開けて!と言わんばかりの表情をしていた。

なんだろうと不思議に思い紐をしゅるっと解いて中に入っている物を左手に出すとそこには、二つの三角の形をした石と一つの丸い石が入っていた。


「?」


訳が分からない。え、何これを私にどうしろと言うのだこのわんこは。

魅碌の求めていることが分からない。え?え?と三つの石と魅碌を交互に見ると魅碌は三角の石を手に取った。


「これ、は俺の、角。」

「は…はあ」

「…で、こ、れが俺のあ、つめてる石」

「なるほど、これが魅碌の角でこっちが集めてる石ね。ん?俺の角?」


………こ、これが本来頭に生えていると思われる鬼の角か!!!!え、離れてるじゃん!う、うぇっ?!大丈夫なのこれ?!


焦って、ええぇえっ?!とさっきより高速に頭を振らせて石と魅碌を交互に見ると思ったことが分かったのだろう。にこっとわらって「だい、じょう、ぶ」と答えた。


「そ、れでこれを集、めて、るから、紅緒、も手伝っ、てほ、しい」

「あ、ああ、うん、わかった。この丸い石を集めればいいのね」



そう答えると魅碌は満足そうに頷きまたもとの場所に戻っていった。


(これ、どこに入れれば…んーまぁ、ここでいっか)


石を巾着の中に戻し取り合えず、スカートのポケットの中に入れた。鞄無くなっちゃったし、この巾着小さいからいいよね。

ちらりと視線を魅碌に戻すとちょうど魚が焼けたのか一匹を私に渡してきた。ありがとうと声をかけると嬉しそうに魅碌は頷き、自分の手に持っている美味しそうな魚にかぶりつく。


(これからどうしよう。とりあえずこの森から出て街でもなんでも探さないとな…)


ずっとこのままでないけない。

行動を起こさなくては生きていけないし、帰る方法だって分からない。


「はぁ…攻略本があればなぁ」



現実、そんなものな無いけどね。


とりあえず、今は目の前の魚に集中しよう。腹が減っては戦は出来ぬって言うもんね。私ははぐっと魚にかぶりつく。



「………うっま」



…まぁ、どうにかなるか。





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