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Limite  作者: 菊月 巡流
8/10

転入

約1週間後、燈真と祈の2人は学園に転入した。

燈真は1-1に、祈は紫苑と同じクラスの1-4に決まった。

祈は最初の挨拶を何とか終わらせ席に着く。

休憩時間の度に詰め寄られていたが、

紫苑が祈をフォローし、

燈真は早くも友達を作りまくっていた。

放課後には集会が開かれ、現在の養護教諭の産休の挨拶と新任の養護教諭の紹介がされた。

刹那がステージに上がると女子の悲鳴ともいえる叫び声が講堂に響き渡った。


 集会が終わり、1度教室に戻る。

紫苑はSHRが終わると速攻で祈と燈真を連れ生徒会室に逃げ込む。

生徒会室は基本関係者以外立ち入り禁止なので役員以外は滅多に来ない。

紫苑はこうなることを予想して昼休みのうちに職員室から鍵をとってきて置いていたのだ。

生徒会室にはまだ誰も来ていなかった。

紫苑は息を整えると祈と燈真をソファに座らせた。

祈は半泣き状態だ。燈真も女子ってこえ―と呟いていた。

祈を落ち着かせていると勢いよくドアが開いた。

現れたのは煌だった。息を荒くして疲れた様子で入ってくる。

「さすがに流せなかったようね。」

「…速攻で問い詰められた。勢いが…いつもの比じゃねえよ。女子怖い…。」

「ま、そうでしょうね。」

学園内では既に刹那と知り合いであることはばれているため、こういうときは必ずと言っていいほど女子の波が襲ってくるのだ。


―ピンポンパンポーン

佐賀武人先生、1年4組波風紫苑さん、学園長室まできてください。


「あー…どんまい。」

「……。嫌な予感しかしないわ。」

紫苑は渋々学園長室に向かった。


 紫苑が学園長室に入ると室内には司波と刹那、同じく放送で呼ばれた生徒会顧問の佐賀武人さがたけひとがいた。

「何のご用でしょうか。学園長。」

紫苑が尋ねると司波はニッコリ笑った。

「風麻先生もこれから生徒会顧問として頑張ってもらうからね。

佐賀先生、よろしくお願いしますね。」

紫苑と刹那は呆れた。元々予想はしていたのだ。

学園長命令ということで反対することもできず2人は渋々了承する。

嬉々としているのは佐賀だけだ。

おおかた仕事が減る、とでも考えているのだろう。

学園長室を出て3人で生徒会室に向かう。

途中途中で女子の群れに捕まるが、刹那が口八丁で流していく。

生徒会室に入ると既に全員揃っていた。

「生徒会顧問となった風麻刹那だ。よろしく。」

刹那は微笑を浮かべ挨拶をした。

「ブッ…。」「「…。」」「刹兄!!」

煌が吹き出し、笑いをこらえる。

紫苑は目をそらし、燈真は煌に視線をおくる。

そして、祈は笑顔で刹那に抱きつく。

「…煌。」

刹那は鋭い視線を煌に向ける。

「ヒッ…!!」

煌の顔色がどんどん悪くなっていく。

「祈も離れろ。」

「ぃやー。」

「…。」

「…はーい。」

他の4人はその様子を呆然と無言で見ていた。


 全員の自己紹介を済ませ、それぞれの仕事を始める。

刹那はその日のうちに覚え、

「しっかりと働いていただきますよ、佐賀先生。」

と立場が逆転していた。

祈も葵には慣れたようで楽しそうにしていた。

燈真も仕事内容を何とか理解し、結城は疲れ果てていた。


「言ったとおりだっただろ。」

煌は笑いながら話しかける。結城は無言でうなずく。

「それじゃあ、今日はこのぐらいにしましょうか。」

「「はーい。」」

紫苑の言葉を合図に後片付け、帰り支度を始める。

「紫苑、こいつらの事よろしくな。」

刹那が紫苑に声をかける。

「…どこか行くの?」

「大人には付き合いってもんがあんだよ。」

紫苑は女性教師に囲まれる刹那を想像し、

「…お疲れ様。」

と、声をかける。

刹那は苦笑しながら今日中には帰ると言って出ていく。


 その夜、駅前の居酒屋では刹那の歓迎会が行われていた。

麗光学園の教師は7割が女性だ。

案の定刹那はあっという間に囲まれ女性陣のテンションはかなり高かった。

男性陣はその女性陣達を見ては引き、刹那を見て感心していた。

囲まれた女性陣に物怖じせずに流れをつかみ、誘いをあざやかにかわしていく姿を見たからだ。

感心とともに恐怖も抱かれたのだが…。

一方、女性陣にはみんな刹那に魅了されていた。

11時を過ぎたころ、刹那の一言で歓迎会は解散になった。

もちろんそのあと、2次会をしようと誘われたがファントムの事があるため丁寧に断り帰宅した。


 1人になり自宅まであと約10分の距離まで来た時、刹那はファントムの気配を感じた。

その瞬間、記乃を呼び出し神経を研ぎ澄ませ、携帯していた銃を取り出す。

刹那の感知能力は誰よりも高く半径10kmの範囲ならば感じ取ることができる。

約500mの距離に奴はいた。

出来る限りの速度で走りだす。

家には結界が張ってあるためファントムは入って来れない。

しかし、距離はどんどん詰められていった。

逃げ切れないと判断した刹那は、体をひねり銃を構える。

頭に1発撃ち込み即死させる。

念のため全員が拳銃の訓練を行い、もしもの時のために持ち歩いている。

銃はもちろん竹爺の店のものだ。

ファントムは跡かたもなく消えていく。

刹那は急ぐようにして帰宅していった。


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