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Limite  作者: 菊月 巡流
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紫苑の日常

 刹那たちが学園に訪れた次の日、学園内は、というか女子は刹那のせいで変にテンションが高かった。朝から聞こえてくるのは、「昨日Setsuが来ていた」、「かっこよかった」、「私も見たかった」などばかりだった。

 1年前に芸能界からは引退したものの売れすぎたせいか世の女性たちの記憶に深く根づいているようだ。刹那はどの年代の女性も魅了したのだ。


 紫苑が教室に行くと案の定女子の波が襲ってきた。

 こうなることは確信していたのだ。

 そう思うのも、刹那は1人だけ私たちより年齢が高いことから、私たちの保護者として学校に来ることがある。長期休暇前の三者面談などはすべて刹那が来てくれていたのだ。

 しかし、そういう時に来ると必然的に他の人間の目線を集めてしまう。どう頑張っても刹那と一緒にいるところを見られてしまうのだ。もちろんクラスの子に見られてしまい、翌日は今日のように波が襲ってきた。

 私はその女子の波をまともに相手にする気はなかったので、適当に聞き流して自分の席に着いた。

 刹那が来ただけでこうなるのなら、養護教諭になることが公表されればどうなるのだろうと考えてうんざりとした。

 こういうときに男に生まれたかったと心底思う。お兄ちゃんは普段から口数が少ないため女子に問い詰められることもなく過ごしているし、煌は面白おかしく適当なことを言うので刹那の事を聞かれれば浅く軽く答え話題を変えていく。

 女子だとそうもいかないのだ。その事実に心底めんどくさいと思うが、悩んでもしょうがないと思い授業に集中した。


 休憩時間の度に女子が寄ってくるので放課後になると紫苑はぐったりとしていた。

 刹那の事を恨めしく思いながら帰り支度を進める。とはいっても、生徒会に所属しているため帰ることは出来ないのだが…。

 麗光学園の生徒会は会長、副会長、議長、副議長、書記、副書記、庶務の7人で成り立つ。生徒会顧問として1人教師がつくことになっているが、今の教師は全くと言っていいほど仕事をしない。しかも、学園長に言われ私たちは生徒会に入らなければならないことになっている。もちろん普通の生徒も交じってはいるが…。

 

 生徒会は指名制なので主に最初は学園長に指名されるのだ。それから指名された生徒で残りのメンバーを抜粋していく。入れ替わるのは7月。黒陽は現在3年のため引退し、いつも早々に帰路につく。

 学年などは役職に全く関係がない。だから1年生にして紫苑は会長を務めている。煌が議長になるというときは反対したが副議長をしっかりした奴に任せれば大丈夫か、と思い直し了承した。もう11月だというのに生徒会はメンバーが揃わない。今現在副書記、庶務がいないのだ。

 この2つの席が空いている理由は適した人材がなかなかいないからだ。

男子は紫苑狙いでやりたいという者が後を絶たなかったし、女子は女子で副会長や副議長狙いの者ばかりだった。生徒会には美形所が揃う。なぜか自然に揃ってしまうのだ。このことで紫苑は日々頭を悩ませてきた。

 まあ、燈真と祈が転入することでこの2つの席は埋まり心配ごともなくなったが。


 いつものように生徒会室に行き仕事を始める。時間がたち役員がそろうと紫苑が口を開く。

「来週から2人1学年に転入生がきます。2人とも生徒会に入りますのでよろしくお願いします。」

その言葉に煌以外の3人が驚いた顔で紫苑に視線を向ける。

「…お知り合いなのですか?」

冷静な口調で疑問を投げかけたのは副議長の真柴彰(ましばしょう)。1学年で首席の彼は煌の牽制役だ。

「ええ、そうよ。煌と同じ。」

この学園での紫苑たちの関係の認識は、親戚ということになっている。

本当の事を話すわけにはいかないからだ。

「今度は一体どんな子なの?」

少し弾んだ声で話すのは音無葵(おとなしあおい)。2学年で書記を務めている。

「チャラチャラした赤髪の男と極度の人みしりの女の子。女子の方は副書記をやってもらいますから、葵先輩お願いしますね。慣れるまでは大変だと思いますが。」

「了解。」

ふわふわとした雰囲気の彼女ならば祈もすぐ慣れるだろうと思ったのだ。

その上面倒見も良いため紫苑も何かと頼ることが多い。

「チャラチャラした男って…、大丈夫なのかよ。」

「その男の事はお願いしますね、結城先輩。」

紫苑はニッコリとほほ笑んで返す。

2学年で、副会長を務めるのは結城東(ゆうきあずま)。今は完全に顔が引きつっている。

紫苑が人に向けてニッコリ笑顔なんて紫苑をよく知っている人物からすれば危険信号なのだ。

「とんだバカでクソガキだから気をつけろよー、東。」

顔をニヤつかせ煌は言った。

「はっ!?お前にバカっていわれる奴ってどんだけ!?」

「結城先輩、大丈夫ですよ。煌と同じくらいの馬鹿です。」

「おおい!?」

煌は反論を示すが紫苑はそれを全く受け付けない。

「いや、充分遠慮したいんだが…。」

引きつった笑みで紫苑に言うと、だめです、の一言で一蹴。

そして、覚悟を決めてくださいね、と告げると仕事に戻る。

言われた結城は見事に撃沈。唯一燈真の教育係の大変さを知っている煌は、ファイトと笑いながら肩をぽんと叩いた。


 生徒会の活動は通常5時~7時前後となっている。

 生徒会室で解散すると紫苑は早々に帰路についた。


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