燈真と悪魔
燈真の歓迎会の次の日、燈真は煌から能力について教わる事になった。
「じゃー始めるか。…とは言ったもののどうするかね。」
「どゆこと?」
「能力はな悪魔の名前を知らなきゃいけないんだよ。その名前がなー…。俺どうやって知ったかな。」
「頼りねえー!!」
「おまっ!!…記憶戻ったからって性格変わりすぎじゃね!?」
「そう?これくらい普通でしょ。」
「お前らうるさい。どれだけでかい声で話してんだよ。」
「あっ、刹那。煌が頼りないんだよ。」
「生意気な…。」
燈真は刹那に流れを説明した。
「なるほど。煌じゃそうなるのもしょうがないな。名前はな、もう知ってるはずなんだよ。でも、最初はなかなか思い出せないんだ。気長にやるしかないんだよ。」
「へえー…刹那はどうやったの?」
「俺は、すぐあっちから声かけてきたからな。」
「あっちって?」
「悪魔の方からだよ。まあ、そっちもすぐ話しかけてくると思うぞ。というか、燈真に2つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
「何?」
「学校行きたいか?煌達が通ってる所になるが…どうする?」
「マジで!?行く!!」
「よし。じゃあ、学園に話つけに行くからな。」
「ういっす!!」
「で、2つ目は、お前武器使いたいか?」
武器と言う言葉に燈真は疑問符を浮かべる。
「対ファントム用にだよ。燈真の場合は能力が戦闘系だから無くても良いんだが…欲しいか?」
「欲しい!!」
「そうか。それは明日行くか。んじゃ、頑張れよ。」
刹那が部屋から出ていくと煌は燈真に
「お前武器なんで欲しいの?」
「かっこいいじゃん!!」
その返事を聞いてから煌は口を出すことをやめた。
それから燈真はひたすら悪魔に話しかけ続けた。
「あー!!もう無理!!刹那の嘘つき!!返事なんか返ってこねえじゃねーか!!」
あれから3時間、ずっと話しかけていた燈真だがもう半分諦めかけていた…。
「まあまあ…そのうち返事してくれるって。
…時間かかり過ぎだけどな。」
「それどういうこと!?」
煌はみんながどのぐらいの時間で悪魔と話始めたのか話すことにした。全部聞いた話だが…。
まず、刹那は数分。10分もかからなかった。
黒陽、紫苑は共に1時間ほど。
祈は30分ほどだったらしい。
「へえ…で、煌は?」
「…2時間30分。」
「うわっ…1人だけ…。」
「お前はまだ出来てないだろ!!人の事笑えねえよ!!
てか、お前の方がひどいんだよ!!
はあ…とりあえず今日はもうやめようぜ。もう6時だしな。」
そういうと2人はリビングに移動する事にした。
リビングには誰もおらず、祈はキッチンでパタパタと動き回っていた。
煌は2人分のコーヒーを頼むとソファに座った。
程なくして祈がコーヒーを運んできた。テーブルに置くと慌ただしくキッチンに戻っていった。
7時頃になると刹那、紫苑が帰ってきた。
夕食を食べ終わると、刹那は自身の部屋に移動した。そしてある男に電話をかける。
『刹那君からかけてきてくれるなんて嬉しいなあ。今日は一体どうしたんだい?用事もないのに電話してくるなんてことはないだろう?』
男は笑いを含んだような声で話す。
「俺の事をよくご存知のようで。
新入りが来たので通わせようと思いましてね。お願いできますか。」
『なるほど。今度はどんな子なんだい?』
「それはご自分でご確認ください。近いうちに挨拶に伺いますので。」
『それは楽しみだ。…それなら午後4時でどうだい?』
その言葉に刹那は黒いオーラをまき散らす。話す声も自然と怒気を含んだものになる。
「…俺のことをご存じのはずですよね。」
その声に態度を変えずに、むしろより楽しそうに男は話す。
『勿論だとも。よく知っているよ。君がどんな仕事をしていたのかね。しかし、私も忙しい身でね。なかなか時間が取れないんだよ。』
「…わかりました。ではその時間に伺います。」
『楽しみにしているよ。』
電話が切れた後、刹那は明日のことを考え憂鬱になるのだった。
次の日、紫苑、煌、黒陽の3人は学校に登校していった。
午前中、刹那は仕事に出かけ、祈は内職に励んでいた。燈真はやる事もないのでリビングでくつろいでいた。そして、ここに来てからの事を振り返っていた。
11時を過ぎた頃、悪魔は初めて反応を示した。
目の前に真っ赤な生き物が現れた。
「何を考えている?俺と話をしたかったら俺の名前を思い出しやがれ。」
そう言って悪魔は燈真を嘲笑する。
しかし、悪魔の声を聞いた瞬間、頭の中で文字が浮かび上がった。
「…焔。」
その言葉に焔と呼ばれた悪魔は怪訝な顔をする。
「なんだよ、覚えてんじゃねえか。で、なんでお前は俺に呼びかけた。」
その言葉に燈真は首を傾げる。昨日のことを思い出して無意識に呼びかけていたらしい。
「なんで?…なんでだろうな。最初は刹那たちに言われたからだと思うけど、今は単純にお前と話したいと思ったからかな。」
燈真は話しながらあることを確信していた。
「俺は焔と友達になりたい。」
焔は目を見開いて絶句していた。こいつは何を言ってるんだという目で燈真を凝視する。
「俺さ、刹那たちを見て思ったんだよ。こういう風になれればいいなって。」
そう、まだここに来て数日だが、刹那達が気楽に悪魔達と話しているのを見ていたのだ。相手の悪魔の姿は見れなかったが…。見ていて、羨ましいと言う気持ちがどんどん大きくなっていくのに気づいた。
「…お前とならいいかもな。」
焔は小さく呟いた。しかしその呟きは、燈真にしっかりと届いていた。
「よろしくな、焔。」
満面の笑みで燈真は言葉を発した。
その言葉に薄い笑みを浮かべ、焔も応えた。
なかなか更新できなくて申し訳ありませんでした。
今は長期休暇中なので何回か更新できると思います。
読んで下さった方ありがとうございます。