新入り2
朝、刹那が目覚めたのは午前11時。
リビングに行くと煌と紫苑と祈がいた。
祈は刹那をみると急いでキッチンに向かった。
「おはよう。調子はどう?」
「いいとは言えないな。燈真は?」
「まだ目覚めないわ。」
「そうか…。」
祈が1人分の朝食を持ってキッチンから戻ってくる。
「ありがとう、祈。」
「さてと、私はお兄ちゃんと交代してくるわ。昨夜からずっと地下室だもの。12時間以上よ。さすがに心配だわ。」
「だなー。俺が行こうか?」
「バカ。お前が行っても暴走したときどうにもなんないだろ。」
「そうよ。こういう場合は、私かお兄ちゃんが最適なの。」
「うぅ…。」
紫苑がうなっている煌を無視して部屋を出ていく。
しばらくすると黒陽が部屋に入ってきた。
「お疲れ。」
「ああ。お前は大丈夫か?」
「万全ではないがな。お前は少し寝ろ。」
「そのつもりだ。」
「…なんだ?」
刹那は紫苑が出ていってからずっとこっちに視線を送っていた煌に話しかけた。
「え!?いや…。昨日見たこと話さないのかなー…と。」
「燈真の過去の事か?」
「うん。」
「人の過去なんて俺が話せることじゃないだろ。」
「そうか。そうだよな…。悪い。」
「いや…。」
その会話の後誰も口を開こうとしなかった。
燈真の事があったからか今日は誰も出かけようとしなかった。リビングでは会話などなくテレビの音だけが響いていた。そして、午後4時を過ぎた頃…
ドゴォォォォォン…
地下室から爆音が響いた。
「祈、煌お前らはここにいろ。黒陽は一緒に来てくれ。」
刹那はそういうと黒陽と共に地下室に急いだ。
「紫苑!!」
「刹那!一応抑えてはいるけど長くは持たない。早くどうにかして。さっきから燐、燐って…ずっとそれしか言わないし…。」
燈馬は炎を纏っていた。1人の名前を呼びながら…。
「燈真!!名前を呼んだところで弟は生き返らないぞ!!」
弟という言葉に燈真が反応する。ますます炎の勢いは強くなっていく。
「弟の分までお前は生きていかなきゃいけないんだよ!!」
「燐は…俺を恨んでいるはずだ…。俺たちはあの日一緒にいたのにあの店で俺だけが…!!」
あの日、燈真は燐と一緒にいた。燈真の家は母親を早くに亡くし、2人には父親しかいなかった。
しかし、燈真が中学を卒業した頃、父親は一通の手紙を残して姿を消した。何の前触れもなく…。
手紙には謝罪が書かれていた。
燐は小学5年生だった。父親のことは燐も理解し家事を率先してこなすようになった。
燈真は朝から夜遅くまで働いた。生活費や燐の学費を稼ぐためだ。
父親が姿を消してから3ヶ月が過ぎた。生活にも慣れ安定した頃だった。そんなある日に燈真と燐は死んだ。火事だった。隣の部屋が発火場所だった。深夜2時ごろだった。気づいた時には2人は火に囲まれていた。
そしてその後2人が目覚めたのは『Limite』だった。そこで燈真は悪魔に選ばれた。だが、燐は選ばれなかった。悪魔は気まぐれ。選んだ理由、選ばなかった理由などはわからない。選ばれなかった瞬間、燐は消えた。燈真はそのショックから自ら記憶に蓋をした。
「俺は燐と一緒にいるんだ。俺は…」
「せっかく生き返ったんだ。弟のことを忘れろとは言わない。生きる事が出来るんだ。…自殺なんてしたらそれこそ燐が悲しむだろ…!」
その言葉に燈真は顔を上げた。刹那の顔を見ると燈真の目から涙が溢れ出した。炎の勢いも弱まっていく。完全に炎が消える。
「俺は…燐の分まで生きます…!」
「ああ。…少し休め、燈真。」
暴走していたせいだろう、燈真の意識はそこで途絶えた。
それから燈真が意識を取り戻したのは2日後だった。意識を取り戻した日の夜、煌の発案で歓迎会を開いた。
「俺たちは家族みたいなものだ。改めて、これからよろしくな、燈真。」
刹那の言葉に他のメンバーも燈真を見る。
「こちらこそ…!」
この日、刹那たちに新しい家族が加わった。
煌の容姿だけ書き忘れてました。
茶髪に金の瞳と考えています。
一応刹那と幼馴染みという設定付きです。