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あの日から……

少ししんみり系でいきます

 7限もの授業が終わり、放課となった。

 授業は何をやっているのかさっぱりわからず、ほとんどの授業は寝て過ごした。睡眠不足のせいもあったが。

 さすがエリートばかりが集う学校。勉強が遅れてるからと個人授業はないのか。まぁ、逆に無くて嬉しいけど。面倒だし。

 カバンを持ち、1人教室を出る。

 普通ならアリスが追いかけてくるのだが、終わると共に光の早さで買い物へと行ってしまった。さすがメイドというとこか。

 お金は母さんから預かったようだ。仕送りがなかったこともうなずける。

 夏だからか夕方なのに外は真昼間のように明るい。

 6月の少し湿った空気の中。

 俺は面倒な学校から逃げるように校門をくぐったのだった。





「すっかり遅くなってしまいました……」

 夕方の7時頃、私は両手に大きな袋を抱えて米川家へと帰宅している途中だった。

 数カ所のスーパーを回り、買い物をして来たのだ。

 夏と言えど、さすがにこの時間帯だと暗い。

「タイムセール粘り過ぎたかなぁ?」

 時間が来るとお肉のパックなどに割引シールが貼られる。それを待っていたらこんな時間になってしまった。

 お腹を空かして待っているであろうご主人様の元へ早急に戻らないと。

「うんしょ……おっもい……!」

 なんせどうせならとまとめ買いしたのだ。重いのも当然である。

 しかし非力な自分が情けない。

 こんなことだから前の雇い主にクビにされるんだ。

 少し夕日に照らされた夜道。

 自分の非力さを責めながら、重い荷物をせっせと運ぶ。

「帰ったらご主人様に謝らないと」

 やがて外灯が私を照らすように点滅を繰り返し、電気が点く。

「……?」

 私は目の前を凝視する。

 もう一つ先の外灯の下に人がいる。その人は私に一歩一歩近づいて来た。

「ご主人……様?」

 そう。ご主人様だった。その姿は見間違えるはずがない。

 夏には季節外れの長袖長ズボンの部屋着を着ていた。

 てっきり部屋でゲームをしていると思ったのに、ここまで来るなんてどうしたのだろうか。

「遅くなって申し訳ありません……」

 私は深々と頭を下げる。

 メイドの分際で主に迷惑を掛けてしまったのだ。まずは謝るというのが礼儀である。

「ほ、ほら頭上げろって。別に怒ってないからさ」

 なんてお優しい主なのだろうか。クビを飛ばされてもおかしくない失態なのに。

「あ、あの……」

 ご主人様は右手で頭を掻き、目をキョロキョロさせながら、口をもごもごさせている。

 どうしたのだろうか。

「はい、何でしょう?」

 私は小首をかしげ、そう訊く。

「お、お前の帰りがあまりに遅いから……その……迎えに来た……」

「えっ」

 私の聞き間違いだろうか。

 いや、でもさっき「迎えに来た」って……。

 わざわざ迎えに来てくれたということは、心配してくれていたということだろうか。

 なんだか照れ臭い。

「勘違いとかするなよ! 俺はただお腹が減ったから、こうしてここまで来ただけだ。ほら、荷物貸せ」

 ご主人様はそう言うと、2つの袋を持ってくれた。

 本来なら主の手を煩わさせてはいけない。でも、もし断ってもご主人様の性格ならば、このまま荷物を持ち続けてくれるだろう。

「お心遣い感謝します……っ」

 だから私は素直にその好意を受け入れた。

 ご主人様のこういうところは何も変わらない。あの日からずっと……

 いつの間にか真っ暗になっていた夜道。

 さっきまで心細かったのに、今では不思議と胸が暖かい。

 私は前を歩くご主人様の大きな背中を見つめながら歩いたのだった。

篤也ってツンデレ⁉w

「べ、別にあんたの為に荷物を持つんじゃないんだからねっ!」とか言いそうな勢いでしたwww


「あの日から何も変わらない」

これは大事な伏線となります。

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