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プロローグ
ーーそろそろ本気出す。
俺はこの言葉を今まで何回使っただろうか。
ーーかけっこ弱いなー。
ーーそろそろ本気出す。
ーーレギュラー後輩に取られるぞ?
ーーそろそろ本気出す。
ーー成績悪いんだけどどうなってるの?
ーーそろそろ本気出す。
ーーいい加減学校行って。
ーーそろそろ本気出す。
ーーもうお母さん耐えられないから出てくね。
ーーそろそろ本気出す……え?
と、こんな具合で数え切れないほど「そろそろ本気出す」を使って来た。
昔は負けず嫌いだったから、ただ純粋にそう言っていただけなのかもしれない。でも今は違う。
今では俺の口癖のようなものになっていた。
その口癖のせいでいつしか離れていった友人、家族。
その現実から逃げたくて引きこもるようになった。
もう誰とも関わりたくない。そう思っていたのに、突如俺の目の前に現れた来客。
「貴方の専属メイドでございます。ご主人様!」
この来客のせいで俺のニート生活が崩れていくことが、この時はまだ想像なんて出来なかったんだーー