オチを下さい
喧嘩を売る先は自分の物語です。人様の設定にはなんの不満もありません。寧ろファンです。
書けない事へのイライラ解消ですので、適当に読み流して下さい。
恋愛ジャンルに入れてあるのは、恋愛話だから…ということで許して下さい。
では心の広い方、どうぞ。
世に溢れる物語的恋愛パターンに、ツッコミを入れてみようと思います。
お隣の幼なじみが、やたらめったらハイスペック且つ平凡極まりない主人公を好き。
隣人とまず仲良くない。年齢の近い異性でもない。よしんばこの二つをクリアしたとして、その上いい男である確率は天文学的。
ふざけんな。
偶然学校一のモテ男と知り合ったら執着されて溺愛。
まず偶然そんな希少動物と知り合わない。執着は一歩間違うと狂気で、溺愛って嫌いな相手にされたら逃げ出すのが必死。
犯罪者はお呼びじゃない。
実はお金持ちに連なる家系でいきなり莫大な遺産を貰った上、上玉過ぎる婚約者まで自分に傅いちゃうサクセスストーリー。
庶民の九十九パーセントは根っからの庶民。急に心臓止まるほどのバックグラウンドが出現するわけないし、出現したとしても自分が若いとは限らない。遺産ていうのは年取って相続する確率がが圧倒的に高いのだ。
その頃には婚約者なんて必要なし。
いっそ穴に落ちて異世界トリップ、あちらの世界で王子様とおとぎ話を紡いじゃう。
異世界は死後の世界とよく似てる。つまり誰も見たことがないわけで、あるかどうか非常に疑わしい。そこでシンデレラになろうなんて。
中二病の治療は保険適用外だから。
「…あんた、そのネガティブ思考、どっかのイケメンモデルに勝てるんじゃない?」
「別にネガティブじゃない。これはスーパーリアリストって言うの」
ポテト囓る友人に押しつけられたライトノベルを返しながら、あたしは天井仰いで溜息をついた。
「お願いだから、もっと現実に近い本を貸してくれない?」
「わーなんて現実味のないセリフ」
その心底呆れた声に、眉を顰めるだけで返事ができない自分が、実は一番嫌だった。
な・ぜ・な・ら。
「待った?」
「…どっから湧いた」
夕方のファストフード店に、急に金髪碧眼の見目麗しい外国人が現れたら、かなり周囲の視線を集めるわけで、しかもそいつが十人並みのあたしに話しかけ、あまつさえ隣に座ったりしたらまるで冗談のように殺気が混じるから勘弁してほしい。
「誰もが羨む男と知り合いなんて、充分恋愛小説要素でしょ。それもラノベレベルの安っぽい設定」
「好き好んでこの状態じゃない」
鼻で笑う友人に、欲しけりゃ持ってけと隣の男を示してやって、これ見よがしに溜息をついた。
容姿だけでも充分現実離れしているこの男、ご出身は北欧で家業は代々続く家具職人で取って付けたように貴族でもあるんだっていうんだから、もうあきれ果てるキャラ付けである。日本で元華族のお金持ちを探すよりこいつ探す方が絶対難しい。保証できる。
「もうさ、さっさとくっついちゃいなよ。恋人になれ、結婚しろ」
「ああそうね。法律変えられたらすぐにでもね」
しっしとばかりに手を振った友人に、吐き捨ててやった。ずっと言いたくて言えなかった最大の秘密を、今日こそはばらしてやる覚悟で笑ってやった。
意味がわからず首を傾げた友人が、この謎を解くまで後数秒。戸口にいるあいつがここへ来れば、全てが明らかになる。
「お待たせ」
「遅いよ」
にこやかに金髪男にキスをしたフツメンは我が兄で、嬉しそうにキスを返したイケメンは物語の登場人物だ。
ただし、BLの。
「うわぁ…ありですか、リアルBL」
「ありじゃない、目の前に」
そう、これも充分中二病の設定だ。
身内がゲイで、恋人はできすぎキャラ。
だけど、主役はあたしじゃない。脇役にすらなれない、涙も出ないような安っぽいお話である。
「だから、バカらしい設定に喧嘩を売るのよ」
「確かに。現実は小説より奇なりだわ」
やっとわかってくれた友と、そっと退場するのが名もないあたしの役目。
ホント。できすぎた設定なんて、クソ食らえ。